タレントを揃える日本とオーストラリアの歴然とした“戦力差”。それでも中東勢を含め力関係が拮抗しているだけに…

タレントを揃える日本とオーストラリアの歴然とした“戦力差”。それでも中東勢を含め力関係が拮抗しているだけに…

日本は田中の先制点などで、強敵オーストラリアに2-1の勝利を収めた。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



[カタール・ワールドカップ・アジア最終予選]日本2-1オーストラリア/10月12日/埼玉スタジアム2002

 日本にとっては、中東の2か国に敗れたことと同時に、サウジアラビアとオーストラリアが順調に3連勝したことも誤算だった。自国の想定外のつまずきに、ライバル国の好調なスタートダッシュが危機的状況に拍車をかけた。

 結局日本は9月、10月シリーズともに初戦を落としてから巻き返す流れになったわけだが、敗戦による学習の時間が高くついた。

 オーストラリア戦では「今回の活動を見て良いプレーをしていた」(森保一監督)と、田中碧と守田英正の起用に踏み切り、「2人が最も力を発揮できる形を考えて」4-3-3という選択に辿り着いた。だが裏返せば、東京五輪までの流れからふたたび時計を巻き戻そうとした指揮官の判断が、最終予選開幕からの発進力にブレーキをかけてしまった感は否めない。

 オーストラリアは、ハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカ、ティム・ケーヒルらプレミアリーグのスター選手が顔を並べた21世紀初頭の黄金期に比べれば、ごく平凡なチームだ。
 
 実際、選手個々の能力を比較すれば、総じて日本が上回っていた。身体の使い方や駆け引きも含めたテクニックの優位性は明らかで、仕掛けやボール保持から、ボール奪取まで局面の勝負で劣勢に回ることはなかった。

 これは前回予選のヴァイッド・ハリルホジッチ監督(日本)対アンジェ・ポステコグルー監督(オーストラリア)のときも同じで、オーストラリアが丁寧なポゼッションを試みているあいだは大きな混乱に陥ることは少なかった。逆に日本が序盤から相手のCBのパスコースをサイドに限定しながら厳しく追い込んだので、オーストラリアは長いボールを蹴り込まない限り自陣で狙い撃ちに遭う運命にあったのだ。

 日本の4-3-3は、互いに連動する3人のMFを軸に機能した。田中が2CBの脇に降りて起点となれば、遠藤がスペースを突いて推進力を発揮し、守田が攻撃をサポートする。オーストラリアにビルドアップの段階から圧力をかけ続ける日本は、速いカウンターから再三にわたり相手を脅かし続けた。

 明暗を分けたのは序盤からのプレッシングの強度と効率で、こういう試合が出来ていればオーストラリアの後手に回る心配はあまり要らない。そういう意味では、気温21度と一気に冷え込んだ気候も日本に味方した。
 

 本来グループBを俯瞰すれば、日本の戦力の質は際立っている。オーストラリア戦の勝利も「私が何かを伝えたというよりは、選手たちが話し合って絵を共有してくれたことが大きい」と森保監督も語っている。

 もしこれだけのタレントを揃えたチームが世界への挑戦機会を失えば、損失は計り知れない。ただし強化方法や監督の采配、地理的条件なども含めてトータルな見地に立つと、サウジアラビアやオマーンが落差を埋めており、オーストラリアには他にない特徴がある。つまり現状で日本を含めたこの4か国は、直接対決すれば、どちらに勝敗が転ぶか判らない力関係になっている。

 中東勢はもともとサッカー文化が浸透し、技術水準が高いが、海外志向がないので国内でチーム強化に時間を割ける。この状況下で有能な監督を迎えたので、世界にインパクトを与えるような躍進は望めなくても、日本を脅かす程度に整備してくるのは可能だ。

 一方、自国に選手が残らない日本は、個々の質が高まってもそれを効率的に活用するためのデータが不足し、指針が定まらず苦戦を強いられている。
 
 グループ3位となりプレーオフを経由することも含めて、日本のワールドカップ出場の可能性は、依然として良くて五分五分だろう。ただし、終盤にホームゲームを3試合残す日本は、11月最後の中東での試合となるオマーン戦が重要な試金石となる。

 ストレート通過を目指すなら勝利が必須だが、無理に仕掛けて3位の座まで危うくしてしまえば真の終戦が訪れる。ここからは長い道のりも視野に入れた臨機応変の戦略が求められる。

 一方、11月には上位2か国が直接対決をするので、日本にとってはサウジアラビアがオーストラリアを叩いて独走態勢を築くシナリオのほうがありがたいかもしれない。少なくとも今の日本の立場では、サウジアラビアよりオーストラリアのほうが引きずり降ろしやすい。

取材・文●加部 究(スポーツライター)

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