ベトナム戦で機能しなかった4-3-3の中盤。遠藤・守田・田中のトリオ以外の幅をどう広げていく?

ベトナム戦で機能しなかった4-3-3の中盤。遠藤・守田・田中のトリオ以外の幅をどう広げていく?

柴崎は攻撃センスが持ち味の選手。アンカーとしては物足りなさが拭えなかった。写真:田中研治(サッカーダイジェスト/JMPA代表撮影)



 2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場権を獲得し、8か月後の本大会に向け新たな一歩を踏み出した日本代表。サバイバルのスタートとなった3月29日の最終予選ラストマッチ・ベトナム戦では、ここまでサブ組だった面々の強烈アピールが期待された。

 とりわけ、遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(サンタ・クララ)、田中碧(デュッセルドルフ)の3人が絶対的存在になりつつ中盤に誰が食い込むのかは興味深い点。ベトナム戦で先発したアンカーの柴崎岳(レガネス)、旗手玲央(セルチィック)と原口元気(ウニオン・ベルリン)の左右のインサイドハーフがどのような連係を見せるのかは注目すべき点だった。

 最終予選の序盤戦は、遠藤とダブルボランチを組んでいた柴崎なら、2018年ロシアW杯16強の経験もあり、前の2人を的確に動かしつつ、良いバランスを保ってくれるという期待もあった。が、彼も公式戦初のアンカー挑戦の戸惑いもあったのだろう。序盤はポジショニングに苦慮し、立ち上がりの3分には旗手のカバーに行って中央を大きく空け、カウンターを食らう場面も見受けられた。

 遠藤であれば、ボールを失っても激しいデュエルと寄せで一気にボールを奪い返し、流れを引き戻せる力があるのだが、柴崎はもともと攻撃センスが持ち味の選手。かつて遠藤が「岳も守備のところでは結構ガッツリ行っている」と話していたことはあったが、今回はそういう印象は薄く、アンカーとしては物足りなさが拭えなかった。
 
 一方、旗手も原口も前線へ侵入していくダイナミックさがウリ。本大会での23枠に生き残ろうと、この試合ではより前へ前へという意識が働くのも理解はできた。

 そうなると、どうしても柴崎やアウトサイドの面々との距離が遠くなる。そこでボールを失えば、ベトナムのカウンターの餌食になるのは自明の理。危機を察知した原口が下がってカバーに入るようになり、前半の終盤はほぼダブルボランチのような形になっていた。

 右サイドの久保建英(マジョルカ)もインサイドでプレーしたがる分、原口は気を遣わざるを得なかったのだろうが、チーム全体が同じ絵を描けず、ギクシャク感ばかりが目につく。森保一監督も「お互いのプレーのイメージを合わせることができず、難しい状況が続いた」と反省していた。

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 結局、指揮官は前半だけで4-3-3を諦めて、後半から4-2-3-1へシフト。最初は柴崎・原口のボランチの前にトップ下の久保が入る形になり、61分以降は守田・田中のダブルボランチに南野拓実(リバプール)のトップ下という配置に変更した。

 この結果、中盤は確実に安定感を増し、連動性もインテンシティも向上。頭からハイペースに飛ばしていたベトナムの運動量低下も相まって、日本が一方的に攻め込む展開になった。

 しかしながら、結果的には格下相手に勝ち切れず、1-1のドロー。4月1日に行なわれるW杯抽選会のポット2入りのチャンスをみすみす逃すことになった。

 不甲斐ない内容と結果でベトナム戦を終えた日本代表。その前に森保監督は異なるテストの仕方を選択できなかったのだろうか。というのも、4-3-3の3ボランチをそっくり入れ替えても、遠藤・守田・田中が見せていたようなパフォーマンスにはならないことは、戦う前から想像がついていたからだ。
 
「3人でやる一番のメリットは、誰がどこのポジションを取ってもある程度、しっかりプレーできる点。相手がマンツーマン気味についてきたりした場合には、ポジションを変えながらやっていたし、それは非常にポジティブ。お互いの特長を出す意味でもすごくいい」と遠藤も自信満々にコメントしていたが、3人には昨年10月のオーストラリア戦から6戦を共闘してきた蓄積がある。

 もともと守田と田中は川崎でコンビを組んでいたし、遠藤もクラブでインサイドハーフに入っている経験値がある。そのアドバンテージは非常に大きいのだ。

 柴崎も11月のオマーン戦の前半に、出場停止だった守田の代役としてインサイドハーフに入っているが、そちらのポジションであれば、もう少しベターなプレーができたはず。アンカーを守田か田中にして、柴崎と原口、旗手のいずれかをインサイドハーフで据える構成だったら、ここまでバタバタ感のある前半にはならなかっただろう。

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 森保監督が今後も4-3-3をベースにし続けるのであれば、遠藤の主戦場になっているアンカーを守田か田中が十分にこなせる状態を作り、そのうえでインサイドハーフに変化をつけていくアプローチのほうが合理的。遠藤が本大会でも万全の状態という保証はないし、アクシデントも起こり得る。最悪の事態を視野に入れても、2人のいずれかが確実にアンカー役を担える状態を築くことが肝要である。

 中盤の底が攻守両面で確固たる安定感と統率力で、周囲と的確なバランスを見出せる人材であれば、前目のMFは臨機応変に変えられる。久保や堂安律(PSV)のような超攻撃的なインサイドハーフコンビも時間帯によってはありだろう。6月と9月の残されたテストマッチ6戦では、まずそこから着手すべきだ。

 ベトナム戦で先発した柴崎、原口、旗手の3人には厳しい評価が下されたが、これでカタール行きの可能性が完全に潰えたわけではない。大激戦のインサイドハーフ競争に勝ち抜くのはハードルが高いが、所属クラブで結果を残し、代表に戻ってきた時に「確固たる違い」を示せるように努力するしかない。
 
 いずれにせよ、遠藤・守田・田中の3枚だけに依存している状態では、カタールW杯8強の壁は超えられない。

「選手層の幅を広げていかないといけない」と指揮官は神妙な面持ちでコメントしたが、ベトナム戦で突きつけられた現実をしっかりと受け止め、改善を図ることが、明るい未来を切り開く唯一の道。準備期間が短い今回はマネジメント力がより問われる。彼にはそのことを肝に銘じてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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