両親は元スキー日本代表。旭川実業FW和嶋陽佳はハイブリッドカーのように音無く加速。ピッチのぬかるみも「やりやすい」
2023年03月24日 14時12分サッカーダイジェストWeb

旭川実業のエース和嶋。“メイド・イン・北海道”のしなやかなストライカーだ。写真:安藤隆人
Jヴィレッジカップにおいて、旭川実業対JFAアカデミー福島の試合を見ていて、1人の選手の動きに目を奪われた。
その選手とは旭川実業のFW和嶋陽佳。174センチとサイズがあるわけではないが、ジャンプがやけにしなやかで、特に着地の姿勢とそこからの動き出しが驚くほど綺麗で見惚れてしまった。
思えば試合前日は雨が降りしきり、グラウンドコンディションが良くない状況でも、彼のジャンプ、着地、動き出しは非常にスムーズで、ターンも足腰がぶれずにスムーズだった。
しかも、その動きはただ『下半身が強い』というものではなく、ふわりと浮き上がって、衝撃を吸収しながら柔らかく着地して、ハイブリッドカーのように音無く加速するというイメージだ。
JFAアカデミー戦でも接触プレーになると思った瞬間に、スッと相手の脇から抜け出したり、ボールを巻き込みながらターンしてマイボールにしたりと、明らかにしなやかさが際立っていた。
試合後、和嶋に話を聞くと納得の事実が明らかになった。それはプレーの感想を彼に伝えた時だった。
「それは多分、両親のおかげだと思います。実は僕の両親はどちらともスキーで日本代表選手になった経験があります。お父さんはアルペンスキーの回転、お母さんは大回転で日本一にもなった経験があります。その影響もあって、サッカー以外にスキーを小4までやっていて、それ以降はスノーボードをやっていました」
その話を聞いて、彼の膝と足首の使い方がスキーやスノーボードで実力ある選手のものであると分かった。スキーで言えば、回転はコースこそ短いがターン回数が非常に多く、大回転はターン回数は回転ほど多くはないが、高低差があり、スピードがより出る競技性がある(他にターン数がさらに少なく、高低差がさらにあるスーパー大回転がある)。
どちらにも共通するのが、いかにしなやかに、かつスピードを落とさずにターンできるか。時にはアイスバーンがあったり、固まり切れていない箇所があったりと、気候などのコンディションがコースに影響が出やすく、緻密なコントロールが必要とされる。
上半身でバランスを取りながら膝や足首で衝撃を吸収したり、出力したりして、スムーズにターンや、ターンからの加速をしないといけない。和嶋はそれを幼少期から身につけたことで、サッカーのプレーに生かしていた。
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どんなピッチコンディションでも着地や加速、ターンの仕方をアジャストさせて、衝撃吸収と出力のコントロールをしながらプレーしていたからこそ、筆者の目から見ても異質に映ったのだった。
「サッカーのプレーをしていると『スキーヤーの息子だな』と思うことはあります。切り返しの姿勢や膝の使い方はまさにそうで、膝と足首で衝撃を吸収して、ふくらはぎはあまり使わないです。使うのは足首と大臀筋を駆使するイメージ。僕は内巻きの膝というか、膝が内側に結構入るので、そこを活用しています」
ピッチコンディションに対しても、「アイスバーンの難しさに比べたら全然ですよ。アイスバーンは操作が効かなくなるので、それに比べたら、ぬかるんだくらいだったらやりやすいです」と笑う彼は、これからチームのエースとしてプレミアリーグEASTに挑む。
「簡単に勝てる相手が1つもないプレミアだからこそ、僕らはできることをやって、課題を1つずつ解消しながら前期を戦い抜いて、後期につなげていきたい。ボールを握られることは多くなると思いますが、最前線から果敢に守備をしていきたいし、前線で起点を作って、チャンスメイクとフィニッシュに関わっていきたい。チームを助けるプレーをしたいと思っています」
スキーでトップレベルに至った両親のように、サッカーで高校年代トップレベルを経験し、その先にあるプロの世界にたどり着けるように。“メイド・イン・北海道”のしなやかなストライカーが雪山ではなく、緑のピッチの上で軽やかに駆け回る。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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