【バイタルエリアの仕事人】Vol.22大谷秀和|パサーとしてテンポ良くつないで、受け手の時間を作る。伝えたいのは駆け引きの面白さ

【バイタルエリアの仕事人】Vol.22大谷秀和|パサーとしてテンポ良くつないで、受け手の時間を作る。伝えたいのは駆け引きの面白さ

大谷は相手DFやGKとの駆け引きを征して決めた得点を自身のベストゴールに挙げた。(C)SOCCER DIGEST



 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第22回は、柏レイソルのMF大谷秀和だ。

 前編では、キャプテンシーやチームメイトへの接し方、10月に急逝したかつてのチームメイトで元日本代表FWの工藤壮人さんへの想いなどについて訊いた。後編では、自身のベストゴールやボランチ論などを掘り下げる。

 まずは、自身のベストゴールについて訊いた。大谷がセレクトしたのは、2017年の第17節・鹿島アントラーズ戦の24分に決めた得点。バイタルエリアを見事に攻略した、クレバーかつ鮮やかなファインゴールだった。

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 僕が好きなのは、鹿島戦のゴールです。ベストゴールと言っていいと思います。

 一連のボールとの関わり方も含めてのベストゴールですね。相手を見ながらチームみんなで前進していって。一度、クロスが流れましたけど、その後に僕の所に落とされてシュートを打つ時も、キーパーと飛び込んでくるディフェンスの選手をしっかり見て。
 
 飛んだコースは特別に良いコースではないですけど、駆け引きができていました。しっかりキーパーの逆を取っているので、絶対に入る確信もありました。個人的には、駆け引きをずっとしながらプレーしてきました。その駆け引きが、すごく出たゴールかなとは思います。

 シュートを打つ時に、キーパーのクォン・スンテ選手から見て左側に蹴るような身体の向きで蹴ったので、キーパーから見たら、「逆に取られたから、もう反応できない」という感じだったと思います。

 相手選手の逆を取る駆け引きは、僕にとってサッカーをやっていて楽しいと思うポイントです。ゲームの中での駆け引きは分かりづらい部分が多いので、そこをピックアップして説明するのは、難しいです。ただ、あのシーンは「これ」という分かりやすいシーンでした。

 ディフェンスの選手は遅れて飛び込んでくる状況だったので、何とかブロックしようとして足を伸ばしてくると、股は空きますし。そのため、股が空くというのを把握しながらシュートを打ちました。

 クリスティアーノが「シュートを打ってください」というような良いボールの落とし方をしてくれたので、僕の中ではすごく時間があって、ディフェンダーの選手やキーパーの選手をしっかり把握して、駆け引きする時間があったのが良かったなと思います。

【動画】大谷秀和が選ぶ自身のベストゴール!鹿島戦で駆け引きの末に決めたコントロールショットをチェック!

 ゴールに多く絡むFWやGK、DFと比べて、守備的MFのボランチは試合のハイライトシーンに絡むケースはそこまで多くない。“分かりやすい”凄さが見えにくいとも言われるポジションの見方や、中盤の攻防、バイタルエリア攻略へとつなげる攻撃のアプローチなどについて訊いた。

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 ボランチはチームの真ん中にいるポジションなので、攻撃も守備もこなしながら、つなぎ役にならないといけません。ボランチがどっしりと中央に構えていられるチームは良いチームというか、安定した試合運びができると思います。

 そのため、味方だけでなく相手を含めて、ボールの動きを常に見るようにしていました。味方と相手を含めて、どこにいて何を考えているのか。相手が何をされたら嫌なのか。相手が前向きな状態でプレーできているのか。それとも、少し「やりづらいな」と思ってプレーしているのか。そういった点を相手の表情を含めて見るようにはしていました。

 また、人と人のその距離感、距離が遠いとボールが拾えないですし、つなげられなくなります。選手同士の距離の調整は、前後左右とも気にしていました。

 攻守の意識は半々でした。役割とかシステムによって、守備が6になる時もありますし、一緒に組む選手によっては攻撃が6になる時もありますが、基本的なスタンスとしては、5:5でいました。また、チームが押し込んでいれば、その分、高くなりますし、試合展開だったり、相手の状況によって、そこの比重を上げたり下げたりします。
 
 また、パサーとしては、僕が長くボールに触るよりも、パスを受けた選手が0・5秒でも1秒でも早くボールを受け取れて、良い状態でプレーできるようにしようと、常に心がけていました。僕が時間をかけないでテンポ良く前向きの選手にボールを渡し、その選手に時間ができるというのは意識していました。

 速い攻撃をするにしても、テンポを落とすにしても、選手がコントロールしている部分もあるので、勝っているのか負けているのか、その時によって選ぶプレーも変わってきます。

 点差や時間帯を含めて、ボランチの選手だけに注目して見続けるというのも、1つ興味深いかなとは思います。色んなタイプのボランチがいるので、「なんで、このチームはボールがつながらなくて、バタバタ慌ただしい展開が多いのか」とか。

