これぞ伝統の力。鈴木優磨のふたつのプレーに鹿島の勝負強さを見た

これぞ伝統の力。鈴木優磨のふたつのプレーに鹿島の勝負強さを見た

柏戦で勝利に貢献した鈴木。得点につながるふたつのセットプレーをもたらした。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部)



 敵将のネルシーニョ監督が「良いゲーム内容だった」と胸を張る試合だったが、結果は鹿島アントラーズが柏レイソルに2-1で勝利。最大の立役者はFWの鈴木優磨だろう。

 前半アディショナルタイム、自陣の左サイドでCBのキム・ミンテがボールを持った瞬間、対角の敵陣右サイドにいた鈴木は膨らむ動き出しで斜めのロングフィードを呼び込む。助走をつけた甲斐もあって相手DFに競り勝ち、ヘディングで土居聖真のチャンスを演出した。この決定機は相手GKに阻まれたがCKを獲得し、樋口雄太のアシストからキム・ミンテが先制点を決めている。

 63分に同点に追いつかれ1-1で迎えた82分にも、鈴木は左サイドでスローインを受けてファーストタッチでペナルティエリア内に侵入し、対峙した相手DFのファールを誘ってPKを獲得した。これをエヴェラウドが決め、勝ち越しゴール奪取に大きく貢献している。

 柏に14本のシュート(鹿島は8本)を打ち込まれた劣勢のゲームで、鈴木の勝負強さは圧巻だった。前半アディショナルタイムのヘディングは、相手の守備が緩慢になった一瞬の隙を見逃さない嗅覚もさることながら、勝てばチャンスにつなげられる空中戦で力強く戦った姿も印象深い。

 82分のPK獲得シーンも、選手交代で相手の守備陣がわずかにフワっとした瞬間であり、ペナルティエリア内にグッと入り込んだ強引な持ち運びが素晴らしかった。どんなゲーム内容でも、勝利を手繰り寄せる重要局面はあり、ふたつのプレーに鈴木の鋭い勝負勘が垣間見えた。
 
 とはいえ勝負強さとはデータなどで可視化できるものではないので、何が源となって養われるのか分かりづらいものでもある。勝ち続けてきた男にしか身につかない感覚なのだろうから、鹿島で多くのタイトル獲得に貢献してきた名良橋晃氏に以前、平瀬智行氏とのレジェンド対談企画にて、「鹿島がJクラブ最多の20冠を獲得できた要因は?」と聞いたことがある。

「目には見えないけど、鹿島の練習場にはピリっとした“空気感”があります。そういう緊張感を伝統として受け継いできました」

 どれほどの空気感なのか、対談相手の平瀬氏は「練習に行きたくないと思うほどのピリピリとした異常な雰囲気。怖すぎました」という。伝統は鈴木に継承されているのだろう。柏戦で勝利を手繰り寄せたふたつのプレーは、日々のトレーニングで徹底的に勝負にこだわっているからこそ、成せる大きな働きだったはずだ。

 また、リーグの覇権を奪還するためには、柏戦での鈴木の活躍はかなり大きかっただろう。得点ランキングトップの上田綺世が海外移籍で退団したあとのファーストマッチで、63分に同点弾を奪われて逆転されてもおかしくない流れのなかでのPK獲得。直後に鈴木は鹿島サポーターの目の前で力強いガッツポーズを見せ、客席を煽る。「鈴木がいれば鹿島は沈まない」と強く印象付けられたワンシーンだった。

 そして鈴木は自らが獲得したPKをエヴェラウドに譲った。その理由もまた最高だった。

「エヴェラウドにかかる期待はすごく大きい。鹿島に復帰したなかで、個人的な目標としてもエヴェをもう一度復活させるのは自分のなかで大きなミッションでした。綺世も素晴らしい選手ですけどエヴェも負けないくらい素晴らしい選手。今日、僕が決めて勝つのとエヴェが決めて勝つのだったら、みんながエヴェのゴールを待っているし、みんなが彼の復調を待っているので、彼が蹴って自信を取り戻してほしいという思いで譲りました」
 
 リーグ優勝を絶対目標にしているからこそ、今後も見据えた判断だったのだろう。試合後に鈴木は「シャー!」と大きく声を上げた。勝利の雄たけびは、柏戦がタイトルレースにおいて重要な一戦と捉えていたからだろうか、三協フロンテア柏スタジアムの夜空にかなり大きく響いていた。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)

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