「PSGは失敗を続けている」「中村俊輔を獲得してほしいと頼んだのは私なんだ」パリを離れたポチェティーノが本音や真相を激白!【直撃インタビュー】

「PSGは失敗を続けている」「中村俊輔を獲得してほしいと頼んだのは私なんだ」パリを離れたポチェティーノが本音や真相を激白!【直撃インタビュー】

7月にPSGの監督を退任したポチェティーノ。現在はフリーだ。 (C)Getty Images



 7月にパリ・サンジェルマンの監督を退任したマウリシオ・ポチェティーノのインタビューだ。
 
 旧知の記者が引き出したのは、難易度の高い任務に当たってきた指揮官の本音。フランスの名門を率いる苦悩や葛藤、リオネル・メッシを指導できた喜び、レアル・マドリーに逆転負けを喫した試合のジャッジへの不満など、ざっくばらんに語ってくれた。
 
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セルヒオ・レビンスキ記者:久しぶり。PSG(パリ・サンジェルマン)を去ってから、どんな日々を送っているのかな?
 
マウリシオ・ポチェティーノ:いまは落ち着いた時間を過ごせているよ。でも、パリを離れる時は慌ただしかった。プレシーズンが始まる前日に契約を解除することになったわけだから、さすがにね。
 
レビンスキ記者:PSGでの日々をどう振り返る?
 
ポチェティーノ:とてもポジティブに思い出せるよ、スポーツ面ではね。在任した1年半で、国内カップとスーパーカップ、そしてリーグ・アンのタイトルを獲得できた。ただ周知の通り、PSGはチャンピオンズリーグ制覇を最大目標に掲げていて、ビッグイヤーを逃せば失敗と見なされる。

 私に言わせれば、あの(ラウンド・オブ16)敗退は昨シーズンだけの失敗ではなく、もっと継続的な、いわばこの50年間の失敗だ(PSGのクラブ創設は1970年)。11年前に新しいオーナーがクラブを取り仕切るようになってからも、失敗を続けている。彼らの無限の財力をもってすれば、いずれそれは果たされるだろう。だが、フットボールでは、時に制御できない事象が勝負を決めることもある。
 
レビンスキ記者:ラウンド・オブ16のマドリー戦については、多くの人があれこれと意見を述べていた。心理学者の見解を聞くべきだと言う人もいたし、〝フットボールの哲学者〞と評されるホルヘ・バルダーノ(レアル・マドリーで監督やゼネラルマネジャーを務めた元アルゼンチン代表FW)は、ベンゼマのハットトリックで逆転された第2レグのラスト30分間は、「フットボールではなかった」と私に語ったよ。2試合を通じて多くの時間帯でPSGが主導権を握っていたのに、信じがたい逆転劇が起きたのは事実だ。
 
ポチェティーノ:それなら、その後にマドリーが勝った準々決勝のチェルシー戦、準決勝のマンチェスター・シティ戦、決勝のリバプール戦についても、心理学者の見解を聞いてみたいところだ。個人的には、いずれの試合もコントロールできない事象が勝敗を分けたと思っている。マドリーとの第2レグに話を戻せば、ドンナルンマに対するベンゼマのプレーは、明らかなファウルだった(編集部・注/パスコースを探していたドンナルンマにベンゼマが激しくチャージ。蹴り損ねたボールがヴィニシウスへと渡って最後はベンゼマがネットを揺らし、逆転劇の幕が上がった)。あれがVARで検証されてさえいれば、私たちはいま違う話をしているはずだ。

 訊かれている質問は、こうだろう。「マドリーをどうやって下したのか」。結果的にあのゴールでマドリーは勢いづき、ピッチ上の空気もがらりと変わった。それが事実だ。勝負の綾が、あそこにあった。その後の展開と結果は、フットボールを分析して導き出せるものではない。だから、メンタルの弱さやスピリットの欠如を敗因に挙げるような言い分も納得できない。そう、誰にもコントロールなどできなかった。心理学者の声に耳を傾けるべきだという主張は的外れだ。
 
レビンスキ記者:結果としてあの敗戦が、君の職を奪う大きな理由になった。そのあとにリーグ・アンを制したにもかかわらず、契約解除に至ったわけだからね。クラブからその決断を言い渡されたとき、どんな説明があったのか教えてもらえるかい?
 
