【U−21代表|ドバイカップ総括】“タフに戦う”を体現し3連勝で大会制覇。セットプレーでも確かな成果

【U−21代表|ドバイカップ総括】“タフに戦う”を体現し3連勝で大会制覇。セットプレーでも確かな成果

全3試合で完封勝利。苦しみながらもタフに戦い抜いたU−21戦士がドバイカップで優勝を飾った。(C)JFA/PR



 パリ五輪の開幕まで約2年5か月。U−21日本代表にとって、残された時間は長いようで短い。大岩剛監督が就任したのは昨年末。初めての活動も今年3月で、今回参戦したドバイカップU−23が初の海外遠征だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、海外で国際試合をあまり経験していない点は、パリ五輪世代の不安要素。残された期間を有効に使いながら、急ピッチでチームを仕上げていかなければならない。

「海外遠征の場は貴重。この2年間の空白を考えると特にそう」。大会前に大岩監督が話していた通り、一つひとつの活動機会が重要になる。今回の海外遠征は、チームの方向性を示すためにも、選手の力量を見極めるためにも、場慣れするためにも重要だった。

 ドバイカップは、東京五輪世代も2018年11月に参加したことがある大会。10チームで争われたコンペディションは2試合の予選と順位決定戦で争われ、大岩ジャパンは3試合連続完封勝利で頂点に立った。

 大会を振り返ると、指揮官が掲げていた“タフに戦う”というテーマを実行できたように思える。

 1−0で勝利したU−23クロアチア代表との初戦は、相手のスローテンポなサッカーに付き合ってしまい、前半は停滞。久々のアウェーでの国際試合で硬さが見られ、トレーニングで積み上げてきたビルドアップもうまくハマらなかった。
 
 だが、ハーフタイムに大岩監督の檄によって、チームは本来の姿を取り戻して、最終盤に途中出場のFW小田裕太郎(神戸)が先制点。その後はよりタフさが求められる展開となり、相手に退場者が出た直後に小田が負傷。交代枠を使い切っていた影響から10人で戦うことに。

 さらにDF内野貴史(デュッセルドルフ)も止血で一時的にピッチの外に出てしまい、数的不利な状況で戦うことを余儀なくされた。

「やっぱり環境が変わったので、トラブルは増える。そのなかで自分たちが終盤に1点リードというのを認知していた。最後はサイドで『時間を使いながら』という声がベンチから出ていたので」とはMF藤田譲瑠チマ(横浜)の言葉。タフさが求められるなかでも、うまくゲームをコントロールして、最後まで相手に得点を許さなかった。
 

 8名の先発メンバーを入れ替えたU−23カタール代表戦も、初戦同様に、国際舞台に慣れていない影響でチグハグな試合運びをしてしまう。ビルドアップがうまくいかず、引っ掛かる場面が散見。特に前半はDFの木村誠二(山形)、鈴木海音(栃木)が不安定で、イージーなボールロストが頻発した。

 GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)にも助けられながら試合を立て直し、ハーフタイムには大岩監督から「これが国際試合だよ。普段のJリーグでの試合とは違うぞ」と発破を掛けられた。すると、後半は見違えるようなプレーを見せる。

 10番のMF斉藤光毅(ロンメル)のゴールで先手を取り、試合を優位に進めると、最後はMF山本理仁(東京V)が鮮やかなボレーシュートでダメ押し弾。我慢しながらも戦況を盛り返して勝利を手繰り寄せた。

 タフに戦いながら経験値を積み上げて優勝決定戦を迎える。2戦目終了後に離脱した選手がいた関係で起用できる選手は18名という状況で、迎え撃つ相手はU−23サウジアラビア代表。この世代は2017年のU−19アジア選手権で優勝しており、日本も準決勝で対戦して0−4で敗れている。

 サウジのメンバーにはA代表に食い込む力を持った選手がいるだけではなく、6月のU−23アジアカップのグループステージでマッチアップする可能性がある選手も多い。大岩監督も「非常に力がある」と警戒していた相手に対し、日本は過去2戦の反省を踏まえて序盤から一気にギアを上げた。
 
 4−3−2−1で臨んだ過去2戦とは異なり、日本は4−3−3でスタート。1トップのFW細谷真大(柏)が高い位置から積極的にプレスをかけると、中盤や両サイドの選手もパスコースを限定しながらボールを奪いにいく。

 会場到着が遅れたサウジが十分にアップできていなかった影響はもちろんある。それでもアジアの強国に対して、一歩も引かずに互角以上に戦った。20分に山本の右CKから細谷がネットを揺らし、欲しかったゴールをセットプレーからもぎ取る。後半はさすがにペースが落ちたが、誰もハードワークを怠らない。

 終盤はサイドが本職のMF松村優太(鹿島)を1トップに置き、右サイドハーフにはDF成瀬竣平(名古屋)を起用。総力戦で乗り切って、見事に勝利を掴んだ。
 

 今回のドバイ遠征は最高の結果で幕を閉じた。選手たちは大岩監督が求めた“タフさ”を体現。不慣れなポジションにも対応しながら、日の丸を背負う意義や、アウェーで戦う難しさを思い知ったはずだ。

 そうした海外遠征ならではの経験値を蓄積しながら、3連勝を飾った点も価値がある。大岩監督は経験値を高めながらも、誰よりも勝利にこだわった。

 象徴的だったのがセットプレーに対する取り組み。今回の遠征では中2日の試合間隔でトレーニングの時間が限られていたが、試合前日は1時間ほど攻守におけるセットプレーの確認に時間を割いた。

 その中心を担ったのがテクニカルスタッフの菅原大介氏と浜野征哉GKコーチ。特に菅原氏は兼務しているA代表ではなく、今回はU−21代表に帯同して相手のスカウティングをしながら、セットプレーの強化に一役買った。

「このままセットプレーから得点が生まれなかったら、タダじゃ帰れないよ(笑)」。冗談混じりの言葉を残していたが、その取り組みは成果となって表われた。
 
 2戦目に生まれた斉藤のゴールは右SB半田陸(山形)のスローインがきっかけで、山本のゴールもCKの流れから。3戦目に細谷が決めた決勝点もCKからと、リスタートからゴールを重ねられたのは大きな収穫だ。大岩監督も手応えを感じており、スタッフと選手に全幅の信頼を寄せている。

「今回は菅原が帯同してくれている。普段はセットプレーをトレーニングに入れ込むことはなかなかできない。選手には『俺たちはどういう守備をするのか』、『攻撃ではアレンジをするのか、どういうデザインをするのか』をコーチングスタッフと話をしてもらいましたし、全面的に信頼してやってもらっています」

 タフさを求めながら、勝利にこだわった大岩ジャパン。「アジアの厳しい戦いの中で、これから(苦戦など)たくさんあるはず。早い時期にそれを経験できたことはプラスで、全員が良い経験をできたので次につながる」(西尾隆矢/C大阪)。

 6月のU−23アジアカップまでに予定されている活動はあと1回しかないが、今回のドバイカップが普段の合宿以上に濃密だったのは間違いない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

【PHOTO】2024年のパリ五輪を目指し“大岩ジャパン”が始動!
 

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