【川崎】茫然自失のルヴァンカップ敗退。等々力での“悲劇”はなぜ起こったのか

【川崎】茫然自失のルヴァンカップ敗退。等々力での“悲劇”はなぜ起こったのか

C大阪が喜びを爆発させる傍らでピッチに崩れた川崎の選手たち。最終盤に2失点し、まさかのルヴァンカップ敗退となった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



[ルヴァンカップ準々決勝・第2戦]川崎2-2C大阪/8月10日/等々力陸上競技場
※合計スコア3-3、アウェーゴールの差でC大阪が勝ち上がり

 C大阪の2点目が決まった瞬間、川崎の選手たちはピッチに崩れ落ちた。試合終了間際のラストプレーでの失点。センターサークルでボールを手にした主審は、VARの確認を経て試合終了のホイッスルを鳴り響かせた。ゆっくりと整列し、健闘を称え合い、ジョアン・シミッチや山根視来らはその場に立ち尽くす。

 2試合合計スコア3-3。初戦は敵地で1-1と引き分けたが、最終的にアウェーゴールの差でC大阪に上回られた。第2戦、ホームの等々力では90分まで2-0とリードして突破をほぼ決めかけたが、そこから6分間で連続失点して追いつかれたのだから、ショックは相当なものだろう。しかもACLと天皇杯はすでに敗退している川崎にとって3連覇を目指すリーグとともに、ルヴァンカップは獲りたいタイトル。その大会をまさかの形で敗退したのだから、茫然自失となるのも致し方ない。

 試合の入りは素晴らしかった。7分頃までは完全にC大阪を押し込み、ボールを失っても即時奪還で相手から自由を奪った。崩しの面で粗さが残り、ゴールを奪えなかったが、劇的な勝利をあげた3日前のリーグ戦、首位・横浜とのゲームで得た勢いを感じさせるパフォーマンスだった。

 ただし、その後は相手SBへの対応や、クロスへの寄せがルーズになる場面があり、徐々にC大阪にゴール近くでプレーされる時間も増えていく。特に気になったのがウイングのマルシーニョとインサイドハーフのチャナティップが組んだ左サイドだ。守備時のポジショニングが曖昧になるシーンが見られた。

「相手はクロスを狙っていたので、そこのクロスをフリーであげさせないために、もっとチームで選手を動かすなど、より改善する必要があったと思います」

 橘田健人がそう語ったように、気を付けていたはずのクロスを上げられ、キャプテンのCB谷口彰悟が声を荒げて周囲を叱咤激励するシーンが、いつも以上に多かったのも気になるポイントだった。
 それでも40分に奪った先制点は、川崎らしい崩しだった。相手ゴール近く、ペナルティエリアの外、右寄りで橘田が左斜め前のチャナティップに縦パスを入れると、チャナティップはダイレクトで後方のL・ダミアンへフリック。抜け出したL・ダミアンのシュートはGKの後ろにカバーに入ったDFにブロックされるも、こぼれ球をマルシーニョが詰めた。

 球際で負けない点や身体を張ることを求めながら、何より攻撃面に焦点を当てるチームのやり方を表現したような展開。マルシーニョやチャナティップを攻撃面で輝かせることで、彼らの良さをより引き出し、守備面でのマイナスを消す。鬼木達監督に試合後に谷口のジェスチャーを含めたディフェンスの出来を訊いても、こう答が返ってくる。

「攻めた後の戻りの部分であったり、プレッシャーに行った時のバランスが、ぐちゃぐちゃとなる部分が前半はありました。戻るべき場所に戻っていなかったり、セカンドボールを拾える位置に戻ってなかったり。ただ僕らは戻りたいわけではなくて、正しいポジションに立てるかどうか。そこのところが戻りすぎると相手の圧を受け入れてしまうので、そういうことではありません。

 ただバランスをもっと求めていくべきだったとも感じているのかもしれません。そのあたりは自分たちの攻めが上手くいかなかった時に起きていた現象だと思うので、もう一回、取り組まなくてはいけないと思います」

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 指揮官は後半頭からチャナティップに代えて脇坂泰斗を投入し、前半はインサイドハーフの右に入った橘田を左へスライドさせ、脇坂を右に入れたことで、バランスは改善されたように映る。

