【孤高のサムライ戦記|森岡亮太】「ずっと留まっている。どうすれば上に行けるか」抱えるジレンマと30代への希望

【孤高のサムライ戦記|森岡亮太】「ずっと留まっている。どうすれば上に行けるか」抱えるジレンマと30代への希望

新シーズンに向けてアンカーにトライ。移籍市場が閉まるまで可能性を探りつつ、「目先の戦いに集中したい」と意気込む。写真:本人提供



 日本を離れ、海外に活躍の場を求めて戦い抜く――己の信念を貫き、独自のキャリアを刻むサムライの生き様をディープに掘り下げる。ベルギーで5年目を迎えた31歳の森岡亮太は今、何を想いながら新シーズンを迎えようとしているのか。

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 日本代表のエースナンバーを背負う南野拓実がモナコに新天地を求め、“切り札”三笘薫はブライトン復帰など、欧州組の移籍先が続々と決まっている。その多くは20代半ばまでの世代。30代になると、吉田麻也(サンプドリア→シャルケ)のように、よほどの実績がないと色よいオファーは届かないのが現実だ。

「30歳前後になると、欧州クラブの評価は一気に厳しくなる。伊東純也(ヘンク)や遠藤航(シュツットガルト)クラスの選手でもステップアップはなかなか難しい」と語る代理人もいる。2020年から続くコロナ禍の影響もあり、現実は本当にシビアなのである。

 今年4月に31歳になった森岡亮太(シャルルロア)も該当者の1人だろう。2016年1月にポーランド1部のシロンスク・ヴロツワフで欧州キャリアをスタートさせた彼は、17年夏にベルギー1部のワースラント・ベフェレンへ移籍。そこから5年間、欧州5大リーグへの飛躍を思い描きながら戦ってきたが、現段階では22-23シーズンもベルギーリーグで開幕を迎えることになりそうだ。
 
「最初のベフェレンでは半年間プレーして、7ゴール・11アシストとまずまずの結果を残して、2018年1月にアンデルレヒトへの移籍が実現しました。新天地でのスタートは悪くなかったものの、その年の夏に右膝を負傷してからコンディション不良に苦しみました。

 海外経験のある選手なら誰しも分かると思いますが、メディカル体制の整っている日本とは異なり、きちんとしたアプローチのできるスタッフが少ないんです。そのため、怪我の原因を特定できず、治療方針も定まらなかった。結局、ヴィッセル神戸時代のドクターにMRI画像を送って、チームドクターと話をしてもらうことで改善に向かいました。でも、その時点ではすでに監督が代わっていて、構想外になってしまった感じですね」

 そして2019年1月には現所属のシャルルロアに赴き、3シーズン半を戦った。1年目の18-19シーズン後半戦は、15試合に出場して4ゴール・2アシスト。2年目の19-20シーズンはコロナ禍によるシーズン短縮がありながらも、29試合で6ゴール・5アシストを記録した。さらに3年目は28試合で2ゴール・7アシスト、昨季は36試合で4ゴール・14アシストとコンスタントな働きを披露。ベルギー国内で確固たる地位を築いたと言っていいだろう。
 

「この3年半を振り返ると、3人の監督の下でプレーしたのですが、本当にポジションが目まぐるしく変わりました。

 2019年6月まで指揮していたフェリス・マッツ監督が1人目で、その時はトップ下だったんですが、夏から2シーズン率いた2人目のカリム・ベルホーシン監督体制ではボランチがメイン。昨年の夏に就任したエドワード・スティル監督体制の下ではインサイドハーフやボランチ、FWもやりました。

 昨季のインサイドハーフは、日本代表がやっている臨機応変に位置を変えられるスタイルではなく、固定ポジションでしたが、自分に何ができるかを常に考えて取り組みました。戦術から逆算して最終目的地に近づけるという考え方はどこをやっても変わらない。何事もバランスが大事だと痛感しましたね」

