選手寿命を延ばした“三位一体”。カタールW杯でもベテランが活躍、今後は年齢の捉え方を修正すべきか【小宮良之の日本サッカー兵法書】
2023年04月19日 20時28分サッカーダイジェストWeb

カタール・ワールドカップで対戦したメッシとレバンドフスキ(右)。(C)Getty Images
カタールワールカップは若手の台頭もあったが、ベテランの健在ぶりの方が目立った。それは空調設備が整ったドーム内でのプレーで、ベテランに有利だったのもあるだろうか。むしろ、経験の方が戦いの中で生きた。
GKは典型的なポジションだろう。
各国、36歳前後の正GKが珍しくなかった。フランス代表のユーゴ・ロリス、ドイツ代表のマヌエル・ノイアー、コスタリカ代表のケイラー・ナバス、メキシコ代表のギジェルモ・オチョア、ウェールズ代表のウェイン・ヘネシー、エクアドル代表のエルナン・ガリンデスなどが当てはまる。
日本代表の川島永嗣が39歳だったように、サブだけを見た場合、アラフォーのGKも少なくない。
大会のスーパースターも、フランス代表キリアン・エムバペやアルゼンチン代表フリアン・アルバレスの躍進は目覚ましかったが、円熟味が目立った。ポーランド代表ロベルト・レバンドフスキ、スペイン代表セルヒオ・ブスケツは34歳、ウルグアイ代表ルイス・スアレス、アルゼンチン代表リオネル・メッシが35歳、フランス代表オリビエ・ジルーが36歳、クロアチア代表ルカ・モドリッチ、ポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドは37歳だ。
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ベテラン優勢の状況をもたらした理由は、近年のコンディショニングの向上もあるだろう。
フィジカルトレーナーが科学的なアプローチで、肉体を最大限まで鍛え上げる。フィジオセラピストは医療的な見地から運動能力の低下を最小限にし、維持、改善させ、ケガの予防に結び付ける。また、アスレティックトレーナーは専門的知識から救急処置でケガのダメージを最低限にし、リハビリテーションで力を発揮している。
この三位一体ができあがったことで、30歳を過ぎてもプレーレベルを落とさない選手が増えた。ケガも少なくなり、それによって経験が生きるようになった。単純に、選手寿命を延ばしたのだ。
メンタル面で健全さを保つことができれば、トップレベルでのプレー時間が確実に増える。俊敏性はやや落ちるし、ダッシュや跳躍の爆発力はなくなるが、他は経験で補える。プレーインテリジェンスを高め、肉体管理ができていれば、プレー年齢は上がっているのだ。
今後、これは一つの傾向として顕著に現れるだろう。
Jリーグでも、すでにその流れは出ている。36歳になる家長昭博(川崎フロンターレ)が3年連続でJリーグベストイレブンに選出されているし、水沼宏太(横浜F・マリノス)は32歳で初めて代表に招集された。ジュビロ磐田の遠藤保仁は今シーズン43歳だ。
今後は、年齢の捉え方を修正すべきなのかもしれない。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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