【消えた逸材】「ポグバも霞むほどの天才児」は、やがて「最も才能を無駄にした悪童」に…。29歳の現在はルーニー監督の下で奮闘中!

【消えた逸材】「ポグバも霞むほどの天才児」は、やがて「最も才能を無駄にした悪童」に…。29歳の現在はルーニー監督の下で奮闘中!

誰もが認める飛び切りの逸材だったラベル・モリソン。しかし、そんな天賦の才は虚しく浪費されてしまい……。(C)Getty Images



ラベル・モリソン(MF/ジャマイカ代表)
■生年月日/1993年2月2日
■身長・体重/175センチ・71キロ

 とにかく才能に恵まれていた。マンチェスター・ユナイテッドのユースアカデミーでは、同い年のポール・ポグバも霞むほどの天才児だった。

 御大アレックス・ファーガソンは断言した。
「ポール・スコールズよりも、ライアン・ギグスよりも、優秀な14歳だった」
 
 クラブOBでレジェンドのパディ・クレランドは舌を巻いた。
「ジョージ・ベスト以来のタレントだ」
 
 当時のユースチームのコーチ、ポール・マッギネスは手放しで褒め称えた。
「トッププレーヤーだけが持ちうるタイミングの感覚を備えていた。ボールをキープしながら、ここぞの瞬間にスルーパスを通し、相手を引き付けて、ここぞの瞬間に抜き去っていく」
 
 誰もが認める飛びきりの逸材、それがラベル・モリソンだった。
 
 そんな天賦の才は、しかし、虚しく浪費されてしまった。

「私が知る限り、最も才能を無駄にした選手だ」

 ウェストハムで指導した当時のサム・アラダイス監督がそう嘆息すれば、ラツィオで指揮した当時のステーファノ・ピオーリ監督は匙を投げた。

「プロ意識がまるでない。イタリア語を学ぼうとすらしなかった」

 生まれ育ったのは、マンチェスター郊外のウィゼンショウという町で、典型的な大都市郊外のラフな土地柄だった。ラベル少年は日々の生活を通して自然と反骨心を身につけ、傍若無人な振る舞いを繰り返すようになっていった。ユナイテッドのアカデミーに入っても、コーチの言うことを聞かなかった。そんな気分じゃないと、何度も練習をサボった。
 
 それでもファーガソンはその才能を信じ、フットボールに集中させようと手を尽くした。本人を呼び出し、1対1の膝詰めで直接諭したりもした。仲間が起こした強盗事件の証人を脅して起訴されても、元恋人への暴行で逮捕されても、むしろ寄り添った。見捨てるには惜しいタレントだったのだ。

 それでも、放出の決断が下された。2012年1月、決まったのはウェストハムへの移籍だった。ただ、これも本人のためを思ったファーガソンの計らいだった。環境の変化が心を入れ替えるきっかけになればという親心からアラダイスに託したのだ。しかし、問題行動は残念ながら改まらなかった。



 そこからは流転のキャリアだ。ウェストハムからバーミンガム、クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)、カーディフとレンタル移籍を繰り返し、半年間の無所属を経て、ラツィオ、再びQPR、メキシコのアトラス、スウェーデンのエステルスンズ、シェフィールド・ユナイテッド、ミドルスブラ、オランダのADO、そしてダービー・カウンティと、10 年間で5か国・のべ12チームを渡り歩いている。

 悪童の悪名は轟いていた。それでも、獲得するクラブが絶えなかったのは、とにかく圧倒的な才能に恵まれていたからだ。実際、練習でボールに触れたその瞬間、誰もが次元の違いに目を見張った。並の天才だったら、16歳までに道は閉ざされていただろうと、ユナイテッドのあるクラブ関係者は語った。そこまで突き抜けた才能だったのだ。

 FA(イングランド・サッカー協会)が『YouTube』に公開している動画がある。U-21代表での練習の模様を収めた30秒足らずのその映像には、驚きのプレーが収められている。ゴール前に走り込んだモリソンは、右からのクロスにダイレクトで合わせにいきながら、その刹那、ジャンプしてボールを股下に通すと、それを右足のヒールで叩いてネットに突き刺す。
 
【動画】U-21代表の練習で披露したモリソンの驚愕ボレー!
 ユナイテッドのユースでも数々の逸話を残している。もっとも衝撃的なそれは、トップチームの練習に参加した際に、名CBのネマニャ・ヴィディッチを股抜きで弄んだことだろう。続け様に3回、股抜きをかましたという。

 その才能を信じる理解者はいまもいる。ユナイテッド時代の先輩のウェイン・ルーニーは、ADOを退団してフリーの身だった後輩を自身が率いるダービーに呼び寄せた。21年夏のことだ。
 
 チャンピオンシップ(実質2部)を戦うダービーでは、ここまで32試合に出場して4ゴール・3アシストを決めている。ただ、ようやく初ゴールを決めたのは、36節バーンズリー戦だ。それでも、そのゴールはスキルとセンスが凝縮した華麗なフィニッシュだった。右手からゴール前に切れ込むと、中盤からのパスをスルー。すかさず踵を返し、後方に通した味方からのリターンパスを受けると、右足でフワリと浮かせるチップショットでGKを嘲笑った。
 
 ダービーは経営破綻のペナルティーで勝点を剥奪され、最下位に沈んでいる。それでも「チャンスをくれたウェイン(ルーニー)に恩返しがしたい」と、気まぐれな天才は29歳になって初めて、フットボールをプレーする意味、モチベーションを見出したようだ。

文●松野敏史

※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年4月21日号より転載

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