3人のレジェンド、福西崇史×坪井慶介×佐藤寿人が語り合う「森保ジャパン検証」

3人のレジェンド、福西崇史×坪井慶介×佐藤寿人が語り合う「森保ジャパン検証」

日本代表でも活躍した左から福西崇史氏、佐藤寿人氏、坪井慶介氏。佐藤氏はリモートでの出演に。写真:徳原隆元



 カタール・ワールドカップのアジア最終予選を戦う森保ジャパンは、10月にアウェーでのサウジアラビア戦に敗れ、窮地に立たされたが、ホームでのオーストラリア戦には劇的な勝利。この2試合で見えた収穫と課題、そして11月のアウェー2連戦(ベトナム戦、オマーン戦)に向けた展望を、日本代表としても活躍した3人のレジェンドに検証してもらった。

※『サッカーダイジェスト』2021年11月11日号より転載。


――◆――◆――

――今日はお三方に、カタール・ワールドカップのアジア最終予選を戦う森保ジャパンについて語りあっていただければと思います。寿人さんはリモート出演ですが、ざっくばらんにお願いします。まず10月の2試合について。アウェーのサウジアラビア戦は0-1で敗れ、3試合で早くも2敗目を喫しましたが、続くホームでのオーストラリア戦では勝利を掴みました(12か国がふたつのグループに分かれ、各国が総当たりで10試合を戦う今最終予選で出場権を獲得できるのは各グループの上位2か国、計4チーム。各組の3位はプレーオフへ回る)

福西 10月の2試合が鍵だと考えていましたが、サウジアラビア戦を落としたのはやはり痛手だと思います。ただ、2位狙いではないですが、1位で予選を突破するには他力が必要となった状態で、ホームでオーストラリアに勝つことができました。危機感は持たなくてはいけませんが、そこまで悲観をしなくても良いのかなとは個人的に考えています。

坪井 僕も同意見ですね。満足できる結果ではありませんし、今後も厳しい戦いが続くはずです。ただ僕はやはりディフェンス面を気にして見ており、守備面は戦術的にも安定している印象です。そこが崩れなければ可能性はまだまだ広がるのかなと。

佐藤 僕も一緒でサウジに負けたのは非常に苦しかったですが、オーストラリアに勝ってなんとか踏みとどまれたのかなと。サウジ戦はアウェーだったので勝点1でも良かったと思うんです。相手に「3」を与えるなら、「1」を拾ったほうが現実的だったので。もっとも失点シーンを振り返っても、引き分けでOKと考えていた選手は少なかったように映りました。無理に前に出たことで、あの場面は結果的に柴崎(岳)のパスミスに見えましたが、チームとして立ち位置が悪く、本来いなければいけないところに人がいませんでした。外から見ていた立場とすれば、全体が得点を奪いに、前へ行きすぎていたように感じました。

福西 柴崎ひとりのミスではなかったのかなと。後ろにいた吉田(麻也)はクリアをしようという意図があったはずで、キーパーのポジショニング、柴崎へパスを出すタイミングを含め、全体がバラバラだった。寿人が言うようにあの時間帯でどう試合を運ぶかは課題が残ったよね。

佐藤 あそこ、もしフクさんがボールを持った時は中央にサポートが欲しいですよね?

福西 そうだね、中にいてほしい。一回、預けて、麻也が正面でもらえる形を作ってもらいたい。柴崎がボールを持つ前からチーム全体での準備が必要だったよね。

佐藤 点を取りにいく時のバランス、そこが崩れていました。

坪井 サウジ戦は柴崎にボールが入った時に周りの選手が上手く関わることができず、今話したような場面がいくつかあったように見えました。柴崎の判断が遅いと思われがちですが、サポートを含め、迷ってしまう部分があったのではないでしょうか。それがすべてではないですが、改善したいポイントになります。
佐藤 あとはメンタル面も影響したかもしれません。初戦のホームでオマーンに敗れ、予定していたプランが崩れたのかなと。どうですかね?

福西 それもあるし、僕は固くやりすぎているように見えたかな。負けられないから後ろに重心がかかり、まずは後ろのバランスを崩さないような戦い方になっていたような。サイドバックは上がるにしても、中からもう1、2枚、前に出ていければ、プレッシャーをかけられるけど、サウジ戦では7番(トップ下のアルファラジ)に対応した一方で、上手く前へいけなかったのかなと。相手に応じて柔軟にプレーできるのがベストだけど、サウジ戦では中盤の相手選手の出て入っての動きにちょっと翻弄された印象はあるよね。

佐藤 前半はチャンスはありましたけど、やっぱり決めないと……。

福西 ストライカーの寿人としてはそこをどう見る?

