【バイタルエリアの仕事人】vol.10 小野伸二|天才が期待を寄せる“特殊なドリブラー”三笘薫。「若いときから海外を目指すのは良いこと」

【バイタルエリアの仕事人】vol.10 小野伸二|天才が期待を寄せる“特殊なドリブラー”三笘薫。「若いときから海外を目指すのは良いこと」

小野はこれまで培ってきた経験を手に、チームのために走り続ける。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)



 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第10回は、今季約1年半ぶりに北の大地へ帰還した誰もが知る“天才”小野伸二だ。前編では、海外への挑戦やプロを目指す子どもたちに伝えたい価値観、バイタルエリアでの予測について語っているが、後編では札幌に対する思いや今後の自身のビジョンなどを深掘りしていく。

 小野は今年6月9日に行なわれた天皇杯2回戦でゴールを挙げ、同大会の最年長得点記録を41歳255日に更新。いまなお、足もとの高い技術で観客を楽しませるファンタジスタは、これまで培ってきた経験を手に、「できることがある」とチームのために走り続けている。

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 バイタルエリアのスペースを消されてしまった時の対処としては、無理にそこから攻めようとせず、横パスを出すなどの工夫が必要です。もちろん、自分からゴールに直結するパスを出すことが理想ではありますが、角度を作って3人目の動きを使うなど、戦術眼が試されるエリアですね。

 守備側からすると、スペースを埋めるとか、ボール保持者に対して強くいって、選択肢を与えないことがすごく大事。パスを出させない距離感をディフェンスがしてきたら、自分も嫌なので。でも僕自身、ディフェンスの能力に秀でた選手ではないので、守備について語れる立場ではないですけど……。

 札幌もバイタルエリアを使えない時は、3人目の動きも使うことをよくやります。そういった展開から相手のゴールを脅かせるチームなので、バイタルエリアの使い方については得意なチームだと思っています。

 この前の横浜F・マリノス戦(32節/●1-2)は、前半から僕たちも良いものを見せられていて、先制したなかで終盤に逆転されてしまうという非常に悔しい戦いでした。決められるチャンスがあるのに決められないのは非常に残念。ただ、横浜相手にも力を見せられた試合だったので、決定力さえ改善していければ、もっと上を目指せるチームになるはずです。

 今季はここまで、僕の出場機会はあまりありませんでしたが、とにかく練習から自分が頑張っている姿をチームメイトに見せて、良い刺激を与えていきたいと思っています。ベンチに入れてもらうことは多いので、チームのためにひとつでもできることがあればと常に考えて一生懸命やっています。
 

 今年1月、FC琉球から札幌へ完全移籍。久々に帰還して感じたのはクラブの“成長”だった。いまだJ1でのタイトル獲得には至っていない札幌だが、大切なのは「J1に定着できている」現状だという。そんな札幌に対する思いや、期待をしている若手選手、また自身の今後の展望などについても語ってもらった。

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 今年1年半ぶりに札幌に帰ってきて感じたのは、みんなが自信を持って、とくに大卒の選手たちが「チームを引っ張っていこう」という強い気持ちを持ちながらやってくれていることですね。そういうところでチームの成長を感じますし、選手たちが良いメンタルを持ってできていると感じます。

 もちろん後輩からいろんな質問をされることもありますし、本当に立派な選手たちですよ。自分のスタイルに自信を持っています。

 とくに高嶺(朋樹)には注目していて、今シーズンも非常にコンスタントに出場して、力を発揮できていますし、2試合前のG大阪戦でもゴールを決めましたね。日本代表にも入ってほしい選手なので、これからもっと質を上げていってほしいです。

 札幌以外では三笘薫選手(ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)に期待しています。こないだもハットトリックを達成していましたけど、日本人にいままでいなかったような独特なドリブルを持っていて、もっともっと活躍してほしいなと思います。これからステップアップするにつれて、海外の選手の身体の強さや、相手のプレッシャーも激しくなって、ボールを受けるのさえ難しい状況も経験するはず。これから彼がどのように成長していくのか、楽しみですね。

 若い時から海外に挑戦して上を目指そうと思えるのはすごく良いことです。僕らの時代では、そんな簡単に海外に行けるような状況じゃなかったですから……。やっぱりヨーロッパではいろんな国の選手と戦えて、多くのことを学べる場だと思うので、早くから上を目指すというのはすごく大事なことですよね。

 ただ海外へ挑戦できるのは、これまでの日本サッカーの歴史のなかで、多くの選手が切り開いて道を作ってくれたということを人間として忘れてほしくない。僕もそうでしたが、そういう歴史に感謝しながら、若手にはその道を突き進んでいってほしいです。それは日本サッカーにとっても、その選手にとっても大きな価値になることだと思うので。
 

 札幌はここまでタイトルを獲れていませんが、歴史のなかでJ1にこれだけ定着できているということの方が非常に大きな価値があると思っています。これから毎シーズン、ひとつずつでも順位を上げていくことを目標としていくべきです。

 2016年にJ1へ昇格して以降、ミシャ(ペトロヴィッチ)さんが監督になって、いまのスタイルについては、観ている人は非常に楽しんでくれているのではないかと思います。ただ、良いものが良いもので終わるのではなく、しっかりとした結果として残せるように、自分も少しでも力になれたら良いなと思います。

 今季も残り6試合。全部勝つという気持ちで、みんなでひとつになって、終わったあとに良いシーズンだったと思えるようにしたいですね。

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 インタビューはJ1リーグ32節の横浜戦を終え、今季も残り6試合となった10月20日に行なわれた。自身が試合に出られない現状についての質問にも、「練習からチームに良い刺激を与えていきたい」と真摯に答えてくれたのが印象的だった。

 今年9月27日に42歳の誕生日を迎えた小野。最後に、「今後のビジョンは?」と質問してみると、「僕はこれからどこまでサッカーができるか分からないですけど……」と前置きしつつ、「試合に出られなくても、良い環境、良い監督、良いクラブのもとでやらせてもらっていることは本当にうれしい」と満足げな表情を浮かべていた。

「これから出場のチャンスが多くあるわけではない。だからこそ少ない機会で結果に繋がるプレーができるよう、毎試合良い準備をしていきます」

 日本サッカー界が誇る天才、小野伸二のプロキャリアを最後までしっかりと見届けたい。

取材・構成●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)
 

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