浦和Lが「埼玉ダービー」でEL埼玉に競り勝つ!土壇場で清家貴子が決勝弾。厚みを増した選手層を再確認【WEリーグ】

浦和Lが「埼玉ダービー」でEL埼玉に競り勝つ!土壇場で清家貴子が決勝弾。厚みを増した選手層を再確認【WEリーグ】

清家のゴールで「埼玉ダービー」を制した浦和L(写真は今年2月のもの)。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)



 3月12日、浦和駒場スタジアムでは、WEリーグ第10節で三菱重工浦和レッズレディースと、ちふれASエルフェン埼玉が対戦した。

 首位の INAC神戸レオネッサを勝点1差で追う浦和Lにとっては、絶対に落とせないホームゲーム。一方、7位のEL埼玉も上位浮上を狙ううえで重要な一戦だ。加えて、大宮アルディージャVENTUSを含めた3チーム間で行なわれる「埼玉ダービー」6試合の対戦成績から優勝チームに、埼玉県から知事杯贈呈の栄誉も加わる。

 前半は、両チームが中盤で奪い合う、潰し合いの時間帯が長くなった。「後半戦になって、長船加奈が戻ってくるなど良いニュースしかなかったが、(今日の内容は)それに比例するほど良い内容のゲームではなかった」と、浦和Lの楠瀬直木監督は振り返る。

 浦和Lはボールを保持する時間は長かったが、EL埼玉も中盤からボールホルダーへプレッシャーをかけてきて、忙しい状況が続く。浦和Lは、3バックで待ち受けるEL埼玉の守備と対峙するFWへ当てて、そこからの展開を狙うような場面が多かった。猶本光は「相手のセンターバックが3枚いるのに、中央へ行き過ぎた。数的優位ができるサイドから、もう少し回していってもいいんじゃないかと感じていた」。

 裏を狙ったボールも、EL埼玉のGK浅野菜摘がしっかりと処理していく。「前節までやってきたこと、どこでボールを奪うかなどができていた。自分たちが上手く、相手をハメていければ、最終的には入れてくるということで準備していました」(浅野)。
 
 ジリジリするような展開にも、浦和Lの選手に焦りはなかったという。それは「守備が安定していたから」(猶本)。復帰後初のホームゲームとなる長船、そして石川璃音がほとんど決定機を与えない。

 数少ないピンチは、GK福田史織が防いだ。WEリーグ開幕後、浦和L戦で2試合連続ゴール中の祐村ひかるに得点を許さない。23分のロングシュートにはバックステップから右手を伸ばしてバーに逃れ、67分のDFの股下を抜いてきたシュートも、両足を閉じてしっかりと対応した。

 ゴールが生まれたのは89分。浦和Lは、人数をかけて奪いにきたEL埼玉の守備網をかいくぐると、途中出場の塩越柚歩がドリブルで持ち上がり、トップの位置へ上がっていた清家貴子へ。

「前に上がって強さを期待されているのは理解していたし、これまでどおりに。チームとしても共通認識を持ってくれている」という清家のシュートは、再三好守備を見せていた浅野も止めることができなかった。これが、この試合唯一のゴールとなった。
 
 もつれた「埼玉ダービー」だが、明暗はくっきりと分かれた。浦和Lは、今季、厚みを増した選手層を再確認できた。前節までリーグ戦では2戦連発、ここまで4得点の島田芽依が定着してくるなど若手が伸びている。

 そして、切り札となる塩越は59分、安藤梢は63分という勝負所で投入され、ギアを上げた。決勝ゴールを挙げた清家は「選手層は本当に厚い。誰が出るか分からないし、ポジションも決まっていない。練習からバチバチでいい」とその充実ぶりを口にする。

 崩しの引き出しも、豊富だ。猶本は「後半、2トップになったので、ああいうやり方になったが、サイドを上手く使えていれば、前半のうちに得点できていたと思う」と語る。数多の選択肢から正しいものを選ぶ難しさを、指揮官、選手とも挙げたが、贅沢な悩みだ。

 浅野は、失点シーンについて「『あそこに来る』という予測は自分の中にあった。(シュートに)構えて反応するには距離が近すぎたので、パスが出た時点であそこにアタックしなければ」と省みる。下がりながらの守備で、DFが足を取られる不運もあったが、自らにベクトルを向けた。
 
 試合後の会見で、EL埼玉の田邊友恵監督は、そのひとつ手前の部分に触れた。人数をかけながらかわされ、塩越のドリブルを許した局面だ。潰しきる、止めることを最優先に「ファールも辞さず」という姿勢、勝つためのマリーシアが必要とされる時間帯でもあり「試合の流れを読むという部分で、痛い勉強になった」(田邊監督)。プランに忠実な仕事ぶりを見せた選手を称えつつ、ピッチ内での自主的な判断を求めた。

 首位のI神戸が前節で見せた勝負強さを、この日は浦和Lが発揮した。3位につける日テレ・東京ヴェルディベレーザも、この日はジェフユナイテッド市原・千葉レディースに逆転勝ち。WEリーグ開幕後のタイトルホルダー3チームが、それぞれ苦しいゲームをものにして、優勝争いを続けていく。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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