【稲本潤一×今野泰幸対談】2022南葛SC、苦戦のワケと関東リーグの難しさ…そして反転攻勢の夏への提言

【稲本潤一×今野泰幸対談】2022南葛SC、苦戦のワケと関東リーグの難しさ…そして反転攻勢の夏への提言

今季から南葛SCで共闘する稲本(左)と今野(右)。チームの現状や今後の展望について語ってくれた。写真:徳原隆元



 ともに複数のワールドカップ出場を誇る日本サッカー界の顔・稲本潤一と今野泰幸。2022年1月、日本代表で一時代を築いたこの2選手が、関東サッカーリーグ1部に昇格したばかりの南葛SCに入団するというニュースは大きな反響を呼んだ。

 主戦場をJリーグから関東リーグに移してはや半年。実際に南葛SCで試合をしてみて、肌で感じたこととは――。現在のチーム、そしてリーグの印象を率直に語り合ってもらった。

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 関東サッカーリーグ1部に昇格した南葛SCの2022年シーズンは、開幕6戦を終えて3分3敗という結果に。この時点でまだリーグ初勝利を挙げることができていなかった一方、全国社会人サッカー選手権大会関東予選で2連勝して初めてとなる本戦出場を決めたタイミングで今回の対談は行なわれた。今シーズンから新たにチームに加わった2人にとって、ここまでの戦いぶりはどのように映ったのだろうか。

稲本 自分たちがキープするスタイルで、ボールを握り続けたいし、握り続けるだろうという見通しで始まったシーズン。でも、実際リーグが始まってみると難しかった。リーグの強度としては、もう少し緩いかと思っていたから。思い通りにいっていないのは自分たちのレベルがやりたいサッカーに追いついていないのか、関東1部のレベルが高いのかは分からない。ただ、ここまで戦ってきた印象としては、関東リーグには技術よりもまず動ける選手がたくさんいるチームが多い、元気なチームが多いなと。

今野 最初チームに入った時は、南葛SCの選手はみんなうまいと率直に思いました。テクニックもありますし。これだったら相当攻められるだろうと。でも、甘くなかったです。相手も戦術的に前から来る時と引く時ではっきりしているし、かなり分析して戦ってくる。それを上回って崩してシュートまでいくのはなかなか難しいです。

稲本 前から来るチーム、ディフェンスラインの背後にボールを蹴ってくるチーム。シンプルだけど、続けられると効いてくる。そういうのを目の当たりにして、自分たちのスタイルを徹底するのは想像以上に厳しいリーグだと感じる。

今野 僕の場合、まず南葛SCのサッカーに順応するのが大変です。最新の戦術なので、ついていくのに一杯いっぱいで。以前からプレーしている選手と比べると、慣れていない部分も大きいと思うんですけど。

稲本 森(一哉)監督は川崎フロンターレで風間(八宏)さんの元での指導経験があるので、風間さんの監督時にプレーしていた自分としては、似ている戦術を採用しているぶん、違和感なく入れて。高木(健旨)コーチもガンバ大阪の時から知っているし。でも中盤はディフェンスラインに比べたら戦術的な約束事は少ないから。DFの選手たちは少し戸惑いもあったかもしれない。当初、要求レベルが少し高いかな、と見ていて感じることも。

今野 最初、すごくやりがいを感じていました。これまでの自分になかったことを身に付ければ、またサッカーの幅が広がると。監督にもめちゃめちゃ聞いて、教えてもらって。でも開幕当初と今とではサッカーが少し変わってきました。それで100%正確に動けるようになったとは、まだ言えないですけど、実際今の方が自分にはやりやすいかもしれません。それにしても2002年の日韓W杯の時の「フラット3」ってすごくないですか?

稲本 なによ、いきなり。フラット3って(笑)。

今野 いや、自分たちがやろうとしていることと考え方が似てるかなと。

稲本 フラット3の時はラインコントロールの練習ばかりしていたよ。ラインの上げ下げは道ばたでも練習してた(笑)。

今野 ラインの上げ下げってかなり疲れるんです。実際、僕のところはラインがずれたりして。見なければいけないことも多いし、パワーも使う。頭も疲れれば身体の疲労度も増して。ものすごくやりがいをもって臨んでいるんですが……本当に難しい。