 こう話す森岡が特に自信を深めたのが、ボランチでのプレーだ。神戸時代から主戦場にしていたトップ下は相手ゴールに近い分、得点という結果を残しやすいが、ボランチは一列下がる分、違った役割が求められる。森岡は臨機応変な対応を見せ、19-20シーズンはベルギー1部のデュエル勝利数ナンバーワンという傑出した記録を残すことに成功した。

「ボランチではイメージに近い『攻めの起点』としてのプレーができました。自分が点を取るより、アシストだったり、リンクマン的な仕事が試合中に増えて、ゲームコントロールに重きを置けたと思います。

 守りのほうも周りを動かす守備ができましたね。コンビを組んだパートナーはアフリカ人選手だったんですが、屈強なフィジカルと攻撃のアイデアを併せ持っていて、お互いに良い関係性を築けていました。

 ベルホーシン監督のカウンター戦術もうまくハマり、ボランチで奪って縦に出すという形で点も取れていた。その成果として、自分がデュエル勝利数リーグトップ、パートナーも3位という結果を残せたし、チームも3位でフィニッシュできた。自分の幅を広げられたのかなと手応えを感じています」
 
 遠藤が「ブンデスリーガ1部のデュエル王」というのは広く知られているが、森岡がベルギーの“デュエル王”になったことはあまり知られていない。彼の局面や対人の強さは神戸時代とは比較にならないほど進化したと言っていいだろう。かつて「テクニカルな10番」のイメージが強かった森岡は、欧州で着実に変貌を遂げているのだ。

 これだけの実績を残していれば、格上クラブへの移籍話が浮上してもおかしくないはず。だが、そういう動きは今のところはないという。日本代表に関しても、横内昭展コーチが昨季途中に視察に訪れたことがあったというが、復帰は叶っていない。
 

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代の2018年3月のマリ&ウクライナ戦以降、日の丸を背負っていないだけに、代表への思いは強まる一方だ。ヘンクの伊東ほか、STVVのシュミット・ダニエル、昨季までユニオンSGでプレーしていた三笘など、ベルギー1部在籍者が森保ジャパンに招集されているのを見れば、そういう心情になるのもよく分かる。

「ベルギーに来てから5年が経ちますけど、本当に日本人選手が増えたなと実感します。僕が来た2017年夏の時点で実績を残していたのは、(川島)永嗣さん(現ストラスブール)と、僕より半年前にゲントに来て活躍していた(久保)裕也(現シンシナティ)くらい。その後、DMM.comのシント=トロイデン買収もあって、欧州日本人の登竜門的な存在になっていきましたね。トミ(冨安健洋、現アーセナル)、航、鎌田君(大地、現フランクフルト)が成功したことも、日本人選手の流入に拍車をかける要因になったのかなと思います。

 僕もトミや航みたいに格上のリーグに行きたいと思ってますが、ずっと留まっている状況。どうすれば上に行けるかを考え続けています。ただ、ボランチやインサイドハーフで20得点を挙げるのは難しい。急に特別なインパクトを残せるようになるわけではないので、毎試合全力を尽くすことを続けるしかないんです。上に行くにしても、行かないにしても、一日一日を大事に過ごすことは変わらない。日々、勉強ですね」と森岡は神妙な面持ちで語っていた。
 
 新シーズンは7月23日のオイペン戦から幕を開ける。今季のシャルルロアは5-3-2システムでプレシーズンの準備を進めており、森岡はアンカーにトライしている。

「昨季もちょっとだけやりましたけど、新たな挑戦ですね。守備でボールを奪い切れるかが重要なタスクになってきますが、比較的自由度の高いなかでやらせてもらってます。今のチームは若手中心で、31歳の自分が最年長。そういう意味でも周りをリードしていかないといけない。もちろん8月末までの移籍市場で何が起きるか分かりませんけど、まずは目先の戦いに集中したい。昨季は6位でしたけど、今季はプレーオフ1に進める4位以内を目ざして頑張ります」

 30代になってますます円熟味を増した印象の森岡。同い年の原口元気(ウニオン・ベルリン)も「サッカー選手の全盛期は30代」と語気を強めていたが、今の森岡は心身ともに充実しており、視野も広がってきた。そんな今だからこそ、できる仕事をしっかりと果たしてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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