主力組の議論の光景にジーコ体制の一件を想起… 森保監督と選手たちの意思疎通に落とし穴はないか?

主力組の議論の光景にジーコ体制の一件を想起… 森保監督と選手たちの意思疎通に落とし穴はないか?

練習の合間に議論を行なう主力組の選手たち。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



 7日(日本時間8日未明)のサウジアラビア戦(ジェッダ)のショッキングな0-1の敗戦から1日半。12日の次戦・オーストラリア戦(埼玉)に向け、チャーター便でいち早く帰国した日本代表は9日夕方、千葉県内で仕切り直しのトレーニングを実施。2022年カタールワールドカップ(W杯)出場権獲得に向け、チーム全体が今一度、ギアを入れ直した。

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 練習自体はサウジ戦のスタメン10人がクールダウン、GK権田修一(清水)を含むサブメンバー15人が横内昭展コーチの指導の下でボール回しやゲーム形式のメニューを行なった。

 こうした光景はいつも通りだが、重苦しいムードが感じられたのは確かだ。ランニング中の吉田麻也(サンプドリア)や長友佑都(FC東京)、柴崎岳(レガネス)の表情は硬く、最終予選序盤3戦で2敗という事態の深刻さが色濃く窺える。

「一人ひとりが勝ちたいと思っているし、W杯に行きたいという気持ちはある」とこの日メディア対応した冨安健洋(アーセナル)も神妙な面持ちでコメントしていたが、そのためにどうしたらいいのかを彼らは考えあぐねている様子だった。

 ランニングの後、サブ組の練習が強度を上げる傍らで、冨安と吉田、長友、酒井宏樹(浦和)、遠藤航(シュツットガルト)が話し合いを始めた。そこに南野拓実(リバプール)も加わり、10分以上の議論が続いた。

「どうボールを動かすかは全選手が共有しないといけないと思います。サウジ戦でも航君が持った時に相手センターバック(CB)が消しに来ているのは感じていた。そこで今、誰がフリーなのかを感じ、どうボールを届けるかを考えて、やっていかないといけない。あとサイドチェンジも後半は足りなかったし、スローインのところでのボールロストも多すぎる」と冨安は問題点を指摘していたから、そういったことを伝え、彼らなりに正解を導き出していたのだろう。

「ウチのピンチはマイボールをボールロストしたところから攻め込まれるのがほとんど。相手がビルドアップをしていて、そこから何本もつながれて数的優位を作られてというのはほとんどなかった」と最後尾の権田も言及する通り、間違いなくこの劣勢の最大要因はボールを簡単に失いすぎることにある。

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 バックパスが多くなっているのは、相手が激しくプレスをかけてきた際、選手個々がいい位置にいなかったり、距離感が遠かったりしている場面が多いため。その結果。出しどころがなくなり、後ろに下げるしかない状態に陥る。その悪循環から抜け出さない限り、森保一監督が目指してきた高度な連係・連動のあるサッカーはできず、勝利という結果も手にできないということになってしまう。
 
 だからこそ、冨安が言うように全員がボールの動かし方を改めて共有すべきだ。が、それをピッチ上の選手たちに委ねていて本当に大丈夫なのか……。森保一監督は選手の自主性や判断力を重んじる「選手ファースト」の監督だが、チームがうまくいっている時はOKでも、危機的状況にある今は違う。重要な意思統一を彼らに任せすぎるのは、どうしてもリスクが高いように映るのだ。

 こうしたアプローチの失敗例として想起されるのが、2005年3月の2006年ドイツW杯最終予選・イラン戦(テヘラン)だ。2日前の紅白戦で中田英寿と福西崇史の両ボランチがポジショニングを巡って意見が分かれ、喧々諤々になったことがあった。そこに宮本恒靖や加地亮らも加わり、なかなか結論が出なかった。指揮を執るジーコは最初だけ話を聞いていたが、「あとはキミたちで決めてくれ」と言わんばかりに場を離れてしまったのだ。

 結局、試合は1-2の敗戦。直後にキャプテンの宮本主導で3バックへの変更が行なわれ、続くバーレーンに勝って窮地を脱したが、16年前の二の舞にならないか不安を覚えて仕方ない。

 当時のジーコのように、森保監督は主力6人が話し合いをする間、遠くからサブ組の練習を見つつ、様子を窺っていた。これは普段通りのスタイルであり、何ら変わることはなかった。ただ、少なくとも練習後には吉田や長友らが考える問題点をしっかりと共有し、解決策を提示するべきだ。そのうえで、ボールの動かし方やロストしないサポートの位置や距離感など細かい部分を再徹底する必要があるのではないか。練習場以外のチームの動きは我々外部には分からないし、もちろんそれをやっているのかもしれないが、コミュニケーションに落とし穴があってはいけない。そこは今一度、再検証してほしい。
 

 サウジ戦で見られた柴崎の数多くのボールロストも、「もっと岳をサポートできたと思う」と遠藤が悔やんだ通り、周りの密なフォローがあれば、かなりの確率で防げたと言っていい。こうした現状を踏まえ、森保監督は細部を徹底的に突き詰め、ボールロストを減らし、主導権を握れるような状態に持っていくことが肝要だ。それが3試合・1ゴールというゴール欠乏症を打破するカギになる。

 森保体制3年間のすべての英知を結集させ、勝利という結果を掴むためにも、チームコンセプトと約束事の共有というのは極めて重要。残り2日間を最大限有効活用するしかない。ジェッダから日本という長距離移動の伴う中3日のタフな試合にはなるが、チームが機能すれば、必ずいい方向に行くはず。そう信じてしっかりと見守りたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)
 

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