佐藤 決めないと、苦しい結果になるのはサッカーの世界でよくあることです。オマーン戦もそうですが、そのツケを払う形になりました。

福西 サウジ戦は鎌田(大地)からのスルーパスに抜け出した大迫(勇也)のシュートもあったよね。寿人はあのシーン、何か策はあった?

佐藤 僕が考える策としてはキーパーの上ですかね。

福西 ひとつ前のタイミングで上か。

坪井 あそこは少し遅れてDFのプレッシャーが来ていたよね。

佐藤 そうですね。それと、もう少し利き足の右に持ち出したかったはずです。足もとに入りすぎて、ミートする時に寄せられていました。最初のトラップは良かったですが、キーパーに読まれてもいました。それと僕はクロスに大迫が合わせた場面のほうが惜しかったとも感じました。

坪井 中国戦のような右サイドからのクロスに合わせたシーンだね。大迫はチャンスに絡んでいて、その部分では良さは出ていたのかなと。あとはゴールというところだったけど。
 

――従来の4-2-3-1から4-3-3に変えて勝利を掴んだオーストラリア戦はどう分析しますか? 逆三角形の中盤はインサイドハーフに守田英正選手、田中碧選手、アンカーに遠藤航選手が入りました。

福西 結果論として中盤の3人が良かったですよね。3人だと守備対応へ動く時の距離感が取りやすく、ひとりがサイドに出ても、中盤はいつもの2ボランチの感覚でプレーできる。だからこそ、思い切って守備に出られるし、その影響で、サイドバックがどこに戻るだとか、センターバックの立ち位置が取りやすいなど利点があったはずです。センターバック視点ではどうかな?

坪井 オーストラリア戦を見る限りでは、4-3-3のほうがバランスは良いのかなと思いました。

福西 サウジ戦だとひとりが出ると、中盤の底がひとりになってしまい、相手が上手く入ってきた時に、出遅れるシーンがあった。でも2枚いると、安定してできるよね。

坪井 ボランチが3枚だと、フクさんが話すように数的優位な状況を作れるので、(遠藤)航がボールを奪いにいける回数が増えました。航はやはり球際はすごく強いので、思い切ってチャレンジできたのは良かったですね。ただ、オーストラリア戦で気になったのは、ズレのところ。4-3-3だと、(両SBの)長友(佑都)、酒井(宏樹)が攻め上がった際の空いたスペースを埋める作業がポイントになります。(攻め上がったどちらかのSBを除く最終ラインの)3枚でカバーしきれないシーンが現にありました。
 
佐藤 前半のタガートにポスト直撃のシュートを打たれたところはそうでしたよね。

坪井 数はそこまで多くないからこそ、目立ってしまうところもあって。

福西 失点シーンもよく言われるけど、長友が前に対応に出て、その裏のスペースを使われ、中に出されたボールをボランチがファウル。そのフリーキックを直接、決められた。

坪井 コーチングを含めて修正したいですよね。先ほどのタガートに打たれたシーンも(攻め上がった左SBの長友へのロングフィードをカットされてカウンターを受けた)、その前でパスをつながれたところで、センターバックの冨安は前に出ないほうが良かった。あそこは中盤の守田がズレたほうがベターでした。4-3-3のトレーニングをどれだけできたか分かりませんが、システムを変えたことでのメリットとともに、少しのデメリットも見えました。でもしっかり修正できると思います。

福西 様々な状況で誰が守備に出るか。確認をしたいところだよね。

坪井 はい。長友が引き出された失点シーンも、後ろの3枚がズレれば良かったと思うんです。

福西 それぞれが左へね。

坪井 ただあのシーンは冨安が左サイドへカバーに出なかったんです。でもあそこは逆に出たほうが良かった。中でコーチングはしているはずですが、スムーズにできるかですよね。改めて全体が良かっただけに、そのふたつのシーンは個人的にすごく気になったんです。

福西 ボランチがいくと追いかける状況になるので、難しい。寿人みたいな選手だったら絶対にそういうギャップを狙っているはずだしね。そうした時に誰が出るのか。

坪井 後ろでズラしながら、ボランチを最終ラインに入れるのか、そこは監督のやり方にもよりますよね。

福西 今後も4-3-3でいくとなれば、どう修正するかだよね。

――攻撃面はどうでしょう?