 すると後半早々の53分、ここ数戦で光るワイドな展開で追加点を奪う。アンカーのJ・シミッチが自陣から敵陣左サイドのマルシーニョへ素晴らしいフィードを送ると、相手SBと入れ替わったマルシーニョがカットイン。中央のL・ダミアンとのワンツーで相手DFを翻弄したマルシーニョは、思い切ったミドルをネットに突き刺し、リードを2-0に広げたのだ。

 しかし直後の56分にCBジェジエウが足を痛めたのか、その場に座り込み、車屋紳太郎と交代する。その後も粘り強く対応していたが、どこかチームは安定感を欠いたように見えた。

 新型コロナウイルスの影響でメンバーを揃えられない試合が続き、しかも連戦のなかで絶対に負けらない横浜戦を戦ったのだから、コンディション調整は難しかったはずだ。

 カウンターチャンスでも息が合わず、守備でもクロスを上げられ、前半同様に谷口が声を荒げる。

 交代策を引っ張った鬼木監督は、80分にマルシーニョに代えて遠野大弥、家長昭博に代えて小林悠を投入。さらに85分にはL・ダミアンが務めていたCFにユーティリティの山村和也を入れ、明確な逃げ切り策を提示したように映ったが、ピッチでは落ち着かないプレーが続く。

 指揮官は「あの時間で何をするべきかは共有していたつもりですが、結果的に時間の使い方など、サッカーをずっと経験していれば分かるはずだと思うんですが、それがある意味、ゲームのなかで全員に意思統一できなかったのかもしれません。自分もそうですし、選手にも伝えましたが、ゲームの展開のなかでやっぱり感じなくてはいけないところだと思います。リスタートのところもそうですし、どこでボールを動かしたほうが良いのかなど。むしろ一番動かせる時間帯で動かせなかった。そこが自分のなかで後悔が残ります」と振り返る

 90分にはケアしていたはずの左からのクロスを加藤陸次樹にニアでダイビングヘッドで合わされ、1点を返される。まだリードを得ていたはずだが、チームは浮足立ったのか、マイボールにしてもフィニッシュまでつなげられない。嫌な空気が漂い始める。そして90+6分、右サイドからのクロスをゴールライン、ギリギリの位置から折り返されると、最後は山田寛人に押し込まれた。
 
 勝利への覚悟は“コロナ騒動”で揺れたここ数試合でより強いものにしたはずだった。それでもどこか気付かないうちに横浜戦の勝利や、2点のリードを得たことで緩みが生じてしまったのかもしれない。疲労が判断を鈍らせた可能性もある。最後まで諦めなかったC大阪を気持ちの勝負で上回れなかったのは悔しい結果だ。

 振り返れば、横浜戦の後に家長が指摘していた、今のチームに足りない“安定感”が、この試合の結果にもつながっているように感じる。家長はこう語っていた。

「慌てちゃったり、試合のなかで頑張るところを履き違えていたり、スムーズにチームが回る状況ができるようになっていけば、みんなが頑張らずにスムーズに戦える展開になるのかなと感じます。一人ひとりが向上すれば、90分余裕を持ってやっていけると思います」

 厳しい日程と状態のなかで全力を尽くして戦っていることは十分に理解できる。ただここ2年と比べれば、攻撃でミスが増えてリズムが上がらず、奪われ方が良くないだけに守備でも後手を踏む。そうした落ち着きのなさ、粗さの積み重ねがC大阪戦での後半アディショナルタイムにもつながったように感じるのだ。

 先の横浜戦では後半アディショナルタイムで劇的な勝ち越し点をあげたが、今回はその逆のパターン。試合によって波があると言わざるを得ないだろう。

 死力を尽くしたことで、不安視された横浜戦の“後遺症”が実際に表われてしまった形とも言えるのかもしれない。

 今は我慢強く進むしかない。残りの目標はリーグ一本。「この学びというか、同じようなことを繰り返すようでは自分たちは優勝を目指すチームではないと思うので、ここからもう一回切り替えてやっていきたい。大会は変わるので、一番は引きずらないことが重要だと思います」(鬼木監督)と、気を引き締め直して3日後のリーグの京都戦へ向かう。

 より覚悟を持って内容とともに勝負に徹することができるか。これまでも何度も苦境をくぐり抜け、進化してきたチームである。この悔しさを糧に意地を、そして新たな魅力を見せてくれるはず。さらなる巻き返しを今は信じたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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