「想定外の出来事が起きている」今季のACL。原副理事長は特殊な状況下で戦う日本勢をどう評価している?

「想定外の出来事が起きている」今季のACL。原副理事長は特殊な状況下で戦う日本勢をどう評価している?

ACLのラウンド16で大邱を下した名古屋。特に光ったのはハットトリックを決めたシュヴィルツォクの活躍だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 コロナ禍で開催された今季のAFCアジア・チャンピオンズリーグ(以下ACL)は、オーストラリアの3クラブが参加辞退するなど、イレギュラーな面が少なからずある。ラウンド16の2試合を現地観戦した原副理事長は、特殊な状況下で戦うJリーグ勢の奮闘ぶりをどう評価しているのか。今後の展望も含めて、訊いてみた。

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 今季のACLは正直、読みにくいです。実際、大会開幕前にオーストラリアの3クラブがコロナ禍の影響で参加辞退を余儀なくされ、中国勢はグループステージを若手主体のチームで戦うなど、想定外の出来事が起きていますよね。

 運に左右される部分もあって、象徴的だったのが決勝トーナメント1回戦の組み合わせ抽選。名古屋グランパスとセレッソ大阪がともにホームで戦う一方、川崎フロンターレはアウェーで、しかも韓国最強の蔚山現代と対戦することになりました。川崎はひと言で、不運でしたね。

 蔚山は確かに強かったですが、シーズン前半の川崎ならきっと勝っていたでしょう。しかし実際は三笘薫選手、田中碧選手がこの夏に移籍で抜け、怪我人もいたので、チーム状態があまり良くなかった。試合をやるタイミングに恵まれなかったという点でも、アンラッキーでした。

 川崎はACLとの相性がいまひとつです。過去の大会では信じられないような負け方をした試合もあって、今回はPK戦で敗れていますし、そういう見方はできるでしょう。悔しい経験をしている分、ACLへの想いは強くなっているはずですから、来季以降にタイトルが獲れるよう改めて頑張ってほしいです。
 

 浦項スティーラーズに敗れたC大阪もツキに見放された印象です(結果は0−1)。8月下旬にレヴィ―・クルピ監督を解任し(後任は小菊昭雄氏)、ドタバタした中で清武弘嗣選手と坂元達裕選手の両主力を怪我で欠くタイミングでの試合でしたからね。苦戦を強いられて当然だったと、私はそう捉えています。

 唯一、名古屋だけは良い状態で大邱FC戦に臨めました。リーグ戦で判断するかぎり、守備が安定しているうえに、新外国籍選手のFWシュヴィルツォクがフィットしていましたから十分な勝機がありましたよね。実際、シュヴィルツォクは大邱戦でハットトリックと力を示しましたし(結果は4−2)、名古屋は会心のゲームをしたと思います。
 

 Jリーグ勢で最後の砦となった名古屋には期待したいです。ただ、懸念材料がないわけではありません。国内のカップ戦でも勝ち上がっていて、リーグ戦では来季のACL出場権を獲得できる3位以内を狙える位置にいる現状ではACLに集中できない。それが果たしてどう出るか。

 また、ACLの準々決勝はアウェーの浦項戦(10月17日)ですから、遠征先、帰国後の“バブル”(感染拡大防止策のひとつ。選手やチーム関係者を隔離し、一定期間外部と接触させない)での影響も気になります。今季のグループステージでバブルを経験した人たちの話によれば、想像以上にきついらしいです。隔離期間中にコンディションを落とす恐れもあるわけで、今大会ならではの難しさを感じます。

 さらに言えば、韓国勢のJリーグ勢に対するライバル意識が半端ない。韓国のクラブはKリーグ以上にACLに懸ける想いが強いらしく、日本のクラブが相手となればいやが上にもモチベーションを高めてくる。そういうのも、名古屋が勝ち上がるうえでの“壁”になるでしょうね。

 いずれにしても、名古屋の優勝を願っています。クラブの関係者も「滅多にないチャンスだから勝ちたい」と言っているので、頑張ってほしい。アジアを制覇できるだけのタレントがいて、シンプルな戦い方も浸透しています。なかでも素晴らしいのがCBのキム・ミンテ選手で、丸山祐市選手の穴(右膝靭帯損傷で長期離脱中)をよく埋めています。堅守主体のサッカーは一発勝負に向いているはずなので、少なくとも東地区は制してほしいです。
 

 今大会はオーストラリア勢の不参加などイレギュラーな部分があって、「勝っても素直に喜べない」との意見もあります。ただ、そんな雑音も当事者には関係ありません。やるからには優勝を目指す、それが当然のスタンスです。むしろ特殊な状況下で大会を制したほうがファン・サポーターの記憶に残るかもしれません。

 ACLは他国のクラブと対戦できる貴重な舞台で、大きな刺激をもらえます。だからこそ、1試合でも多く経験できれば選手としても成長できます。そうした観点からACLを強く意識するクラブも増えてきました。確かに、クラブレベルで国際経験を積めるのは大きいです。Jリーグとはまた違った味付けのサッカーにどう対峙し、攻略するのか、そこがACLを戦う醍醐味でもあります。

 ACLに出ればクラブのステータスが上がり、そこで優勝できればJリーグのブランドも高まります。だからこそ、名古屋には栄冠を掴んでもらいたいです。

<プロフィール>
原 博実(はら・ひろみ)/1958年10月19日生まれ、栃木県出身。現役時代はFWで早稲田大、三菱重工などで活躍。日本代表歴は75試合・37得点。現役引退後、浦和、FC東京の監督を経て日本サッカー協会で技術委員長なども務めた。16年3月にJリーグの副理事長に就任し、現在に至る。

取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

※本稿は、サッカーダイジェスト10月28日号に掲載された「J’sリーダー理論」の内容を転載したもの。

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