大舞台で先輩たちをも叱責、昨冬は単身渡仏…FC東京に内定した青森山田MF松木玖生とはいかなる選手なのか?

大舞台で先輩たちをも叱責、昨冬は単身渡仏…FC東京に内定した青森山田MF松木玖生とはいかなる選手なのか?

FC東京に来季の加入が内定した松木。今夏のインターハイでは悲願の全国制覇を果たし、1年次の高円宮杯以来のタイトルとなった。写真:田中研治



 Jクラブか欧州挑戦か。青森山田中時代から将来を嘱望されていた男がFC東京でプロのキャリアをスタートさせる。

 10月12日、FC東京は青森山田に所属する松木玖生の加入を発表した。

 春先から去就が注目され、海外志向が強かった松木は2月に渡仏。フランス1部リヨンのトレーニングに参加し、その後もJクラブだけではなく、海外挑戦を視野に入れながら行き先を探していた。
 
 思い返せば、常に注目を浴びるプレーヤーだった。青森山田中の3年生から高校生に混ざってプレーし、Bチームで参戦しているU-18プリンスリーグ東北だけではなく、U-18高円宮杯プレミアリーグにも出場。すでに中学レベルを超えており、「青森山田にすごい奴がいるぞ」という声が多方面から聞こえていたほどだ。高校入学直前のサニックス杯から主力として活躍し、フィジカルの強さを生かしたキープ力と物怖じしないプレーは中学卒業したばかりの選手とは思えない存在感を放っていた。

 その1年生らしからぬメンタリティはピッチ外でも随所に見られ、練習中から先輩たちと対等に会話。その振る舞いからも、只者ではない雰囲気を醸し出していた。中でも象徴的だったのは冬の高校サッカー選手権だ。準決勝の帝京長岡戦で攻守に渡って活躍した松木はチームの2点目も決めたが、守備の局面では3年生の先輩たちを鼓舞。37分に相手の決定機を阻止した場面では「よっしゃー!」と雄叫びを上げ、身振り手振りを交えながら、「もっとやろうぜ」と言わんばかりの形相で仲間たちを奮い立たせた。それでも伝え足りなかった松木はハーフタイムにも再度叱責。大会通算4得点の決定力も含め、松木の存在が全国に知れ渡るきっかけとなった。

 選手権でその名を知らしめた松木だったが、2年次は苦しんだ。新型コロナウイルスの感染拡大により、9月から始まったスーパープリンスリーグでは4-1-4-1のシャドーで安斎颯馬(現早稲田大1年)とのコンビでゴールを量産した一方で、冬の選手権では昨年度に続いて準優勝に終わってしまう。自身の出来も不満が残る内容に、今年の春に話を聞いた時に悩みながらプレーしていたことを明かした。

「去年は迷いがあった。前に安斎がいて、後ろに(宇野)禅斗がいる。自分のポジションが明確ではなく、自分自身のプレーができなかった。(プレーしていても)ストレスはあって、抑えていた部分はある。選手権ではビルドアップのところを意識し、周りを目立たせたいという気持ちがあった」

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 本来、松木はボックストゥボックスで動くボランチである。攻守でフィジカルの強さを生かしてボールを奪い、チャンスと見れば類まれなスプリント力を発揮して決定的な仕事をする。しかし、2年次の昨シーズンはチーム全体のことを気にかけ過ぎた故に、本来の良さを出せずに終わった。

 課題を踏まえ、迎えた高校ラストイヤー。「率直に今年は個人としてゴールを目標にしていきたい年」と春先のサニックス杯でも明かしていた通り、誰よりも結果を求めてシーズンに入った。

 そこからの松木はまさに有言実行。春先の言葉に嘘偽りはなかった。U-18プレミアリーグ高円宮杯EASTでも自身も得点ランキング3位となる7ゴールを奪い、リーグ新記録となる開幕7連勝を記録したチームを大会連覇に導くべく奮戦(昨季は新型コロナウイルスの感染拡大により中止)。夏のインターハイではチームを16年ぶりの優勝に導き、自身も5得点を奪ってトップスコアラーとなった。
 
 過去の松木を紐解いていくと、ビックマウスで上級生にも遠慮しない生意気な選手に見られがちだ。だが、誤解を恐れずに言えば、そのスタンスが松木の良さでもある。

 1年生の頃から本人が「一番の武器はメンタリティ」と言い切るように、そのパーソナリティが自身を押し上げてきた。時に大きなことを言う。しかし、常に自分と向き合ってストイックに取り組んできたからこそ、出てくる言葉でもある。

 小学校卒業後に生まれ育った室蘭を離れ、青森の地にやってきた理由は「このままではさらに成長できない。自らの意思でもっときつい環境を選ばないと上にいけない」と思ったから。入学後も常に自分と向き合い、プロの世界で活躍することから逆算してトレーニングに励んできた。高校1年生の時はフィジカルの強さが足りていないと感じ、上のステージを見据えて肉体を強化。食事面も改善し、寮で提供される食事に加え、サラダと肉をプラスアルファで摂取した。体重も5kgアップ。1年生の段階でプロ仕様のボディを手に入れたことが翌年以降の活躍に繋がった。

 どんな時も自分を厳しく追い込む。分かっていたとしても、実行に移すのは簡単ではない。常日頃から貪欲に誰よりも取り組むからこそ、説得力のある言葉で仲間に厳しい要求ができるのだろう。

 来季からFC東京でプレーする。結果を残すことは容易ではないが、これまでも類まれなパーソナリティで壁を打ち破ってきた。向上心を持って努力を続ける姿は変わらないだろう。一回り以上年が離れている長友佑都に対しても、臆さずに意見をぶつけるだろう。そのスタイルを持ってすれば、来年の今頃には誰もが驚くような結果を残していたとしても不思議ではない。

文●松尾祐希(フリーライター)
 

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