久保所属ソシエダの躍進を支える“リベロGK”。彼がW杯でスペインの守護神だったら、日本代表のプレスに対応できただろう【小宮良之の日本サッカー兵法書】
2023年04月10日 20時51分サッカーダイジェストWeb

ソシエダの能動的なサッカーを最後尾から支えているレミロ。(C)Getty Images
今シーズン、日本代表の久保建英を擁するレアル・ソシエダが健闘を見せている。ラ・リーガでは4位、ヨーロッパリーグはマンチェスター・ユナイテッドを叩くなどベスト16に進出し、スペイン国王杯は主力に多くの欠場者を出しながらFCバルセロナと敵地で互角の戦いを演じた。
何より能動的なスタイルが、サッカーの醍醐味を伝えている。
「このチームは今までとまったく違う。ボールを持てるし、それが僕をいい選手にしてくれる。だから、僕もチームメイトをいい選手にしたい」
久保自身がそう証言しているように、主体的にプレーできるモデルは貴重と言えるだろう。
<自分たちがボールをつなげ、失ったら取り返し、ゴールに迫る>
その理念は簡潔だが、それ故に簡単ではない。緻密なコンビネーションと高いレベルの技量が求められる。レアル・ソシエダの場合、下部組織から一貫したプレースタイルの確立が支えか。
その攻撃的戦術の一歩となっているのは、他ならぬゴールキーパーだ。
GKがフィールドプレーヤーと重なるようなプレーをすることで、主導権を握るサッカーはようやく成立する。後方のエリアを面で守り、卓抜した足技でプレスを回避し、数的優位を作ることによって、攻守でリードできる。いわゆるリベロプレーだ。
レアル・ソシエダのゴールマウスを守るアレックス・レミロは、リベロGKの典型だろう。足を使ったプレーに長ける。単純に“止めて蹴る”の質が高く、積極的なビルドアップ参加で、プレスを無力化できる。また、相手との1対1でも足でブロックするセービングを得意とし、守備エリアも広い。ハイラインを保つチームで、”もう一人のフィールドプレーヤー”で後ろを任せられるGKだ。
カタールW杯、スペイン代表GKがレミロだったら、日本代表の猛然とした寄せにも対応できただろう。ウナイ・シモンは総合力こそ高いが、キックは得意と言えず、プレスの餌食になった。「つなげる、というのが監督の指示」と無理をしていた。キックのうまさというのは、どこでどうつなげるか、その判断に長けていることも意味し、間違ったリスクを犯さないことが重要なのだ。
GKのキャラクターはチームの色合いを左右する。
ただ一つ忘れてはならないのは、トップレベルではキックだけでは通用しない、という点だ。
レミロはチームと調和しながら、最高のゴールキーピングを見せる。例えばアウエーでのレアル・マドリー戦、悉く決定機を防いでいる。ヴィニシウス・ジュニオールとの1対1、頭上を抜かれそうになったシュートを弾き返したシーンなど神がかっていた。
足技はあくまで一つの特徴であって、その防御力こそが攻守に安定感を与えているのだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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