稲本 たしかにシーズン当初の南葛SCの守備は技術に加えて個人戦術がすごく必要とされていたと思う。制限も多かった。ただ、実際にリーグ戦が始まってから、制限をかけるより自分たちの判断で選択する方向にシフトチェンジしていっているんじゃないかな。つなぐサッカーというベースは変えずに、臨機応変に対応する幅は広がっているというか。そうやってチームを調整しながら成長していってると思う。
 

 実際にリーグ戦が始まって抱いた戦いぶりの印象は、予想に反していた。ただ、そこは百戦錬磨の2人。現状の分析とこの先の戦いになにが必要かを自分たちの言葉で説明してくれた。

今野 関東2部から1部に昇格したばかりなんですが、正直、自分たちの方が強いだろうという気持ちで戦っちゃってました。そういう雰囲気を作ってしまった。

稲本 今シーズン、自分やコンちゃんが入ってきて、だいぶメディアにも取り上げられて。それが南葛SCの選手にはもちろん、関東1部の全チームにも伝わった。そこで相手は意識してくる一方で、自分たちは昇格したばかりのチームという感覚が欠如したかもしれない。普通、昇格したてのチームが優勝候補になるなんてありえない。自信とすべきところが過信になっていた部分も、ひょっとしたらあったかもしれない。ただ、そうではないんだというのは、みんなもう分かったので。

今野 これまで決して見下していたわけではないんですが、この先は“相手の方が格上だ”という気持ちで臨んでいくのはありかと思います。チームの調子がいい時はなにをやっても上手くいくもので。シーズンを戦い抜く上で11人だけでは無理じゃないですか。どうしてもどこかでメンバーを入れ替えて戦う時に、調子がいい時は誰が出てもスッとチームに入っていける。でも調子が悪い時は逆に入りづらいもので。それでも入ってきた選手が奮闘すれば調子の流れが上向きになったりする。南葛SCにはいい選手が多いから、そういうことがあれば絶対巻き返せる。必要なのはきっかけかと思います。

稲本 (5月の前期6節で)TOKYO UNITED FCに1-4で負けた試合以外は、どちらに転ぶか分からない試合だった印象で。細かいところでの失点やチャンスを決め切れない積み重ねで5月まで来て。そうやって負け越していくと精神的にも厳しくなるし、先制されると気持ちにも余裕がなくなるといった変化が起きてしまう。その中で6月に全国社会人サッカー選手権大会関東予選の2試合をしっかり勝った。特に決勝は逆転で勝った。勝ちグセじゃないけど、これらの試合を自信として、それこそひとつのきっかけになれば。これからの夏場、連戦になるけど、上位と下位で実力差はないぶん連勝すれば正直、1位を狙えるくらいになるはず。そのためにもリーグ再開後の初戦はすごく大事になる。ここで勝点3を取れば、気分的にもプレッシャーから解放されるから。

「リーグ再開後の初戦はすごく大事になる。」この言葉が乗り移ったかのように、チームは6月26日に行われた前期7節の流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎に1-0で勝利。リーグ戦初勝利を挙げるとともに、6月は大学チームを相手に公式戦3連勝。きっかけとなるには十分な結果を残した。7月以降のリーグ戦での南葛SCの変わり身に注目だ。
 

 これまで南葛SCにやって来た多くのJリーガーが口にした難しさ。それが人工芝と練習時間の問題だ。あらゆる経験を積んでいる2人にとっても、この問題は避けては通れないようだ。

今野 南葛SCのサッカーに順応するのも大変ですが、人工芝に順応するのも大変で。試合会場によっては天然芝の場合もあるので、混乱することもあります。天然芝の場合、どこにボールが飛べばどう弾むか、なんとなく目視で予測できるんです。でも人工芝だとその予測ができない。パスを蹴る前のボールの転がり方も人工芝と天然芝では違ったり。すごく気を遣います。

稲本 昨シーズンまでいたSC相模原は練習場が人工芝だったぶん、自分は今ちゃんより慣れているかもしれない。だけど、公式戦は全部天然芝だったし、天然芝での練習もしていたから、その戸惑いは分かる。人工芝だと切り返しや踏み込みも思い切ってできない。

今野 そうなんです。人工芝は滑らないから踏ん張った瞬間足がひっかかる。これが天然芝だと少し滑るぶん、足への負担が軽減されるんですけど。ターンやアジリティで勝負するタイプの僕にはやっかいな問題です。

