崖っぷちのドイツに現れた救世主。スペイン戦で同点弾の29歳FWはなぜ代表に招集させてこなかったのか【W杯】

崖っぷちのドイツに現れた救世主。スペイン戦で同点弾の29歳FWはなぜ代表に招集させてこなかったのか【W杯】

スペイン戦で同点弾を奪ったフュルクルク。(C)Getty Images



 ドイツに救世主が現れたようだ。

 日本代表との初戦を落としたドイツ代表は、続くスペインとの一戦でも相手に先制ゴールを許す厳しい展開を余儀なくされていた。そんなドイツに希望をもたらすゴールを決めたのがニクラス・フュルクルクだ。

 70分にトーマス・ミュラーと交代でピッチに入ると、83分にスペインのゴールをこじ開けた。相手ビルドアップからのパスをルーカス・クロスターマンがインターセプト。レロイ・サネ、ジャマル・ムシアラとつながったボールがゴール前にこぼれてくると、ゴール左上隅に強烈な一撃を叩き込んだ。このゴールが持つ意味は大きい。

 一つはこの得点で引き分けに持ち込んだことで、3戦目のコスタリカ戦に2点差以上で勝利すれば、日本がスペインに引き分け場合、決勝トーナメント進出を決めることができるということ。

 さらにもう一つの意味がある。それはドイツが何年も探し求めていた本格的CFがやっと見つかったかもしれないということだ。

 ワールドカップ通算得点王のミロスラフ・クローゼが14年W杯後に代表引退してからドイツはずっと後継者問題に苦しみ続けてきた。マリオ・ゲッツェやトーマス・ミュラー、いまであればカイ・ハベルツという本来であればトップ下の選手がFWで起用されるパターンは悪くはないものの、迫力に欠ける。今大会けがで欠場のティモ・ヴェルナーがここ最近はFWの一番手ではあったが、満足のいく決定力を見せていたわけではない。

 そんななかフュルクルクは今季に1部昇格したブレーメンで15節終了時までに10得点をマーク。ドイツ人最多ゴール数だ。待望のCFタイプとして代表にサプライズ招集されると、オマーンとの親善試合で早速ゴールを決めた。

【動画】途中出場から土壇場で大仕事!スペイン戦でフュルクルクが決めた同点弾
「スペイン戦でカギとなったのはどこにあると思いますか?」と知人のドイツ人記者カルロ・ヘアマンに尋ねてみたところ、開口一番すぐに「ニクラス・フュルクルクの途中出場」と答えてくれた。

「ドイツの問題は多くのチャンスがありながら、ゴールが少なかったところ。それがドイツの試合運びをいつも難しいものにしていた。スペイン戦ではトーマス・ミュラーがトップの位置で起用されていた。守備面で相手の攻撃の起点を作らせない動きをみせたり、得意のダイレクトパスで見方の動きを引き出したりというのはあったが、シュートはなかった。

 フュルクルクはピッチに立ってからすぐにゲームに入り込んでいたし、短い出場時間ながらシュートは3本を記録。加えてジャマル・ムシアラがフリーでシュートを打った場面があったけど、あそこでもフュルクルクはファーポスト際でフリーでシュートが打てる状況を作っていた。ゴールシーンは言うまでもなく素晴らしかった」

 ドイツメディアでもよく取り上げられているテーマが、ロベルト・レバンドフスキが移籍後、CFがいないまま試行錯誤していたバイエルンが、カメルーン代表FWエリック=マキシム・チュポモティングがスタメンで起用されるようになったとたん、オフェンシブな選手が解放的に自分の特徴を出せるようになったという相乗効果について。ドイツ代表においてフュルクルクはそんな存在になれる可能性を大いに秘めている。

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 ヘアマン記者はこう続けた。

「そう思うよ。フュルクルクはその資質を持った選手だし、ペナルティエリアで起点となれて、強烈で正確なシュートを打てる。特に重要なのはミュラーやハベルツと違って、ヘディングにも強いという点だよ。ミュラーやハベルツが空中戦に弱いというわけではないよ。彼らにしてもヘディングでの得点は多い。ただフュルクルクは相手DFとぶつかり合いながらもシュートに持ち込める強さがある。ロングボールをあてることもできる。これが大きい。

 ドイツ代表だと左SBダビド・ラウムはオフェンシブなポジショニングを取り、鋭いセンタリングでチャンスメイクをするのが得意な選手。でもそのパスを受けられる選手がゴール前にいないとその武器は生きない。フュルクルクを起用するメリットはここにある。ドイツ全体のオフェンス力をアップさせられる」
 
 それにしても、本格的なCFが渇望されていたのはここ最近の話ではない。そんな重要な存在になれそうなフュルクルクがなぜ代表に招集されてこなかったのか?

「問題はまさにそこだよ。経験不足という点なんだと思う。とくに昨シーズンは2部リーグでプレーしていた選手でしょ。そして今回29歳で初めて代表に招集されるということで、他の代表選手とどこかで一緒にプレーしたことがないんだ。そうなると様々なことにどれだけスムーズに慣れることができるのかという問題だって出てくる」

 今回の代表招集にしても待望論に沸くファンがいる一方で、そうはいっても代表でどこまでできるかは未知数という懐疑論派のファンも相当数いた。それにチーム内における戦術的な規律をすぐに理解して、実践できるかというと簡単なことではない。守備時のプレスのかけ方やポジショニング、プレーの優先順位などいろんな要素があるわけだ。時間だって必要だろう。そう思われていたって不思議ではない。

「ただスペイン戦のゴールはそうした懐疑論や慎重論全てを吹き飛ばしたのではないだろうか。長らく忘れていたゴールを吹き飛ばすかのような豪快な得点シーン。あれこそがストライカーのゴールだ」

 勝負のコスタリカ戦ではスタメン起用の可能性も、ジョーカーとして途中出場の可能性もある。いずれにしてもドイツにとって極めて頼りになる選手が出現したのは間違いない。

取材・文●中野吉之伴

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