佐藤 僕はファーストアクションがゴールに向いていないのが気になります。今のチームは、前線の選手が下りて、一度収めてから攻撃のスイッチが入ります。でも、それだけでなく、前線の選手が相手の背後を取り、最終ラインを押し下げれば、中盤の選手が動けるプレーエリアが生まれます。攻撃の選択肢はより増やしたいですよね。ボールを収められる大迫が今のチームの軸ですが、収まらない時や、彼への縦パスを消されている時、どうするか。固めてくる相手に対しては、足もとでボールを受けにくいです。現状では狭いところから狭いところに進むプレーも目立ちます。サウジ戦では裏への動きができる伊東(純也)の欠場(累積警告)が、痛かったですし、今後、推進力のある古橋(亨梧)や浅野(拓磨)らの起用法も鍵になるはずです。

福西 サウジ戦は相手が構えているところでボールを受けた大迫は苦しんだように映ったけど、一方で、オーストラリア戦では大迫が起点になれたのは、寿人の目から見て、ウイングを含めた裏への動きが効いていたからということかな?

佐藤 そうですね。だからこそ、スペースをチームとしてどう作るかが大切だと思います。セットされた相手の守備を広げる作業をしないと、大迫であっても挟まれたり、潰されたりします。そういう時に“プランB”を用意できるかですよね。
福西 自分も気になるのは大迫が上手く機能できなかった場合。サウジ戦など裏への動きが少ない時に、大迫がサイドへ流れ、空けた中央のスペースに外の選手が入ってくるという形があまり見られなかった。寿人としては、ああいうシチュエーションはどう感じる?

佐藤 ユニットとして上手く動けていない面はあると思います。出し手も大迫をファーストチョイスと考えているはずですが、そこを対応された時に周囲がどう動くかは、向上の余地があるはずです。伊東は空いたエリアに入っていく上手さがありますし、もし古橋を2トップの一角で起用する手があるなら、彼も味方が生み出したスペースを有効活用できます。改めて、今は前線でボールをキープし、2列目を生かす形に捉われすぎているのかなと少し感じます。

福西 相手に応じて、こう崩すというパターンは今後、増やしていく必要性がありそうだね。
 

――オーストラリア戦で相手のオウンゴールになったとはいえ、劇的な勝ち越し弾につながった浅野選手のシュートシーンはどう見ますか? CBの吉田選手からのロングフィードを受けて、思い切って打ちました。

佐藤 良い形で足を振り抜きましたし、結果的にオウンゴールになったのは可哀そうでしたが、あのシーンは古橋も詰めており、そのプレッシャーがオウンゴールにつながったはずです。中央に人数をかけ、点を奪える選手をゴールに近いポジションで起用することはやはり大事です。ファーストプレーで拓磨はコントロールミスをしたので心配でしたが(笑)、推進力を示してくれました。

福西 試合の終盤にゴールが決まって本当に良かったけど、チームとして、1-1に追いつかれた時に落ち込まなかったのも良かったよね。あと、オーストラリアが少し前に出てくれたのも大きかった。あそこで引かれていたら、厳しかったなと。だから必然的に試合終盤には日本として裏へのボールが増えたよね。

佐藤 オーストラリアは最終予選4試合目で一番、苦しい内容だったのかもしれません。(アタッカーの)マビルもベンチスタートでしたから。

坪井 ただ、先ほど寿人も話していたように、攻撃のパターンとしては、ロングフィードも展開に応じて柔軟に使っていければ良いよね。相手を見ながらピッチに立つ選手たちが各自で判断することも大切。極限状態でプレーしていることは重々、理解しているなかで、臨機応変にできる選手たちであるはずだから。

福西 想像以上にプレッシャーはかかっているはずだよね。


 
――そういう面で寿人さんは、広島時代に師事された森保監督の姿はどのように見ていますか?

