矢板中央の“カンテ”がピッチ内外で奮戦! 新リーダー井上拓実が示した強烈なキャプテンシー

矢板中央の“カンテ”がピッチ内外で奮戦! 新リーダー井上拓実が示した強烈なキャプテンシー

矢板中央のキャプテンを務める井上。球際の激しい守備と豊富な運動量が持ち味のボランチだ。写真:松尾祐希



 選手権出場を逃してから約半年。復活を期す“栃木の雄”を牽引する新たなリーダーが成長の跡を示した。

 今季からキャプテンとなったMF井上拓実(3年)は4月22日、11時から行なわれた高円宮杯U-18プリンスリーグ関東1部・帝京戦のピッチに立っていた。

 結果は1-2で逆転負け。前半の早い時間帯に先制しながら、リードを守り切れずに今季初勝利は勝ち取れなかった。ダブルボランチの一角でプレーした新キャプテンは、球際の強さと豊富な運動量で存在感を示しつつ、最後まで仲間を鼓舞。しかし、結果は残せず、唇を噛んだ。

 トップチームの一員として勝利に貢献できなかったが、下を向いているわけにはいかない。15時から同じ会場でセカンドチームが同リーグ2部を戦う予定だったからだ。

 相手は2020年度に選手権優勝を果たしている山梨学院。セカンドチームもリーグ戦は未勝利で、部内の雰囲気を変えるためにも勝点3がどうしても欲しかった。
 
 立ち上がりからアグレッシブな守備で相手を飲み込み、伝統のセットプレーとカウンター攻勢で敵陣に進入していく。効果的にゴールを重ね、終わってみれば3-0の快勝。試合後は笑顔が弾け、セカンドチームの初勝利に井上も頬を緩ませた。

 振り返れば、井上にとって昨季と今季は苦難の連続だった。1年次からトップチームに帯同し、選手権にも出場した一方で、2年次は怪我の影響で大半を棒に振った。インターハイのメンバーからは漏れ、復帰してからもセカンドチームで技を磨く日々が続く。

 それでも1年次からトップカテゴリーを経験し、チームを引っ張っていくという覚悟が芽生えていた。小学校と中学校を通じて一度もキャプテンを務めておらず、どちらかと言えばリーダー役は苦手だったが、新チーム発足後は任命される前から先頭に立ってリーダーシップを発揮してきた。
 

 とはいえ、200名を超える部員をまとめるのは簡単ではない。

「一昨年の藤井陽登さん(現・明治大)、昨年の田邉海斗さん(現・順天堂大)といったキャプテンの姿を見て、いろんなものを吸収してきた。それ以上にやらないといけないと思っているので、メンバーのためにやる意識は強い」

 覚悟を持って仲間のために奔走してきたが、結果がついてこない。特に普段から一緒に活動しているトップチームとセカンドチームがどちらもリーグ戦で勝てず、どうすべきか頭を悩ませる日々が続いた。井上は言う。

「想像していた通り、まとめていくのは難しい。このままやっていて大丈夫かなって思う時があった」
 
 自らの意思で就任したキャプテンの大役。泣き言は言っていられない。そうした覚悟が行動にも表われた。象徴的だったのが、帝京戦後に行なわれた山梨学院戦での振る舞いだ。

 試合前から仲間を盛り立て、入場時には一人ひとりに声をかけていく。試合中もピッチの外から鼓舞し、試合終盤にはプレーが切れたタイミングで落ち着かせる声をチームメイトに掛けた。そうした振る舞いはまさに“リーダー”と呼ぶに相応しい。存在感はピッチ外でも絶大で、昨季までの井上からは考えられないものだった。

 しかし、まだ何も成し得ていない。セカンドチームの勝利は大きな価値があるが、トップチームはまだリーグ戦で勝利を挙げられていないからだ。

 球際の激しい守備と豊富な運動量は、フランス代表のエンゴロ・カンテを彷彿させる“新たなリーダー”の戦いは、まだ始まったばかり。2年ぶりの選手権出場、プレミアリーグ参入の目標を果たすべく、誰よりもチームのために汗を流す。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

【選手権PHOTO】堀北・ガッキー・広瀬姉妹! 初代から最新18代目の凛美まで「歴代応援マネージャー」を一挙公開!

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?