「万事休す…誰もがそう思った瞬間、タケが不屈の精神を発揮した」飛車角落ちのソシエダを牽引した久保建英に番記者が感服。トップ下起用は「信頼の表われ」【現地発】

「万事休す…誰もがそう思った瞬間、タケが不屈の精神を発揮した」飛車角落ちのソシエダを牽引した久保建英に番記者が感服。トップ下起用は「信頼の表われ」【現地発】

古巣のバルサ戦で攻守に奮闘した久保。(C)Getty Images



 レアル・ソシエダのタケ・クボ(久保建英)のセールスポイントの一つが様々なポジション・役割をこなすことができるポリバレント性だ。もちろん選手である以上、得意なポジションがあるはずだが、明確に口にしたことはない。

 我々が行なったインタビューでは、「ポリバレントであること、ミステル(監督)がいろいろな場所で試してくれること、信頼してくれることが好きなんだ。4-4-2ではメディアプンタとして2トップの一角かインテリオール、4-3-3ではインテリオールかウイングでプレーできる。ミステルは対戦相手に応じていろいろなシステムを使いたいと考えていると思うので、それに対応できるようにしたい」と語っている。

 これまでのマッチレポートでも何度か触れてきたように、イマノル・アルグアシル監督はダビド・シルバ役としてダイヤモンド型の頂点でタケをプレーさせることを理想としている。大きな誤算は、開幕以来、前線に負傷者が続出していることで、その影響で2トップの一角で起用されることが増えている。
 

 そんな中、コパ・デル・レイ準々決勝のバルセロナ戦を翌日に控えた24日の練習でシルバがふくらはぎを負傷。アルグアシル監督が代わりに“10番”役に抜擢したのが、大事をとって先週末のラ・リーガ第18節のラージョ・バジェカーノ戦でメンバーから外れたタケだった。改めてアルグアシル監督の信頼の高さを示す人選だった。

 そのパフォーマンスに期待が集まったが、ソシエダは立ち上がりの30分、守勢を強いられた。バルサのパスワークに翻弄され、プレスがはまらず、2018年12月にアルグアシル監督が復帰して以来、「最も厳しい時間帯」と言っても過言ではなかった。

 その劣勢の中で、30分、相手選手の間をすり抜けたパブロ・マリンがお膳立てをすると、タケが左足を一閃。シュートは惜しくもクロスバーに嫌われたが、これがソシエダにとって前半唯一のチャンスだった。しかも38分、セルヒオ・ブスケッツの足を踏みつけたブライス・メンデスが、VARチェックを経て一発退場を命じられた。
 



 アルグアシル監督はすぐさま対応。後半開始と同時にシステムを3バックに変更した。相手の攻撃に備え防御を固めたが、51分にウスマンヌ・デンベレの強烈なシュートがGKアレックス・レミロの手を弾いてネットに突き刺さり、先制を許す。ソシエダ側にとっては、誰もが「万事休す」と思った展開となったが、ここからタケが不屈の精神を発揮する。

 ボックス手前中央という絶好の位置からFKを壁に当ててしまったのは残念だったが、その続けざまドリブル突破を仕掛けペドリのイエローカードを誘発。さらにその直後のプレーだった。左サイドを駆け上がり、ゴール前にグラウンダーのクロスを配給。相手GK、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの目の前を通過し、押し込めばゴールというビッグチャンスだったが、アレクサンダー・セルロトがうまくミートできず、シュートはクロスバーの上を越えた。

【動画】「天才的なお膳立て」とバルサ贔屓紙も激賞!久保建英が完璧なクロス→ノルウェー代表FWが絶好機を決められず
 ソシエダにとってここが勝負の分かれ目だった。タケはコンディションも考慮して78分に交代を命じられたが、ロベルト・レバンドフスキの蹴り込んだクロスをファーサイドにフリーで待つデンベレの前でカットするなど守備面でも貢献が光った。

 試合は結局、ソシエダは相手のゴールを割ることができず、0-1で押し切られた。しかしシルバに加えて、ミケル・メリーノも故障で欠く飛車角落ちの状態で、おまけに前半に退場者を出す中で、最後まであきらめずに戦い続けた。無念の敗退となったが、善戦を見せたチームを牽引したのがタケだった。

 今週のもう一つの大一番、ラ・リーガのレアル・マドリー戦に向けて、アルグアシル監督の日本産の秘蔵っ子は好調を維持している。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?