 なので、オープンな展開になっているのか、真ん中にいる選手がどういう動きをしているかによって違いますし、どういう声がけをどういう風にしているかで変わってきます。

 しっかりコンパクトにできているチームは、後ろの選手、特にセンターバックやボランチの選手がしっかりと舵を取って引き締めている部分があります。

 ボランチとして長く戦った大谷は、マッチアップしたなかで最も上手かった選手に、クラブ・ワールドカップで戦ったブラジルのサントスに所属していたガンソを挙げる。

 では、日本人選手では誰が強く印象に残ったのか。

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 中村憲剛さんや、遠藤(保仁)選手は嫌でしたね。常に駆け引きしてくるので。自分が前で奪いたい時に、常に背中を取ってきますし、しっかり相手を見てプレーを選択しているので、守備側は簡単には飛び込めない。すごく“見られている感覚”があって、嫌でしたね。

 逆に、ボールばかり見ている選手や相手の状態を意識していないプレーヤーが相手だと、ボールに対して奪いに行きやすいですし、狙いやすいですけど、遠藤選手や中村さんはしっかりと相手を見てプレーしているので、守る側として対応している時は、嫌でしたね。

 その意味では、(アンドレス・)イニエスタ選手も一緒ですね。やはり、ボールを見ないで相手を見て、何と言うか“後出しじゃんけん”じゃないですけど、「相手が動いたら、その逆を取って」みたいな。ギリギリまで判断を変えられる技術と目を持っている選手たちは、対峙していて嫌でした。
 
 また、鎌田(大地)選手は鳥栖にいた頃に何度も対戦して、印象が強く残っています。ボールを持った時の姿勢が良くて、常にラストパスを意識して、ゴールに直結するプレーを狙っていました。ボールを持ってもプレーのスピードが落ちなかったですし、前線の選手たちに出すパスが強気で、かつ質も高かったです。

 僕はサッカーをやっているなかで駆け引きすることを、常に意識してきました。それが僕の中では醍醐味でもあり、楽しさでもあったので、指導者になっても追求して、伝えていこうと思います。

 現代サッカーはアスリート能力が高くなってきて、強度が大事という部分もあります。でも、ボールを蹴り始めた時の、相手の逆を取って抜くとか、相手が考えていないプレーで相手を上回るとか。始めた頃の根っこの部分を忘れずに、これからもやりたいなと思います。

 僕が長くプレーできたのも、相手の逆を取るプレーや、相手の考えを逆手にとってという部分が、相手にとっては嫌だから現役を続けられたと思います。そういった駆け引きを楽しむのは、サッカーを見る際に分かりづらい部分ですけど、伝えていけたらなとは、思っています。

 以前、納得した試合がないと語っていた大谷。引退するにあたり、その試合があったのか。Jリーグ史に残る足跡を残した柏のバンディエラに、将来を含めて訊いた。

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 納得した試合は、結局ありませんでした。僕の中でミスがあったら、満足いく試合ではないですから。他の人から見たらミスに見えてないものです。例えば、相手にパスをカットされる、つながらなかったとなると分かりやすいミスだとは思います。

 そういったミスに加え、パスを通せても、相手の右足につけたかったのに左足に送ってしまったのや、本当はもっと違うパススピードで通したかったとか。そういうのを考えるとキリがなくて、満足した試合っていうのはやっぱりないです。

 相手の裏をかけたとか、良いトラップだったとか、局面だけを見ればあります。でも、試合を通してみると、必ず攻守においてミスがあるので。

 でも、完璧を目ざしてやっていました。攻守において自分の中の完璧を追い求めていました。一方、あり得なかったことですけど、自分が完璧なプレーをしたけど、チームが負けたら、それはそれで意味がなくて。チームの勝利に貢献できる、繋がるプレーでなかったという評価になるので、結局一度もなかったですね。

 ただ、そういう気持ちでやってきたから、年齢を重ねても向上心を持って「上手くなりたい」という思いを強く持ってできたのかな、とは思います。
 
今後は、指導者の道に進もうと思っていますし、レイソルにお世話になるのは決まっています。自分がどのカテゴリーに向いていて、どの立場が向いているのかというのは、指導者としてはゼロからのスタートなので分からない部分があります。指導者のライセンスを取得しながら、自分が歩む道を決めていきたいと思っています。

 指導は難しいと思います。年代によってかける言葉も、嚙み砕く必要があるなど、変わってきますから。まだまだというか、もっと頑張らないといけません。

 練習のメニュー1つとっても、寝る時間を惜しんで考えている指導者が数多くいます。自分が教えるなかで、そう感じました。必死にコーチやスタッフが、育成年代を含めて考えてくれているメニューです。それ以来「この練習、何なんだよ」とか「今日の練習つまんない」などと思われないようにしようと指導者ライセンス講習で感じました。

 C級ライセンス講習は子どもとの接し方を含めて、学びが多かったですね。言葉をもう1つ、2つ噛み砕いて話さないと伝わらないと学びました。

 26年間、さまざまな方にお世話になりました。柏レイソル、地元の地域、色んなものを与えてくれたサッカー界。お世話になった皆さんに、恩返ししたい気持ちを実現できるように進みたいと思います。

※このシリーズ了

取材・構成●野口一郎(サッカーダイジェストWeb編集部)

【動画】大谷秀和が選ぶ自身のベストゴール!鹿島戦で駆け引きの末に決めたコントロールショットをチェック!

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