「クオリティでは劣る」も3度続けばホンモノ。マドリーの“戦略的勝利”を可能にした守護神

「クオリティでは劣る」も3度続けばホンモノ。マドリーの“戦略的勝利”を可能にした守護神

3度に渡ってビッグセーブを見せたマドリーのGKクルトワ。(C)Getty Images



 欧州チャンピオンズ・リーグ(CL)決勝、レアル・マドリーは1-0でリバプールに勝利を収め、史上最多14回目の欧州王者になっている。

 実にマドリーらしい戦いだった。序盤から相手の攻撃を受ける場面が目立ち、前半30分頃までろくに自陣から出られていない。辛抱強さが求められる時間帯だった。

「我々の選手は守ることにストレスを感じない」

 マドリーの指揮官であるカルロ・アンチェロッティは語っているが、「守備的」なサッカーとも違う。やるべき仕事をしながら、ダメージは最小限に抑えつつ、攻撃は最大限の効率で行なう。つまり、守りを固めているわけではないから、決定機そのものはいくつか与えた。右からのクロス、サラー、マネが合わせたシーンは際どかった。

 そこで立ちはだかったのが、マドリーの守護神ティボー・クルトワだった。

 クルトワは、規格外のセービングを見せた。60分過ぎ、サラーがカットインして左足で放ったミドルを横飛びではじき出したシーンはスペクタクル。70分前、左から右へ送られたボールにサラーが詰めたシーンは絶体絶命だったが、球筋を見極めるように足を出してブロックした。まるで剣の達人の間合いだった。また、81分にはサラーとの1対1では、右腕一本で失点を防いだ。
 
 23本のシュートを浴び、うち9本が枠内(マドリードは3本で、枠内は1本)で、クルトワはすべてストップした。彼が潮目を作ったことで、相手の攻撃威力がやや減じ、隙が生まれることになった。マドリーはそこを見逃さず、相手のプレスを外しながらフェデリコ・バルベルデがシュート性のクロスを送り、それをファーでヴィニシウス・ジュニオールが合わせた。

「違いはマドリーが1得点し、我々はゴールがなかったことだ。それが一番シンプルな敗因の説明だろう。GKクルトワがベストプレーヤーで、3つの信じられないセービングもした」

 リバプールのユルゲン・クロップ監督はそう語ったが、クルトワが最も試合を象徴していた。

 ただ、マドリーは試合を通じて動じなかった。リバプールの攻撃を撓むように受け止め、時折、一本のパスでゴール前に侵入。その戦い方は堂に入っていた。つまり、マドリーは戦略的にこの勝負を制したと言える。90分という試合の中、勝ち筋を見つけられる体力、それは強さの厚みとも言えるものだが、その点で傑出していた。

 アンチェロッティ監督が率いるマドリーは撓み、厚みによって、CLではチェルシー、マンチェスター・シティという強豪も凌駕してきた。リバプール戦も、「サッカーのクオリティではやや劣っている」と言われ、それは攻撃のスペクタクル性では一理あったが、またしても下馬評を覆した。3度続けば、ホンモノである。
 
 マドリーは王者の歴史を新たに刻んだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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