【現地発】東京五輪世代に勢いも、必要だったW杯経験者たちの言動…だから長友、大迫は重要視される

【現地発】東京五輪世代に勢いも、必要だったW杯経験者たちの言動…だから長友、大迫は重要視される

遠征地では長友(左)、大迫(右)をはじめ、W杯経験者たちが雰囲気づくりに努めていたという。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)



「今後に関しては、経験を積んでこのアジア最終予選で存在感を発揮してくれている選手たちが何人もいるので、ポジション争いの部分はニュートラルに見て決めていきたいと思ってます」

 2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選の命運を分ける11月2連戦で勝点6のノルマを果たした森保一監督は16日のオマーン戦(マスカット)後、今後の選手起用についてこうコメントした。

【PHOTO】W杯アジア最終予選ベトナム&オマーン戦の日本代表招集メンバー
 2019年のアジアカップ(UAE)準優勝以降、当時の主力である長友佑都(FC東京)や大迫勇也(神戸)、柴崎岳(レガネス)ら年長者たちを優先的に使ってきた指揮官だが、10月のオーストラリア戦(埼玉)での田中碧(デュッセルドルフ)、今回の三笘薫(サン=ジロワーズ)、中山雄太(ズウォーレ)らの活躍を受け、2022年は若手抜擢の傾向を強めていきそうだ。

 田中は冨安健洋(アーセナル)と同じ23歳。辛うじて若手に入るが、三笘と中山は24歳、さらに言うと97年早生まれの中山は板倉とともに年明け早々には25歳になる。サッカー選手として円熟期を迎えていい頃だろう。2002年日韓W杯の日本代表が当時22〜23歳の小野伸二(札幌)や稲本潤一(相模原)が軸だったのを考えれば、彼らが台頭してくるのは遅すぎるくらいだ。

 石橋を叩いて渡るタイプの森保監督は今夏の東京五輪の後、「徐々に若返りを図っていこう」と考えていたのだろうが、序盤の苦戦でその流れを加速させなければならなくなった。それはむしろ日本代表にとっていいことかもしれない。

 ただ、ベテラン勢が全く不要かと言えば、決してそうではない。日本がW杯でベスト16入りした2002年日韓、2010年南アフリカ、2018年ロシアの3大会はベテランがチームの引き締め役を担い、若手を巧みに盛り上げたからだ。逆に主力のメンタル面をケアする年長者がいなかった2006年ドイツ、2014年ブラジル両W杯は初戦のショッキングな黒星から立ち直れず、ズルズルと惨敗してしまった。日本代表経験者の橋本英郎(FC今治)も「ベテランの力はW杯で勝ち上がるために必要」と指摘していた。

 かつて「ドーハの悲劇」を味わった指揮官はこうした歴史を熟知している。だからこそ、今回の最終予選で長友や大迫らを重要視したのだ。その考え方は理解できるところだ。

 実際、オマーンで数日間練習を見ていても、一番声を出していたのは長友だった。大迫や酒井宏樹(浦和)らW杯経験者たちも雰囲気を盛り上げようと努力していた。キャプテン・吉田麻也(サンプドリア)にいたっては、序盤3戦で2敗した時、「カタールに行けなかったら責任を取る」と公の場で言い切るほど、強い覚悟を前面に押し出した。
 こうした立ち振る舞いは東京五輪世代にはできない。久保建英(マジョルカ)のように日本人離れしたメンタリティを持ち合わせた若者もいるのは事実だが、弱冠20歳の人間にチーム統率役を託すのはやはり難しい。この先もチームは数々の修羅場に直面すると想定されるだけに、若手とベテランをうまく使いながらチーム全体の底上げを図っていく形がベターだ。
 
 そうやってお互いが刺激し合いながら、森保体制発足時からの重要テーマである世代交代を推し進め、1年後のカタールW杯では東京五輪世代が中核を担える状態になれば理想的。森保監督にはそのようなチームマネージメントを強く求めたい。

 もちろん、より年齢が高い選手でも日本代表のプラスになるという確信が持てる人材がいれば、抜擢の余地は残しておいた方がいい。例えば、35歳の岡崎慎司(カルタヘナ)などは、イザという時に大迫の代役を十分こなせるだけのレベルを維持している。東京五輪世代には上田綺世(鹿島)という後継者候補がいるものの、絶対に勝たなければいけないという状況に再び直面した際には、判断材料のひとつに岡崎という選択肢があってもいい。

 ロシアW杯最終予選を指揮したヴァイッド・ハリルホジッチ監督(現モロッコ代表)も2017年3月のUAEとの大一番(アルアイン)で、当時34歳の川島永嗣(ストラスブール)と今野泰幸(磐田)を呼び戻し、宿敵を撃破することに成功した。その時の川島は好セーブを連発し、今野も値千金の追加点をゲット。「スーパー今ちゃん」と香川真司(PAOK)らに絶賛された。そういうベテランの使い方は今後も考えられるのだ。

 いずれにせよ、2019年アジアカップ準優勝メンバーへの強いこだわりを捨て、選手起用の幅を広げていくことが肝要だ。既存戦力への依存状態が崩れてきたことを前向きに捉え、2022年カタールW杯イヤーには、もっと多様な戦い方のできる日本代表が見られることを期待したい。森保監督にはベストな方向性をしっかりと見極め、遂行していく力を今一度、磨いてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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