土俵際に追い込まれ大ナタ! 森保采配に風穴を開けた田中碧、古橋、浅野らの躍動でV字回復の兆し!?

土俵際に追い込まれ大ナタ! 森保采配に風穴を開けた田中碧、古橋、浅野らの躍動でV字回復の兆し!?

オーストラリア戦でスタメンに抜擢された田中(17番)、途中出場から勝ち越し点ゲットに貢献した浅野(18番)、古橋(11番)。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



「主軸固定」「ベテラン依存症」など数々の問題点を指摘されてきた森保ジャパン。2019年アジアカップ(UAE)準優勝のチームをベースに、4-2-3-1の布陣で頑なに戦い続けてきた弊害が、今回の2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選序盤3戦で一気に出てしまった。
 
 コロナ禍がなく、最終予選が予定通り、2020年9月から2021年6月にかけて行なわれていたら、まだよかったかもしれない。が、1年の遅れによって、長友佑都(FC東京)が35歳になったのを筆頭に主力の多くが30代を迎えた。となれば、成長曲線がやや頭打ちになるのも認めざるを得ない事実だ。

 加えて言うと、相手国の分析も進んでいる。9月のオマーン戦(吹田)、10月7日のサウジアラビア戦(ジェッダ)で絶対的1トップ・大迫勇也(神戸)は徹底したマークで閉められ、彼を起点とした攻めが組み立てられなかったのが典型例。森保一監督も改めて厳しい現実を目の当たりにしたに違いない。

 序盤2敗という最悪の結果を受け、解任危機に瀕した指揮官が採るべき策はフレッシュな人材を積極登用し、フォーメーションに変化をつけること。それしかなかった。

 まさに背水の陣で迎えた12日のホーム・オーストラリア戦(埼玉)。森保監督は遠藤航(シュツットガルト)をアンカーに据え、田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタ・クララ)をインサイドハーフに置く4-3-3を採用。中盤の距離感を修正し、ボールロストを少なくするとともに、高い位置からプレスをかけ、中盤で相手を自由にしない形を取るように仕向けたのだ。

 オーストラリアのグラハム・アーノルド監督も日本がなんらかの変化をつけてくることを予想。オマーン戦(ドーハ)のオーソドックスな4-2-3-1から4-3-1-2のような形に変化させてきた。このため、中盤の枚数自体は数的不利だったが、サポートとカバーリングを繰り返すことで、穴を作らなかった。

「23番(ロギッチ=セルティック)と13番(ムーイ=上海上港)に嫌な配置を取られて、マンツーでハメ込むのができなかったことがあったので、それを自分と航君と碧、サコ君の4枚で、相手の中盤4枚をうまく見るような形を取った」と守田もコメントしていたが、守備の意思統一は確実に取れていた。
 
 しかも、攻撃は彼ら中盤が前へ出ていくシーンも作れた。前半開始早々の8分の田中碧の先制弾はまさに象徴的シーンと言っていい。左で遠藤、守田、南野拓実(リバプール)とパスがつながり、南野がドリブルで持ち上がっている間に、田中碧はスルスルと伊東純也(ゲンク)の背後からペナルティエリア内に侵入。折り返しに反応し、ベヒッチ(ギレスンスポル)と入れ替わりながら、巧みに右足で決め切った。
 
「拓実君がボールを持った時、信じて走った。決め切ることだけに集中していた」と言う背番号17は紛れもなく日本の光明となった。彼は2019年E-1選手権(釜山)で2試合に出てはいたが、その後はコロナ禍もあってA代表には絡んでいない。それでも東京五輪全試合スタメン出場し、遠藤や吉田ら主力とのコンビネーションはでき上がっていた。守田とも川崎フロンターレで確立した関係性があり、やりやすさはあったのだろう。

「緊張しないわけがないですよね。こんな日本サッカーの大一番で自分が初先発で、やっていない選手もいる中で、本当に限られた選手しか立てない舞台に立たせてもらっているわけだから」と、本人は人生最大の重圧を感じたというが、それを乗り越えなければ戦力にはなれない。若い選手を使う時はつねにリスクが伴うもの。森保監督はその壁を越えきれず、躊躇している印象があったが、土俵際に追い込まれてついに大ナタを振るった。それが奏功したことで、チームはようやく一歩前に進むことができた。

 後半になって、負傷の大迫に代わって1トップに起用された古橋亨梧(セルティック)、エースナンバー10・南野に代わって送り込まれた浅野拓磨(ボーフム)、失点に絡んだこともあって疲労困憊だった長友との交代を命じられた中山雄太(ズウォーレ)にしても、田中碧と同じような新風を吹き込んだ。

 古橋の1トップにしても前々から待望論が出ていたが、指揮官は代えやすい左右のサイドに置くだけで、大迫を下げてまで使うという気概は見られなかった。が、今回はどうしても大迫を下げざるを得ない状況が生まれ、タメを作れるタイプのオナイウ阿道(トゥールーズ)起用や南野を真ん中に持ってくる形ではなく、古橋に賭けた。結果的にゴールには至らなかったが、彼の飛び出しから決定機も生まれ、ゴールの予感は漂った。前向きな要素は少なくなかった。
 
 2点目を演出した浅野にしてもタテへタテへという推進力をもたらし、ここ一番の勝負強さを示した。恩師・森保監督の窮地を救いたいという気持ちも強かったのだろうが、86分の左足シュートには迷いがなかった。「コンディションのいい選手を使え」というのはサッカーのセオリーだが、その原点に指揮官が立ち返ったことで、V字回復の兆しが見えてきた。そこは大きな朗報と言っていい。
 
 とりあえずひとつの関門は突破したが、11月のベトナム(ハノイ)・オマーン(マスカット)2連戦も予断は許されない。国内組は日本→ベトナム→オマーンの大移動、欧州組に至っては欧州→ベトナム→オマーンという世界一周のような三角移動を強いられる分、調整は今回以上に難しくなる。最低でもオマーンをかわして3位は確保しないといけないが、彼らは中国戦を中東で迎えられるはずなので、ほとんど移動がない中、2戦を戦える。9月のホームゲーム同様、またしてもコンディション面で不利なのだ。

 だからこそ、ベトナム戦を国内組中心、オマーン戦は欧州組中心の編成で戦うようなプランも本気で考えるべき。移動負担を最小にとどめ、全員がいい状態で戦わなければ同じ轍を踏みかねない。ようやく柔軟性が見えてきた森保監督には、より幅のあるチームマネージメントを強く求めたい。

 今回の「涙の勝利」を無意味なものにしないためにも、残り6戦はひとつの取りこぼしも許されない。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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