3連勝のあとに3連敗…青森山田はなぜ苦しんでいるのか。惜敗の前橋育英戦に見る“絶対王者”の現在地

3連勝のあとに3連敗…青森山田はなぜ苦しんでいるのか。惜敗の前橋育英戦に見る“絶対王者”の現在地

前橋育英戦では“らしくない”守備で3失点。悔しい敗戦も、1点差に詰め寄り、流れをひっくり返すことができたのは好材料だった。写真:松尾祐希



 開幕6戦を終えて3勝3敗。昨季のEAST王者が苦戦を強いられている。

 4月3日に開幕したU−18高円宮杯プレミアリーグEAST。近年、高体連だけではなく、Jクラブに対しても圧倒してきた青森山田がもがいている。キャプテンのDF多久島良紀(3年)が長期離脱で不在とはいえ、これだけ安定しないシーズンは珍しい。

 なぜ、絶対王者は苦しんでいるのか――。理由のひとつは経験値の不足だろう。

 過去のチームは要所にタレントを揃えていた。下級生時からレギュラーとして活躍していた選手も少なくない。とりわけ、昨季のチームは青森山田史上最強と謳われるほど盤石だった。1年次からレギュラーとして活躍してきたMF松木玖生(現・FC東京)と、世代別代表歴を持つ宇野禅斗(現・町田)のボランチコンビはU−18年代屈指の完成度で、脇を固める人材にも事欠かさなかった。

 しかし、今年は2年次からトップチームで一定の出場機会を得ていたのは3人しかいない。しかも、レギュラーはわずかにひとり。昨冬の選手権を負傷欠場した左SBの多久島は離脱するまで主軸を張っていたが、その他のふたりは違う。MF中山竜之介(3年)は怪我人が出た関係で選手権こそレギュラーだったが、1年を通じて活躍はできていない。新チームで10番を背負うFW小湊絆(3年)も主に交代での出場だった。

 メンバー構成を考えれば、チームは一からのスタートと言ってもいい。しかも、今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で東北新人戦の出場を辞退するなど、オフシーズンに実践の場が限られていた。「去年のようにはいかない」。黒田剛監督も開幕前から危機感を抱いていた。
 
 迎えた新シーズン。チームは開幕から3連勝を果たした。しかし、内容は乏しくない。市立船橋とのオープニングマッチは粘り強い守備で“らしさ”を見せ、2−0で勝利を手にした一方で、攻撃陣はロングスローとPKからのゴールのみ。2節のFC東京U−18戦、3節の大宮U18戦も守備陣が無失点に抑えて1−0で勝利したが、決勝点はいずれもロングスローからだった。

 守備陣も泥臭く守っていたが、4節から6節まで3連敗を喫してしまう。

 とりわけ、6節の前橋育英戦は青森山田らしくない守備が目立つ展開に。序盤から主導権を握られ、相手の素早いパスワークに翻弄される。伝統の“ゴールを隠す守備”が綻び、16分にはサイドを崩されて失点。21分にお家芸のロングスローからMF小泉佳絃(3年)が同点弾を決めたが、42分にまたしてもサイドを突破されて失点。さらに後半開始早々にはGK鈴木将永(2年)のパスミスから加点されてしまう。

 今までのような隙のない戦いぶりからは程遠い。「足が全然止まっていて、セカンドボールを回収できていない」とは黒田監督の言葉。ロングスローを起点に1点を返したが、ゲームコントロールに課題を残し、2−3で敗れた。
 

 ただし、ネガティブな材料ばかりではない。前橋育英戦では後半開始早々の失点で1−3とされ、相手に主導権を握られて手も足も出ない展開だった。そこから66分にロングスローからCB三橋春希(3年)が決めると、一気に試合の流れを変えている。フィジカルの強さを全面に押し出し、ロングボールやセットプレーをうまく使いながら攻め込んだ。

 すると、ショートパスとダイナミックなサイドチェンジで面白いように攻撃を仕掛けていた前橋育英が怯み、徐々に最終ラインが後退していく。その結果、前線と中盤の間にスペースが生まれ、青森山田は自分たちのペースでボールを運ぶ時間が増えた。合言葉である“1本中の1本を決める”を体現し、流れをひっくり返したのは流石の一言。試合には勝てなかったが、青森山田に根付く伝統が、今年のチームにも脈々と受け継がれていることを感じさせた。
 
「3連勝は去年のおまけであって、相手が警戒してくれたから。正解はないので、やれることをやっていく」(黒田監督)

 ここから王者はどう立て直していくのか。逆に言えば、ゲームコントロールや“ゴールを隠す守備”は実戦を積むことで身に付く。公式戦の中でトライ&エラーを繰り返していけば、改善できる課題だろう。シーズンはまだ始まったばかり。苦しんだ先には最高の景色があると信じ、青森山田は茨の道を走り続ける。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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