ポチェティーノ:ひとつ理解しなければならないのは、PSGというクラブの現状だ。要求が高まり続ける一方で、「忍耐」の二文字はなきに等しい。国内のリーグ戦やカップ戦を制しても、関係者やファンはまるで納得しない。昨シーズンは記念すべき10度目のリーグ優勝を成し遂げて、サンテティエンヌの持つ最多記録に並んだというのにだ。

 そもそもPSGは、リーグ・アンのタイトルをまだ10回しか手にしていない。50回ならともかく、たったの10回だ。そのトロフィーにまったく敬意を払わないのは、いかがなものだろう。国内リーグは制して当たり前、逃したら大惨事。いまのPSGのフロントは、そう捉えているようだ。だから優勝を果たしても、そこに興奮や熱狂はない。まるでチャンピオンズリーグのグループステージのような扱いだ。すべては欧州制覇という目標のためにあり、そうしたスタンスがしばしば、国内の試合を難しくした。選手たちの集中力やモチベーションをそのなかで維持していくのは、簡単ではないからね。
 

レビンスキ記者:この夏に契約を延長したキリアン・エムバペの影響力が、クラブ内でとてつもなく大きくなっているという指摘がある。あの年齢の選手が、それほど強大な発言権やパワーを得ることなど、実際にありえるのだろうか。
 
ポチェティーノ:残留させるために、PSGが全力を尽くしたのは間違いない。いまや世界最高のフットボーラーのひとりだからね。無尽蔵のリソースを最大限に生かして、引き留めたのだろう。ただ、キリアンはクラブの青写真を描いている人物ではない。すべてを決めるのは、ナセル・アル・ケライフィ会長だ。
 
レビンスキ記者:君はPSGで煌びやかなスターたちとともに仕事をしてきた。リオネル・メッシ、エムバペ、ネイマール、セルヒオ・ラモスらを指導した日々は、率直に言ってどうだった?
 
ポチェティーノ:喜びだった。ほかのコーチ陣とも、よくそんな話をしていたよ。あれほどのビッグネームたちと一緒に戦える機会は滅多にないし、大いなる可能性も感じていた。素晴らしい経験になったと思っている。
 
レビンスキ記者:君がPSGの監督に就いた時(21年1月)、メッシはまだいなかった。昨シーズンの開幕前に当時のスポーツディレクターだったレオナルドから突然、「メッシがやってくる」と聞かされたそうだね?
 
ポチェティーノ:ああ、驚いたよ。彼を指導する機会は正直、訪れないと思っていた。なぜなら(エスパニョールでのプレー歴と監督歴がある)私がバルセロナを率いる可能性は低いと考えていたし、メッシはバルセロナでキャリアを終えると確信していたからね。だから、嬉しいサプライズだった。メッシと直に接して、指導もできた。監督冥利に尽きるよ。
 
レビンスキ記者:だろうね。そんな機会はなかなかない。
 
ポチェティーノ:本当にラッキーだった。最高のプレーヤーとともに働く。フットボールというスポーツを愛するすべての選手や指導者にとって、それに勝る喜びはない。
 
レビンスキ記者:一方で、そんなチームを率いる監督には、スペシャルなパフォーマンスと勝利が求められる。
 
ポチェティーノ:つねに5点差以上で勝つことが期待されていた。その重圧を感じなかったかと言えば、嘘になる。昨シーズンに関して言えば、多くの選手がEUROやコパ・アメリカに参加した影響で、最初の1~2か月はコンディションが十分に上がらないままプレ
ーするほかなかった。しかも開幕直後にワールドカップ予選があり、南米の選手たちは長距離移動を強いられた。

 PSGは、9割以上が代表選手だ。そんな状況では、まともにトレーニングなどできるわけがないし、高いクオリティーを示すのは困難だ。まっとうな練習が積めるようになって、コンディションも整ってきたのは、後半戦に入ってから。徐々にパフォーマンスも上がっていったが、上がり切る前にマドリーとぶつかった。その後、2位のマルセイユに15ポイントの大差をつけてリーグ・アンを制したが、さっきも言った通り、それは大きな意味をなさなかった。その点、今シーズンはプレシーズンから全員が揃っている。1年前とは違ってね。これは言い訳ではなく、事実を述べているだけだ。
 
レビンスキ記者:エムバペは現時点で世界ナンバーワンの選手だろうか。メッシやクリスティアーノ・ロナウドよりも、すでに上回っていると見る向きもある。
 
ポチェティーノ:個人的には、メッシが今もナンバーワンだと思う。当然、エムバペはその称号を引き継ぐべき存在だ。私はネイマールも世界一のひとりだと考えている。
 

レビンスキ記者:ネイマールが移籍を望んでいると報道されていたけど、そのニュースに驚きは?
 
