ゴールに絡むも…なぜ久保建英はセルタ戦で輝けなかったのか?ソシエダ番記者が指摘。「タケが愛される所以」と評した“行動”とは――【現地発】
2022年10月19日 20時53分サッカーダイジェストWeb

セルタ戦では75分までプレーした久保。(C)Getty Images
上昇気流を掴んだチームは勝ち運に乗ることがある。公式戦の連勝を7に伸ばしたレアル・ソシエダはまさにその状況にある。
開幕以来、主力に負傷者が続出しているチームは、攻撃面において本来の輝きを失っている。ソシエダは個の力も強いチームだ。しかし現在の快進撃を支えているのは組織力であり、難しい試合を勝ち抜く中で、チームとしての成熟度が高まっていることの証である。
セルタ戦後、バライードスのミックスゾーンで、イマノル・アルグアシル監督は私にこう語った。
「誠実に、謙虚にならなければいけない。3日おきに試合が組まれている中で、常に見栄えのいいサッカーを見せることはできない。我々ができることは努力を続けることだ。まだ何も成し遂げたわけではないんだ。ここ数試合、幸いにも白星を積み重ねることができているが、同じようなプレーをしても負けることはある。実際、これまでもそのような試合はあった。重要なのは、浮かれることなく、地に足を着けて戦うことだ。次のマジョルカ戦も非常に難しい試合になるという覚悟を持って臨まなければならない」
【動画】久保も絡んだパスワーク→主将イジャラメンディが決めた左足ミドル弾
私がこのアルグアシル監督の言葉を引用したのは、タケ・クボ(久保建英)のセルタ戦でのパフォーマンスを分析する際にも、同様のフィルターを通して行う必要があると考えるからだ。開幕から2か月余りが経過し、タケが監督の構想において不可欠な選手であることはもはや疑いようのない事実だ。しかしどんな選手にも限界がある。もちろん開幕以来、エネルギッシュなプレーを見せてきたタケも例外ではない。
途中出場で30分余りプレーしたシェリフ戦から中2日での試合だった。ポジションはアレクサンデル・セルロトとともに2トップの一角で出場。左サイドを主戦場にプレーするのも定番となりつつあるが、しかしこれまでの試合と比べて、輝きを放つことはできなかった。
弊害となったのが、味方がロングボールを多用したことだ。タケは動き出しの速さで勝負するタイプのアタッカーだ。オープンスペースにロングパスを送られ、相手DFと体格とパワーで勝負させられる状況を強いられると劣勢は免れない。
しかし、タケは決して諦めない。何度も何度もトライする。たとえ物事がうまくいかなくても、コンプレックスを抱くことがない。彼のモットーは明快だ。勝者とは、決して倒れない者ではない。常に立ち上がる者なのだ。
前半、危険なアクションをほとんど繰り出せなかったのは事実だが、30分、タケからリターンパスを受けたブライス・メンデスが縦に抜けて、その直後にアシエル・イジャラメンディの先制ゴールが生まれた。きっかけを作ったのはタケの壁パスだった。
近年、度重なる怪我に苦しんだイジャラメンディにとっては2018年8月のレガネス戦以来のゴールだった。その重要さを理解しているタケも、ダッシュで駆け付け一緒にゴールを祝った。
【動画】久保も絡んだパスワーク→主将イジャラメンディが決めた左足ミドル弾
後半に入り、ソシエダは両FWがダイアゴナルに走り込んだタイミングを狙って縦パスを入れる攻撃を再三、繰り広げた。ロングボールが中心であることに変わりはなく、力強いフリーランが持ち味のセルロートが輝きを放つ結果となった。それでもタケは見せ場を作った。
53分、ミケル・メリーノのシュートを相手GK、アグスティン・マルチェシンに弾かれたこぼれ球に詰めていたが、手前でハビ・ガランがクリア。そのCKをスベルディアがヘディングで叩き込みソシエダが再び勝ち越した。
面白かったのが交代のシーンだ。75分、交代を命じられると、スタジアム全体から拍手が起こり、タケは自らがその栄誉にあずかっているかのようなジェスチャーで応えた。しかし実際に観客が拍手を送った選手は05-06シーズンにセルタでプレーし、同時にピッチを退いていたダビド・シルバだった。
こんなところもタケが愛されている所以である。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸
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