「大丈夫。やるしかない」。“怪物CB”チェイス・アンリ、サウジとの優勝決定戦に並々ならぬ決意【U−21代表】

「大丈夫。やるしかない」。“怪物CB”チェイス・アンリ、サウジとの優勝決定戦に並々ならぬ決意【U−21代表】

サウジとの優勝決定戦で出場が見込まれるチェイス。期待に応えられるようなプレーを見せたい。写真:松尾祐希



 日本から約8000キロ。遠く離れたドバイの地で、“怪物CB”が実戦を待ちわびている。

 ドバイカップに参戦しているU−21日本代表には、U-19日本代表組から3名、飛び級で招集された。松木玖生(FC東京)、甲田英將(名古屋)、そしてフィールドプレーヤーとしては今大会まだ出場機会が巡ってきていないチェイス・アンリである。

 松木、甲田は今季がプロ1年目の年。だが、チェイスだけは尚志高を卒業した今も所属先が決まっていない。海外クラブへの加入の噂も聞こえるなか、近いうちに行き先は決まるだろうが、4月を目前にして進路が確定してないのは異例だろう。

 だが、ここまでの時間を決して無駄にはしていない。むしろ、今までにない経験を積み、自身の成長を促す機会を得てきた。

 今大会中に誕生日を迎えた18歳は、高校サッカー選手権終了後の1月上旬、A代表の候補合宿にサポートメンバーとして帯同した。「A代表の活動に参加した際、スピードが違って、本当にすごく刺激を受けた」と本人が振り返った通り、A代表のエース大迫勇也とのマッチアップなど普段では味わえない体験をした。

 その後はU−21代表、U−19代表、高校選抜でプレー。常に自分と向き合い、今までと変わらずに謙虚な姿勢でさらなるレベルアップを目指して戦ってきた。

 とはいえ、自身の置かれた状況に焦りがなかったわけではない。同級生たちは次々にリーグ戦やルヴァンカップで試合経験を積む一方で、自身は様々なカテゴリーの代表で活動する日々が続き、そうした状況に心が付いていかなかった。
 
 仲間の活躍を見て、不安に駆られたのは一度や二度ではない。「『うわー』ってなりながら、『試合に俺も出られるのかな?』って悩んでいた。少しだけ不安はありましたね」という言葉は、紛れもなくチェイスの本心だろう。

 だからこそ、今回のU−21代表のUAE遠征に懸ける想いは強い。U−23クロアチア代表との初戦(1−0)、U−23カタール代表との第2戦(2−0)ではいずれも出場機会がなかったが、少しでも吸収しようとベンチから熱心に戦況を見つめていた。

「今までは国内でしか代表の試合を戦ったことがない。(アウェーの国際試合は)雰囲気も違うし、相手からはオーラも出ていた」

 海外遠征の機会を得られたこと自体がチェイスにとっては財産だ。中学時代は代表歴すらなく、神奈川県のクラブ選抜止まり。選抜チームでも決して評価が高い選手ではなかった。

 だが、尚志高の3年間で一から学び、身体能力を生かす術と本格的にサッカーを学んだことで、海外クラブからも目を付けられる選手にまで成長を遂げた。今は3年前の自分と同じ。高校時代にどれだけ騒がれたとしても、U-21代表でもプロの世界でも“一番下”からのスタートだ。そう考えれば、代表で戦う機会を得られるだけで、さらなる成長のきっかけになる。
 

 3月29日に行なわれるU−23サウジアラビア代表との優勝決定戦。現状ではどのような起用法になるか分からないが、ピッチに立てば持てる力を出すだけだ。

 コンディションも悪くない。28日の前日練習では得意のヘディングでネットを揺らし、大岩剛監督からも「良いゴールだった」と賛辞をおくられていた。

 サウジ戦はチェイスにとって、自らの成長を図る場であり、新たなスタートを切る場でもある。
 
「大丈夫。やるしかない」と自分に言い聞かせるが、とんでもないミスをするかもしれない。プレーがうまくいかず、慌てることもあるだろう。だが、U−21日本代表には頼もしい先輩たちが揃っている。「アンリがミスしても、他の選手がミスをしても、みんなでカバーしたい」(藤田譲瑠チマ/横浜)。

 人は失敗をして成長する。誰もが通ってきた道だ。「恐らく、成長していくうえの第一歩になる。うまくいくか分からないけど、彼にとって今後の力に絶対になる」(大岩監督)。チャレンジを重ねるなかで成長してきた18歳に失うものはない。きっと大丈夫。失敗したとしても、チェイスは補って余りあるプレーで期待に応えてくれるはずだ。

取材・文・写真●松尾祐希(フリーライター)

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