ポチェティーノ:たしかネイマール本人が、自分の未来にはあらゆる可能性があると言ったんだよね。それが大袈裟に伝えられているのかなと。私はネイマールとの仕事を楽しんだし、彼を重要な選手と考えていたが、いまのPSGがどう捉えているかはわからない。
 
レビンスキ記者:君が考える優れた監督とは? 最近は独自の哲学を持った指導者がそう評価される傾向にあるよね。例えば、グアルディオラやクロップのように。2人には彼らだけのメカニズムがある。
 
ポチェティーノ:フットボールは基本的に、選手たちのものだと私は考えている。監督はあくまで、彼ら主人公たちを輝かせるための存在に過ぎない。手法やメソッドはたしかに大事だが、それがもっとも重要なファクターとして語られることに賛同はできないし、何をもって独自と言えるのかという疑問もある。このスポーツに特許はないからね。グアルディオラといえど、彼のみが持ち合わせているものなどおそらくない。
 
レビンスキ記者:では、なぜ特別視されるのだろう。
 
ポチェティーノ:英雄や崇拝の対象を、人々がつねに求めているからだろう。大きな勝利や成功を掴むには、フロントのバックアップも不可欠だ。例えばマンチェスター・シティやリバプールのフロントは、監督を信頼し、全面的に支援してくれる。エスパニョールやサウサンプトンといったチームを率いるよりも、その意味では恵まれていると思うよ。
 
レビンスキ記者:PSGはどうだった?
 
ポチェティーノ:さっきも言った通り、昨シーズンのPSGは圧倒的な強さを示してリーグ優勝を成し遂げた。それでも、たったひとつの敗北が問題視されてしまう。かたやマンチェスター・シティは、同じくチャンピオンズリーグでマドリーに(準決勝で)逆転負けを喫しても、監督の進退問題に発展することはない。翌週には何もなかったかのように、アーリング・ハーランドの獲得まで発表していたが、こうも違うのかと驚いたよ。

 違いと言えば、昨シーズンはシティも国内リーグを制したが、そこには本当の喜びがあったように私には見えた。翻ってPSGの監督に求められるのは、リーグ優勝ではなく欧州制覇だ。もちろん、それぞれのクラブにそれぞれのプロジェクトがあり、比較しても意味はない。さっきも言ったように、私は不満ではなく事実を述べているだけだ。
 
レビンスキ記者:代表の話も少しだけ。今年のワールドカップで優勝する国はどこだと思う?
 
ポチェティーノ:アルゼンチン、フランス、ブラジル、スペイン、イングランドにチャンスがあるだろう。もちろん、常にサプライズは起こりうる。
 
レビンスキ記者:35歳のメッシは、唯一まだ達成していないワールドカップ制覇という夢を果たせるだろうか。
 
ポチェティーノ:もちろんさ。フィジカルも素晴らしい状態を保っているし、年齢は関係ないよ。意欲と野心だっていまも旺盛だ。本大会を最高のコンディションで迎えられれば、可能性は十分にある。
 
レビンスキ記者:ではこれが最後の質問。最近、日本のサッカーを観る機会はあったかい?
 
ポチェティーノ:いや、残念ながらまったく。PSGはプレシーズンで日本に行ったようだね。個人的に日本といえば、以前に一緒に働いた吉田(麻也)と中村(俊輔)の印象が強い。彼らを指導したことで、日本人選手の特性をなんとなく知り得た気がするよ。規律正しく、スキルとフィジカルに優れていた。吉田や中村のような選手が増えていけば、日本代表ももっと強くなるだろう。
 
レビンスキ記者:中村は当時の日本を代表するプレーヤーだった。
 
ポチェティーノ:選手としても人間としても偉大だった。プレーのクオリティーも高く、模範的な存在だったよ。エスパニョールに中村を獲得してほしいと頼んだのは、実は私なんだ。入団直後にダニ・ハルケが他界(09年8月に遠征先のイタリアのホテルで心不全により急死)したこともあって難しい状況だったが、彼は私の指導にしっかりと応えてくれたよ。
 
取材・文●セルヒオ・レビンスキ(Sergio LEVINSKY)
 
PROFILE
セルヒオ・レビンスキ/ 1963年生まれ、ブエノスアイレス出身。82年から記者活動をはじめ、現在はフリーランスとして世界中のメディアに寄稿する。ワールドカップは86年大会からすべてを現地取材し、『マラドーナ、理由ある反抗』など多数の著作も出版している。
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2022年9月1日号より転載

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