佐藤 基本的には一喜一憂しない方だったので、クラブと代表ではやはり異なるんだな、というのが率直な印象です。広島では苦しい時も、そこまで表情に出しませんでしたが、オーストラリア戦での国家斉唱の際の涙や試合後にスタジアムを一周し、サポーターへメッセージを送った姿を見ると、常に冷静なポイチさんでも、抑えられない重圧があったのかなと、個人的には感じました。

福西 日本代表の監督だからね、相当なプレッシャーはあるはずだよね。

 

――では改めて今後の展望もお願いします。誰もが気になるのは日本がワールドカップへ出場できるかです。

福西 グループで3位になったとしても、プレーオフが待っているレギュレーションを見れば、完全に追い込まれた状況ではないと思います。ただ、その先のワールドカップ本大会を考えれば……。だからこそ、やはりグループ1位を目指してもらいたい。力はありますからね。

坪井 客観的に見ても、僕も出場権を得られると信じています。そして、これは状況次第ですし、1位を狙ってもらいたいですが、もしかしたらサウジアラビアにこのまま首位を走ってもらったほうが、勝ち星計算で日本としては良いのかもしれません。

佐藤 僕も出場権に関しては同じ考えですが、やっぱりワールドカップに行けるか、行けないかの状況になっていることが、残念でもあります。ロシア・ワールドカップでベルギーと死闘を演じ(ラウンド16で2―3で敗戦)、本来はその差をどう埋めるかを議論するべきところでしたから。個人的な考えを話すと、アジア2次予選のレベルを改善する必要もあると思います。強度が落ちる試合だと代表の成長につながりにくいです。ヨーロッパなどは密度の高い強化試合をこなしている一方で、アジアは日本もそうだったように、大量得点が生まれるゲームになっています。選手個々のレベルアップも目指しつつ、アジアとしてレギュレーションを改善する必要性を感じます。

福西 それは寿人の言うとおりだね。アジアのレベルアップにつながる強化策は考えなくてはいけないよね。

佐藤 あと、チーム内でより競争が生まれてほしいです。コロナ禍でこれまでの予選とは異なる環境で戦っているはずですが、その分、コンディションの良い選手には、どんどんアピールしてもらいたいですね。

福西 森保監督は、ここまで様々な選手を呼び、やり方はある程度、浸透しているはず。そのなかでそれぞれの個性をさらに出してもらいたい。

佐藤 そして11月はベトナム、オマーンとのアウェー2連戦で勝点6を取らなくてはいけないですよね。

福西 オマーンのスタジアムはお客さんが入ったら異様な雰囲気になりそう。以前に現地で解説を務めた時は煙で前が見なくなって(苦笑)。

坪井 厳しい戦いになるはずですよね。その意味でもオーストラリア戦で出た些細な課題も修正してもらいたいです。細かいところはコーチングや試合前の準備で解決できると思うんです。隙を作らずに改善点をしっかり潰していく。そこが大切です。
 
――今後のキーマンを挙げるなら誰でしょうか?

佐藤 僕は古橋です。セルティックでもしっかり結果を残していますし、個人的にはサイドではなく、よりゴールに近い位置で見たいですね。

福西 僕は守田。ここ最近の出来を考えれば貴重な存在。ボランチは柴崎もいますが、守田はポルトガルに行って守備も成長していますし、攻撃もよりスピード感が出ています。

坪井 冨安です。ひと言で凄いです。多くの諸先輩の方々がいらっしゃいますが、もしかしたら歴代ナンバーワンのセンターバックかもしれません。すべての能力が高いですからね。

福西 これは僕の勝手な意見で、吉田も素晴らしい選手だけど、冨安にさらに成長してもらうにはキャプテンに抜擢しても面白いのかもしれない。それほどの選手だよね。

坪井 それは思い切った策ですが、冨安の可能性はさらに広がるかもしれませんね。


取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

【プロフィール】
PROFILE ふくにし・たかし/76年9月1日生まれ、愛媛県出身。日本代表通算64試合・7得点。現役時代は磐田の黄金期を支え、FC東京や東京Vでもプレー。W杯は2大会連続出場。現在は解説者などとして活躍。

PROFILE つぼい・けいすけ/79年9月16日生まれ、東京都出身。日本代表通算40試合・0得点。06年ワールドカップに出場したDFで、浦和や湘南、山口で活躍。2019年限りでの引退後は解説業を中心に活動している。

PROFILE さとう・ひさと/82年3月12日生まれ、埼玉県出身。日本代表通算31試合・4得点。J1・J2通算220点を奪った生粋のゴールハンター。昨季限りで現役を引退し、幅広く活躍。ストライカーの育成も。


 

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