稲本 天然芝と同じ感覚でやるとケガをするっていう考えが頭をよぎるよね。そのあたりは本当に難しい。コンディショニングも。

今野 コンディションは知らない間に徐々に慣らしてる感じですかね。でも、火〜木に夜練習して金曜日がオフで迎える土曜日の午前中、なぜかめちゃくちゃ身体が重いんです。オフ明けにこんなことになるなんて、これまでなくて。さらにこの土曜日の疲れが日曜日にもちょっと残ったり……。コンディショニングに苦戦してます(苦笑)。

稲本 夜練習になるとリズムがつかみにくくなるのはあって。睡眠時間の確保だったり、食事のタイミングだったり、これまで20年以上続けてきたルーティンがほぼできない。でもそこは人それぞれだから、試行錯誤を繰り返すしかない。土曜日に試合がある時もあるので、オフの金曜日の過ごし方は考えないといけないかも。でも、コンディショニングは働いている選手たちの方が難しいと思う。若さでカバーできるかもしれないけど、これからの連戦でコンディションのいいチームほど強さを増すことは確実なので。昨年、一昨年とシーズン後半から調子を上げたということは、南葛の選手はコンディショニングがうまいのかな。

今野 みんな社会人だからか、自立してますよね。しっかりしてる。働きながらもちゃんと時間を作ってトレーニングしますし。考えて真剣にサッカーに取り組んでいるのが分かる。言い訳もしない。ただ、食事面は大変そうです。面倒くさくて食事を抜いちゃったりとかする場合もあるかもしれないけど、食事は重要なので。ましてやみんな若いですから。若いから食べなくても大丈夫という認識とは逆に、食べてるものが自分の身体になってる意識は強めた方がいいかなと見てて感じます。

稲本 関東リーグはどのチームの選手も働いているわけで、条件は基本的には一緒。見方を変えれば、Jリーガーよりも将来のことを考えて日々を過ごしてる人の方が多いかもしれない。サッカーだけでお金を稼げないと思って働きながら、必死に両立させている。遠い先のことをより考えながらサッカーを続けているのは、じつは関東リーグの選手たちのほうだよね。

 Jリーグでは感じ取れなかったこと。南葛SCに来て初めて思ったこと。これまでの経験と照らし合わせながら語られる“気付き”には多くの学びが含まれている。次回は、南葛SCというチーム自体に焦点を絞り、さらに2人の考えを語ってもらう。

※後編に続く。次回は7月4日(月)の公開予定です。

【選手プロフィール】
稲本潤一(いなもと・じゅんいち)/1979年9月18日生まれ、大阪府出身。181センチ・77キロ。G大阪―アーセナル、フルアム、WBA(以上イングランド)、ガラタサライ(トルコ)、川崎、札幌など。日本代表82試合・5得点。ワールドカップ3回(02年・06年・10年)出場の実績を誇る日本サッカー界を代表するボランチ。日韓W杯での2得点は今なお記憶に新しい。

今野泰幸(こんの・やすゆき)/1983年1月25日生まれ、宮城県出身。178センチ・73キロ。札幌―FC東京―G大阪―磐田。日本代表93試合・4得点。ワールドカップには10年・14年の2回出場。ピッチを広く見渡せる視野の広さと類まれな洞察力で、ボランチ、センターバック、サイドバックと様々なポジションをハイレベルにこなす。日本を代表する「ポリバレント」な選手だ。

取材・文●伊藤 亮

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『NEXT DREAM』について
KLabが提供するスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』のゲーム内で配信中の、作者の高橋陽一先生原案の新ストーリー。グランドジャンプ増刊『キャプテン翼マガジン』(集英社)で現在連載中の『キャプテン翼 ライジングサン』で描かれているマドリッドオリンピック後、おなじみのキャラクターたちがさらなる新天地で活躍する様子を、新キャラクターの登場とともに、ゲーム内で毎月新たなストーリーが公開されている。

『NEXT DREAM』特設サイト
https://www.tsubasa-dreamteam.com/next-dream/

<お知らせ>
 南葛SCをスポンサードするKLabが、今季もコラボレーションキャンペーンを開催中。南葛SCの公式戦の試合結果に応じて、同社が運営するスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム 〜』のゲーム内アイテムをプレイヤーにプレゼントする。

 プレゼント内容は、南葛SCが勝利すれば「夢球×5」、勝利以外であれば、「コイン×28,300」となっている。さらに、勝利の際は「夢球×5」に加え、南葛SCが入れた得点分の夢球も配布される。南葛SCを応援して、アイテムをゲットしよう。 
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