「面白みがない」と思わせるほど隙がないR・マドリー。 バランス感覚が突出したアンチェロッティ監督の戦い方は無欠だ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

「面白みがない」と思わせるほど隙がないR・マドリー。 バランス感覚が突出したアンチェロッティ監督の戦い方は無欠だ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

盤石の試合運びでスーペルコパ決勝を制したマドリー。(C)Getty Images



 1月16日、サウジアラビアで行なわれたスペイン・スーパーカップ(スーペルコパ)、レアル・マドリーは決勝でアスレティック・ビルバオを2−0と下し、優勝を飾っている。

 チームとして重厚さを感じる戦いだった。攻められても力強く受け止め、攻撃に回ったら一気呵成、総力戦で凌駕した。ラ・リーガで首位を走り、チャンピオンズ・リーグでも決勝トーナメントに進出し、他を寄せ付けなくなりつつある。

「面白みがない」
 
 そう揶揄されるほど、隙がない強さは語るのが難しいのだ。

「僕たちはカウンターだけでなく、いろんな戦いに対応できる。ポゼッションもできるし、守りを固めることだってできる。相手や状況に応じてね」
 
 マドリーの守護神であるティボー・クルトワは、躍進の理由をそう語っている。

「自分はゴールキーパーとして、ビルドアップをスタートさせられる。ただ、先制に成功したら、相手を誘い込むのは定石で、それは勝利の手段と言えるよね。なぜなら、僕たちはヴィニシウス・ジュニオール、アセンシオ、ロドリゴというスピードを武器にするアタッカーを前線に擁しているわけで。攻めるべき時が来たら攻め、守るべき時が来たら守る、僕らはそれができるチームなんだ」

 今のマドリーの好調が集約されている。決して派手さはない。徹底的にイニシアチブをとって、めくるめくパスワークで、相手を翻弄する。時代の先駆けになるようなスタイルを目指しているわけではない。むしろ、クラシックな戦い方で、守りは難攻不落、攻撃は電撃的。言わば、堅守カウンターが主体だ。

 撓むようなソリッドな守りで、攻撃を受け止める。カゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの3人が中盤でバランスを取り、ダビド・アラバ、エデル・ミリトン、ナチョ、そしてクルトワが立ちはだかる。相手にボールを預け、誘い込み、ボールを回収。前線でカリム・ベンゼマが収めてカウンターを発動させ、ヴィニシウス、アセンシオが手数をかけずに仕留める。

 効率を極めた戦いだ。

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 イタリア人カルロ・アンチェロッティ監督はその点、突出してバランス感覚に優れている。スペクタクルにも、カテナチオにも引っ張られない。できる限り勝率の高い戦い方を選択し、采配を振れる。

「やるべきことをやっているだけ」

 アンチェロッティ監督は淡々と言う。取り組みは論理的。陣容を見ても、カゼミーロ、モドリッチ、クロースの3人でプレッシング戦術主体に無理があることで、リアクション戦術を採用し、ボールプレーに入った時はその技術ビジョンを生かしている。

「面白みがない」
 
そう錯覚させるほどに、彼らのサッカーは隙がなく、無欠だ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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