痛恨ドローの中国戦にも希望の光。伊東&三笘以外の選択肢として急浮上した2人のアタッカーへの期待感
2022年07月26日 05時08分サッカーダイジェストWeb

中国戦で代表初スタメンを飾った宮市。縦の推進力を存分に発揮するなど存在感を放った。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)
[E-1選手権・第2戦]日本0-0中国/7月25日/豊田スタジアム
2003年にスタートしたE-1選手権。過去の優勝回数は韓国5回、中国2回に対し、日本は2013年のわずか1回。2017年以来のホーム開催となる今大会は、タイトル獲得が義務付けられている。
7月24日の豊田スタジアムでの第1試合で韓国が香港を3-0で下して連勝したのだから、日本も同日の中国戦に勝って、27日の韓国との最終決戦を迎えたかった。だが、結果は0-0の引き分けに終わった。
メンバー構成は予想通り、広島勢5人を軸にした構成。だが、4-2-3-1の左サイドにシャドータイプの森島司(広島)を配置したことや、1トップの細谷真大(柏)が孤立したことなどが災いし、連動性を失ってしまう。
広島勢の連係を有効活用するなら、3-4-2-1にして森島と脇坂泰斗(川崎)をシャドーに並べるか、4-3-3にして野津田岳人(広島)と森島に脇坂か橋本拳人(ウエスカ)を絡める中盤にしたほうがベターだったのではないか。
「起用に関しては『ここをこうしておけば』ということは全く思っていない」と森保一監督は強調していたが、U-23世代中心の若い中国に5-4-1システムを敷かれ、守り倒されたのは、不完全燃焼感が色濃く残る。スコアレスドローという結果も含め、采配の再検証はしなければならないはずだ。
ただ、悔しい試合の中でも希望が皆無というわけではなかった。最たるものが、前半から積極果敢な仕掛けを見せた右サイドの宮市亮(横浜)と、ラスト9分間出場し、グイグイとドリブルで勝負した相馬勇紀(名古屋)の両アタッカーだ。現日本代表の絶対的主軸である伊東純也(ヘンク)と三笘薫(ブライトン)をサポートする存在として、カタール行きのチャンスが広がったと見ることもできそうだ。
まず宮市だが、「監督から右サイドでスピードを生かしてほしいと言われていた」という指示の通り、ボールを持ったら迷わず縦の推進力を発揮していた。
開始8分には横浜の同僚・小池龍太とのワンツーからクロスを上げ、19分にも敵陣深い位置まで切れ込んでマイナスのボールを入れる。後者では細谷真大(柏)にうまく合ったが、パリ五輪世代のエースのヘッドは惜しくも枠の外。43分にも似たようなえぐりから橋本のシュートに至ったが、どうしてもゴールを捉えられない。そこは宮市にとっても悔しい部分だったに違いない。
「クロスの質を欠いたり、合わなかった部分もありましたし、最後ちょっと決めきれなかった。そこに尽きると思います」と本人も悔恨の念を口にした。
それでも、彼自身は代表生き残りを図るべく、同じポジションの伊東の動きを動画で徹底的にチェック。イメージを膨らませて試合に挑むという努力も払ったという。
「伊東選手との決定的な違いは、常にどの試合も結果を出しているところ。本当に悔しいですけど、切り替えて韓国戦でやっていくしかない」と危機感を吐露したように、ゴールやアシストという目に見える結果が出なかったことは、アピールとしてはやや弱いと言わざるを得ない。
とはいえ、この先、伊東に何らかのアクシデントがないとも限らない。その場合は堂安律(フライブルク)や久保建英(レアル・ソシエダ)よりも、宮市のほうが森保ジャパンのベースを崩さずに行けるというメリットがある。
2012年5月のアゼルバイジャン戦で初キャップを刻んだ当時も、一緒にプレーしている酒井宏樹(浦和)や長友佑都(FC東京)もまだ代表にいて、溶け込みやすいのもプラスだし、彼には10年間の欧州経験がある。世界基準の強度やスピード感を身体で理解しているのも心強い。森保監督も彼のアドバンテージを再認識したはず。中国戦を経て、宮市は生き残りへ大きな一歩を踏み出したと見てよさそうだ。
相馬にしても、もともと1年前の東京五輪では左サイドのファーストチョイスだった選手。ドリブル打開力とチャンスメイクには定評があった。五輪後に三笘や田中碧(デュッセルドルフ)がA代表に駆け上がっていく姿を目の当たりにし、「自分にはゴールやアシストという結果が足りない」と痛感。それを高めるべく自己研鑽を図ってきた。
そのうえで、カタール行きのラストチャンスと言える今大会で凄まじい気迫を前面に押し出している。まず香港戦で見事なFK弾を含め2得点。6-0の快勝の原動力になると、中国戦では終盤のジョーカーとして異彩を放った。森島が不慣れなポジションで戸惑っていたぶん、「もっと早いうちに相馬を出すべきだった」という意見がメディアからも続出。それだけ彼のインパクトが大きかったということだ。
「相手がブロックを敷いたなかで、ハメられた時の打開策として、ドリブルで選手が1人剥がしていくとチャンスが生まれる。そう考えて試合を見ていた。(84分の野津田の)CKのこぼれから行ったところは、以前だったら1人かわしてクロスを上げていたけど、奥深くゴールラインのとこまで入るほうが相手にとって嫌。そこは増やしていこうと思ってました」と狙いを持ってトライしたことを明かす。
それは結果には結びつかなかったものの、相馬の突破が今の日本の大きな武器になっているのは紛れもない事実。次戦・韓国戦のカギになるのも間違いない。そこで彼が優勝請負人になれれば、W杯の大舞台も見えてくるかもしれない。
2013年E-1から2014年ブラジルW杯に柿谷曜一朗(名古屋)や山口蛍(神戸)らが滑り込んだのも、完全アウェーの地で宿敵を下してE-1のタイトル獲得に貢献したことが大きかった。相馬も今、同じ成功ロードを歩めるか否かの瀬戸際にいると言っていい。
いずれにしても、今の森保ジャパンはサイドアタッカーの個の打開力が生命線。そこで伊東と三笘以外の選択肢を持っておくことができれば、本番で相手をかく乱することにもつながる。そうなるように、宮市や相馬にはラスト1戦で持てる力の全てを出し切ってほしいものだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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