日本代表から漏れても…鎌田大地が作り出す元浦和のレジェンドのような「決定的な違い」。“懲罰交代”をした指揮官も「勝利に導く資質があるからこそ」【現地発】

日本代表から漏れても…鎌田大地が作り出す元浦和のレジェンドのような「決定的な違い」。“懲罰交代”をした指揮官も「勝利に導く資質があるからこそ」【現地発】

攻撃のコンダクターとして不可欠な存在になっている鎌田。(C)Getty Images



 日本代表からは惜しくも外れているが、鎌田大地の現地評価はとても高い。フランクフルトで中心選手となって3シーズン目となる今季もここまでブンデスリーガ27試合中25試合に出場し、3得点2アシスト。ヨーロッパリーグ(EL)では8試合すべてでスタメン起用され、4得点をマークしている。

 昨シーズンまで得点源だったポルトガル代表FWアンドレ・シルバがライプツィヒへ移籍したことで、今シーズンのフランクフルトは得点力に問題を抱えてきた。オリバー・グラスナー監督は様々な試行錯誤を繰り返しながら、ここにきてようやく最適な組み合わせを見つけたようだ。

 セルビア代表フィリップ・コスティッチの突破力とクロスという武器があるのは、だれもが認めるところ。左サイドをスピードに乗って駆け上がり、切れ味鋭いクロスをゴール前へ供給するそのコスティッチへ、好タイミングでパスを供給するのが鎌田。そんな役割分担だったが、攻撃における依存度が高すぎる点は以前より指摘されており、それが今シーズンは如実になっていた。

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 そんなフランクフルトにとって当たりとなったのは、冬の移籍でドルトムントからドイツU-21代表アンスガー・クナウフを獲得できたことだろう。スピードがあり、裏へタイミングよく飛び出してパスを引き出し、それにゴール前にも上手く顔を出すことができる。左サイドへ偏りがちだった攻撃が、右サイドでもクナウフとデンマーク代表イェスパー・リンストロームがうまく起点を作れるようになったことで、全体的なバランスが改善されたのは大きい。

 攻撃陣の連係がスムーズになってきたことで、鎌田は自分のタイミングで動き出してパスを引き出し、周囲の選手をうまく使い、ゴール前で決定機に関われる頻度も増えてきている。ベティスとのEL決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、そしてリーグのボーフム戦と鎌田が2試合連続でゴールを決めたのもそうした流れと無関係ではない。

 ボーフム戦では、中盤で浮き球ボールをスッとコントロールし、パスを出す素振りをフェイントにスムーズに前へと向き直すと、動き出していたCBの逆を突くクレバーなスルーパスを披露するなど、鎌田がボールを持つと味方選手がギアを入れて、スペースへどんどん飛び出して行くのがとても印象的だった。

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 そういえば、地元紙のヘッセンシャウが「カマダはかつてのウーベ・バインのようだ」と称えていたことがあった。元ドイツ代表で1990年ワールドカップの優勝メンバー。浦和レッズでも披露したパサーとしての異能ぶりを覚えているファンも多いのではないだろうか。フランクフルトのファンにとってもそうだ。1889〜94年までフランクフルトで150試合に出場した天才レフティは今も愛され続けている。

 そのバインのかつてのチームメイトであるマウリツィオ・ガウディーノは「ウーベがボールを持ったらそのまま走り続ける以外のことをする必要がない。いつもスパイクに磁石がついているかのようにボールを受け取ることができるんだ」と最大級の賛辞をしていたことがある。

“後継者”である鎌田にもそうした片鱗がきらりと光る瞬間がある。「どれだけ優れた攻撃陣がいてもパスがそこに出てこなければ意味がない。だが、フランクフルトにはカマダがいる」とヘッセンシャウ紙は称賛を惜しまない。
 
 試合を見ていると鎌田はよくミスもする。パスが相手に引っかかったり、ドリブルが少し大きくなったり、狙いすぎてタイミングが早すぎたり、遅すぎてしまうこともある。でもそうしたチャレンジをしながら微調整をし、次のシーンではアッと驚く決定的なプレーをしてくれることを皆が知っている。だからうまくいかないことがあっても、サッと手をあげるだけでみんなすぐ自分のポジションへと戻っていく。そんな信頼関係が素晴らしいではないか。

 だからこそ、グラスナー監督はよりコンスタントに中心選手としてのプレーを要求している。ケルン戦で後半からの途中出場ながら終了間際に途中交代となり、試合後にはグラスナーが鎌田を捕まえて、険しい顔で詰め寄るシーンがテレビに映し出されたことが、ドイツメディアでも大きく取り上げられたりもした。この日唯一の失点となったのは、鎌田が競り合いで勝てなかったからだと指摘する地元紙もあった。

 ボーフム戦後にドイツ人記者についてその時のことを問われたグラスナーは、「どの選手も、どんな状況で出てもチームの勝利のために、チームを助けられる状態であるべきなんだ」と話し出し、こう続けた。

「ケルン戦でダイチはチームを勝利に導くプレーをもっとできたはず。素晴らしいパスを味方に送り、最後の局面を作り出せることはこれまで何度も見せてくれていた。でもあの試合に関してはメンタル的にそんな自分の能力を引き出せる状態ではなかったように思えた。だから、試合後に言ったんだ。私としては後半素晴らしいプレーを見せて、メディア陣に『なんでカマダをスタメンで起用しなかったんだ!』と言われることを望んでいたんだよ。ダイチがチームを助けてくれることはわかっている。チームを勝利に導ける資質があることを見せてくれている。チームのためにとても勤勉にプレーしてくれているんだ。だから、だ」

 システマティックなプレーがどんどん要求されている昨今の欧州サッカー界において、鎌田のように決定的な瞬間をクリエイトできる選手というのは非常に貴重だ。ベティスとのセカンドレグでは思うようにチャンスメイクすることができなかったが、そうした日もある。それは指揮官もわかっている。だが、つねに自分のベストプレーを引き出せる心構えと準備で試合に臨むことは、ここからさらに成長していくために必要不可欠なのだ。

 鎌田という選手はあらゆる経験を力に変えることができる選手。これまでもそうやって様々な問題点と向き合い、解決してきた。きっと今季もここからさらに飛躍してくるはずだ。その成長曲線はどれだけ紆余曲折しても上に向かって伸び続けていく。

文●中野吉之伴
 

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