「底知れぬ可能性を秘める」D・アウベスがバルサに獲得を進言するブラジル代表FWとは?「メッシよりもボールを奪うのが難しい」

「底知れぬ可能性を秘める」D・アウベスがバルサに獲得を進言するブラジル代表FWとは?「メッシよりもボールを奪うのが難しい」

ブラジル代表でも存在感を高めているアントニー。(C)Getty Images



 アヤックスで売り出し中のアントニーがブラジル代表でも輝きを放っている。22歳の若者は、ワールドカップ予選のチリ戦(ブラジルが4−0で勝利)で2点目をアシストし、3点目に繋がるPKを獲得。チームのベテラン選手たちが「将来のクラック候補」と口を揃える才能の片鱗を示した。

 なかでもアントニーのメインサポーターを自認するのがダニエウ・アウベスだ。バルセロナの右サイドバックは、サンパウロでアントニーと1シーズン一緒にプレーし、東京五輪では共闘して金メダルを獲得。そして現在ジョアン・ラポルタ会長にアントニーの獲得を熱烈に薦めている。

 親しい関係者によると、アウベスは数か月前にラポルタに接触。深刻な財政難に見舞われるバルサは補強で失敗することが許されない。そんな中、ウイングの補強候補としてリーズのラフィーニャの名前が取り沙汰されているが、アウベスは二者択一で迷った場合はたとえ移籍金が上回っていてもアントニーを選ぶべきと進言したという。

 ちなみにアウベスはラフィーニャともブラジル代表でプレーした経験がある。しかし今後どこまで行くかという頂点が見えるラフィーニャに対し、アントニーは底知れぬ可能性を秘め、投資すれば、必ずそれだけの見返りがあるとアウベスは主張する。
 
 もちろん移籍は一種のギャンブルだ。クラブの方針や監督の戦術など様々な要因に左右される。新しい環境に馴染むことができなければ、成長がストップしてしまうリスクは常にある。しかしアウベスによれば、その才能はそれこそ無限大で、世界を見渡してもアントニーのように自然に守備を助け、単独ドリブルでも周囲とのコンビネーションでも突破できるウイングはほかにいないという。

 アントニーは、麻薬密売人の巣窟であるサンパウロ近郊のスラム街「ファベーラ」で生まれ育った。ヨハン・クライフ・アレナ(アヤックスのホームスタジアム)でプレーする重圧について質問された時、「朝9時に家を出て、夜9時まで何も食べない日が何度もあった。そんなの重圧のうちに入らない」と答えている。

 走り方も個性的だ。膝から上は、まるで銅像、膝から下はまるでロケットで、ふくらはぎの筋肉以外どこも動かしていないかのような画期的な推進力を実現させている。ボールが足下に吸い付くようなドリブルは、こと方向転換のスピードにおいては全盛期のリオネル・メッシを上回る。
 
 プレミアリーグのあるクラブのアナリストは、次のように評価する。「とにかくボールコントロールに優れている。DFにとって世界で最もボールを奪うのが難しい選手だ。その点においては(キリアン)エムバペ、ネイマール、(ラヒーム)スターリング、メッシよりも優れている」

 しかも特筆に値するのは、アントニーはその自慢のスキルを多用しないことだ。状況判断力にも優れ、1対1で仕掛けるよりもコンビネーションで崩すことを好み、ドリブルで勝負するのは他に選択肢がない場面に限られる。
 
 それだけ難易度が増すが、今シーズンのエールディビジでは、ドリブル回数87回のうち42回を成功させ、成功率は48%だ。ちなみにレアル・マドリーのヴィニシウス・ジュニオールは、ドリブルの回数が倍以上の194回、成功率は41%だ。

 ブラジル代表のチッチ監督は、「アントニーのような選手がチームにいると、コンビネーションで相手を崩す機会が増える」と強調する。

 アントニーはドリブルで局面を打開し、スペースに走り込み、ゴールを決める。中に切れ込んでフィニッシュに絡み、“8番”としても“10番”としてもプレーできる。オールラウンドなウイングなのだ。

文●ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

【動画】D・アウベスが絶賛するブラジル代表FWのスーパープレー集
 

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