フランス代表のNL初戴冠の舞台裏。全てを変えたベルギー戦のHT、ロッカールームで何が起きていたのか?【現地発】

フランス代表のNL初戴冠の舞台裏。全てを変えたベルギー戦のHT、ロッカールームで何が起きていたのか?【現地発】

ネーションズリーグ制覇を果たし、満面の笑みを見せる選手たち。(C)Getty Images



 現地時間10月10日、スペインを2-1で下してUEFAネーションズリーグを制覇したフランス代表。だがそこには、あるストーリーが隠されていた。準決勝ベルギー戦(7日)で、レ・ブルーに何かが起きたのである。
 
 この夜、フランスは、ベルギーに0-2とリードを許して前半を終了。ロッカールームに戻るときのフランス選手たちは、自己嫌悪に満ちた暗い表情で、がっくり肩を落としていた。対照的にFIFAランキング1位を誇るベルギーのサポーターたちは、トリノのスタンドで「ここは我が家だ、ここは我が家だ」と明るい歌を合唱していた。

 ところが15分間のハーフタイムを経てピッチに戻ったフランス選手たちは、別人のように変貌、凄まじいインテンシティをつけ、個の力とコレクティブな力を結合し、最終スコア3-2で大逆転してしまったのである。

 ブラジル・ワールドカップ(W杯)出場をかけた「世紀の大逆転」(ウクライナ戦)ほどではなかったが、確かに何かが起き、ギクシャクが消え、「チームができた」印象だった。このため試合後、記者から「ハーフタイムに何が起きたんですか?」の質問が飛んだ。

 するとポール・ポグバは、「きっとビデオで見られるんじゃないかな」と明言を避け、「日曜のファイナルに勝利した後に、俺たちが(今夜)ロッカールームで言い合ったことを、みんなも発見できるといいな、と思っているよ」と語った。言いたそうにしながらも、ぐっとこらえた様子だった。これで謎はますます深まった。

 そして記者団の謎解き取材が始まり、「どうやらこうらしい」という大枠が見えてきた。
 
 実は前半の終了間際、ディディエ・デシャン代表監督とギー・ステファン助監督(アシスタントコーチ)は、ベンチで冷静に議論を交わしていた。これはテレビカメラもとらえており、「0-2で大苦戦しているのに監督は何もしない。システムも変えなければ、選手交代もなし」「ストイックなまでに状況を受け入れている」と批判さえ出ていた。
 
 ところがまさにそこで決断が下されたという。「システム(4-3-1-2)が原因ではない。コレクティブな反抗を起こすことだ」――。

 そこでロッカールームでは、デシャン監督がまずこう分析した。「おい、みんな、下がりすぎている。ブロックが低すぎだ。アグレッシブさも不十分。みんなで守ることもしていなくて、それぞれが誰かの後ろに隠れている。目の前にいるのは世界屈指のチームなんだぞ。我々が関与度やインテンシティのレベルを上げなかったら、やり遂げられない」

 次いでこう鼓舞したという。

「自分たちを解き放て! 立ち上がり20分間はよかった。ゴールさえ決めれば、絶対に追いつける。まだ終わっていないぞ!」
 
 そしてポグバが、力の限り大声で叫んだという。

「おい、みんな! 俺たちはフランス代表なんだぞ! もし“死ななくちゃ”いけないなら、全員一緒に“死ななくちゃ”いけないんだ!」

 次いで副主将ラファエル・ヴァランヌと主将ユーゴ・ロリスも、それぞれリーダーとして発言、「もっとインパクトを」「頭を上げろ」「まだ終わりじゃない」と強調したそうだ。

 こうして後半開始5分前になると、沈黙は行動に変わった。トイレに行く者、ユニホームを着替える者、食ベ物を補給する者…。そして自然と、ポジションやステータスなどに沿って小さなグループができ、議論と確認が始まった。プレッシングのかけ方調整、走り方や動き方の相互理解、互いのモチベーションアップなどだった。

 デシャン監督、ポグバ、ヴァランヌ、アントワーヌ・グリエーズマンが、もう一度「ブロックをもっと絞れ」「もっと高い位置でプレッシングする必要がある」と駄目押しした。ここでもポグバが、大声でハイプレッシングを強調したという。

 議論はピッチ入場前の廊下でも続き、リラックスしたベルギー選手たちとは対照的に、フランス選手たちの顔は引き締まっていた。

 こうしてポグバを先頭に全員がハイプレスとインテンシティ注入を実行。やがて才能がモノを言い、キリアン・エムバペのパスからカリム・ベンゼマがネットを揺らし、グリエーズマンがゲットしたPKをエムバペが決め、最後にテオ・エルナンデズが豪快に初ゴールを叩き込んで、試合をひっくり返したのだ。
 
 それは、EURO2020で失敗したフランスが、逆襲に出た瞬間でもあった。PK戦での失敗が「キャリアの汚点になった」と認めたエムバペも、猛烈なPK弾でリベンジを果たし、強靭なメンタルを再証明。ポグバも、ロシアW杯のリーダーシップを再び開花させた。明晰なデシャンという“将軍”も、堂々の復活を遂げた。

 そして3日後、スペインにも逆転勝利した。1点リードされるや、2分後にはエムバペのパスからベンゼマのゴラッソが生まれ、次いで猛スピードで走り出たエムバペが決勝弾を決めた。

 ネーションズリーグは歴史が浅い(2回目)が、世界的強豪の激突はハイレベルだった。その銀のトロフィーを次々夜空に掲げた選手たちは、まるでW杯でも手にしたように笑顔を弾かせ、ひとつになっていた。

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 レ・ブルーには、まだまだ波乱や苦境が襲い掛かるだろう。団結はいつも、クリスタルのように美しく、もろいからだ。だがもしかすると、カタールW杯に向けたフランス代表のリベンジが、このハーフタイムに始まった…のかもしれない。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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