堂安律は「誇りに思っていい」 なぜCL出場の夢破れてもフライブルク指揮官や主力の言葉から充実感が伝わってくるのか【現地発】

堂安律は「誇りに思っていい」 なぜCL出場の夢破れてもフライブルク指揮官や主力の言葉から充実感が伝わってくるのか【現地発】

堂安(左)は今季ブンデスリーガ29試合に出場し、5ゴール・4アシストを記録した。(C)Getty Images



 チャンピオンズリーグ(CL)には届かなかった。

 日本代表の堂安律が所属するフライブルクは、ブンデスリーガ最終節を前に5位。2023-24シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)出場権を巡り、同勝点で4位のウニオン・ベルリンと熾烈に争っていた。運命の最終節、フライブルクはアウェーでフランクフルト、ウニオンはホームでブレーメンとの試合に臨んだ。

 どちらも同じ結果の場合は、順位が上のウニオンが4位でフィニッシュ。ウニオンが引き分けか負けでフライブルクが勝利、あるいはウニオンが負けてフライブルクが引き分けた場合に、4位と5位の順位が入れ替わるシチュエーションだった。

 最終節は同時刻キックオフ。他会場の試合動向が気にならないはずがない。この日も先発出場していた堂安は、そんな雰囲気を感じ取りながら、プレーしていたようだ。

「少し違和感のある試合展開だった。ウニオンの結果を見ながらということで。1-0で終われば何かあるんじゃないかと、期待を抱きながら過ごしていました。ただ、ふたを開けてみれば相手(ウニオン)も勝ちましたし、残念だなと」

【動画】堂安が起点となった最終節の先制ゴール
 フライブルクの試合運びは悪くなかった。3-4-3の布陣でフランクフルトの中央からの攻撃をうまく抑えながら、ボールを奪うと素早いパス交換で相手ゴール前へと運ぶ。ハンガリー代表のロランド・シャライ、ドイツU-21代表のノア・ヴァイスハウプトという攻撃的なキャラクターをウイングバックに配した効果で攻撃の起点も多くなっていた。

 ファン待望の瞬間は44分だ。堂安とシャライのコンビで右サイドを崩すと、イタリア代表歴を持つMFヴィンツェンツォ・グリフォがクロスに合わせて0-0の均衡を破った。

 後半もうまくしのぎつつ、カウンターから惜しいチャンスを作り出した。だが、フランス代表のFWランダル・コロ・ミュアニにヘディングシュートを決められた83分以降、相手の勢いを抑えられなくなってしまう。連続失点をかろうじて免れていたが、アディショナルタイム、途中出場のMFジュニオール・ディナ・エビンベに逆転ゴールを許してしまった。

 そのシーンを目の当たりにしたフライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督は、じっと立ったまま動かなかった。
 

 クラブ史上最多の試合数をこなした今シーズン、フライブルク主力選手の疲労は限界まで達していた。指揮官は若手のスタメン抜擢などで新鮮な風を吹き込んだが、彼らにしてもブンデスリーガのインテンシティで90分間戦い抜くフィジカルはまだなかった。

 フランクフルト戦でも早い段階で選手交代せずにはいられず、試合終盤の苦境を打破する交代枠は残されていなかった。それでも記者会見ですっきりしたような表情を浮かべ、試合を振り返る前に「おめでとう」と相手を称えたシュトライヒが強く印象に残る。

「オリバー(グラスナー監督)とフランクフルトにおめでとう。4位でチャンピオンズリーグ出場を決めたウニオンとウルス(フィッシャー監督)におめでとう。そしてドイツ王者となったバイエルンにおめでとう。それぞれに祝福の言葉を送りたい。今季のブンデスリーガは素晴らしかった。最後までどこもぎりぎりで、スリリングなシーズンだったよ。今日は前半こそ互角だったが、コロ・ミュアニが違いをもたらす存在だった」

 シュトライヒの称賛は続く。

「彼は他の選手より1秒早く飛んで、2秒長く空中にいられる。素晴らしい選手だ。1点をリードできたが、多くの選手が90分やり通せなかった。そしてスタジアムの雰囲気がフランクフルトを後押ししていた。最後の20分はフランクフルトの方がよかった。われわれは全部出し切ったが、最後は力尽きてしまった」
 
 クラブ史上初となるCL出場の夢は消えた。悲しみ、がっくりするだろう。でも、その出場権争いにチャレンジできる。決してビッグクラブではないフライブルクが、欧州最高峰のコンペティションに近づいている事実がすごいのだ。シュトライヒもそれを強調していた。

「開幕前、だれかに『残留を争わずにヨーロッパリーグ出場権を手にする』と言われても信じなかっただろうね。それが勝点59の5位、われわれにとって普通じゃない成果だ」

 そして指揮官の目はすでに来季以降に向けられている。

「これから数シーズン、クラブにどんなことが訪れるのかわかっているつもりだ。これからもずっとうまくいくなんてことはありえない。来季はまたゼロからスタート。ヨーロッパでの戦いがある。4~5年前には想像もつかなかったような話だ。喜ばしいね。楽しみだよ」
 
 最終節を終え、ドイツ代表のDFクリスティアン・ギュンターやオランダ代表のGKマルク・フレッケンら主力がミックスゾーンで悔しさを口にしていた。でも表情は明るい。彼らの言葉から充実感も伝わってきた。堂安も自分たちの成果について、次のように話していた。

「同じヨーロッパリーグ出場権獲得でも、昨季よりも多くの勝点(55→59)を取れたのはまた違う(意味がある)と思う。6位のレバークーゼンに9ポイント差の5位ですから。僕たちの努力は順位表にしっかり表われているかと。誇りに思っていい」
 
 2年連続EL出場となると、周囲からの期待値も上がる。ブンデスリーガの強豪としての地歩を固めてほしいと願うファンも多いだろう。でもシュトライヒは謙虚な姿勢を崩さず、フライブルク自前のユース出身選手を大事にすることを改めて表明している。

 フライブルクはフライブルクらしく。それがクラブの歩むべき道だと確信しているのだ。

取材・文●中野吉之伴

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