「カウンターでしっかり仕留める」シュツットガルト主将の遠藤航が語るプレーオフ2戦目のゲームプラン【現地発】

「カウンターでしっかり仕留める」シュツットガルト主将の遠藤航が語るプレーオフ2戦目のゲームプラン【現地発】

キャプテンとしてシュツットガルトを牽引する遠藤航。(C)金子拓弥



 MF遠藤航、原口元気、DF伊藤洋輝と3人の日本人選手を擁するシュツットガルトはレギュラーシーズンを16位で終え、2部3位のハンブルガーSV(HSV)との昇格/降格プレーオフに回った。

 この入れ替え戦はタフだ。とくに2部3位クラブが苦戦する顕著な傾向がある。その大きな要因のひとつとして挙がるのは年間予算――とくに人件費――の差。1部と2部のクラブのそれには大きすぎる隔たりがある。

 それを端的に示すのが選手の推定市場価値。シュツットガルトの合計額はブンデスリーガで12番目の1億1100万ユーロ(約155億4000万円)で、HSVのそれは約3分の1の3700万ユーロ(約51億8000万円)に留まる。

 戦力差がこれだけ大きいのだから、2部のクラブにとってプレーオフは鬼門だ。この入れ替え戦が再導入された09年以降、昇格を果たした2部3位クラブは14年間で3例しかない。

【動画】第1レグのハイライトはこちら!
 その3例目となったのが19年のウニオン・ベルリンだ。当時はアウェーゴール2倍のルール廃止前で、第1レグを2-2で終えると、ホームでの第2レグを0-0でしのいだことで昇格を果たした。そして、その時に降格の憂き目に遭った1部16位クラブがシュツットガルトだった。

 こうした史実はドイツメディアから格好のネタにされがちだ。「かつて負けたことがあるという事実がプレッシャーになるのではないか」といった声が出てくるのである。そんな指摘に冷静に対処してみせたのが遠藤だ。入れ替え戦ファーストレグのスタジアムマガジンにインタビューが掲載されていて、まさにそのことについて尋ねられた一節があった。

「(影響は)ないです。2019年のことを知る選手はいまのチームに誰もいませんから。長年のファンやスタッフにとってはネガティブな思い出として刻まれているかもしれませんが、僕らにはないし、それが影響することはありません」

 遠藤の言葉どおり、シュツットガルトは第1レグのキックオフからエンジン全開。遠藤が左サイドに綺麗なロビングパスを通すと、その流れからCKを獲得し、ギリシャ代表のCBコンスタンティノス・マブロパノスが打点の高いヘディングシュートを叩き込んだ。開始1分、まさに電光石火の先制点に、4万7500人で埋まったホームスタジアムが熱狂に包まれる。

 狙い通りの得点――。遠藤は試合後にこう明かしている。

「相手のウィークポイントはセットプレー。そういう分析がありました。良いボールが入ったし、ウチは高さのある選手が多いんで。最初の1分で決められたのも大きかった。セットプレー以外でもチャンスは作れていたので、ゲーム内容的に悪くなかったと思います」

 攻守にゲームをコントロールしていたシュツットガルトは前半、いくつか訪れた追加点のチャンスを物にできなかった。CFセル・ギラシーがGKとの1対1に加え、PKの場面でもネットを揺らせず、決して良くはないムードで前半を終えている。だが、遠藤に焦りは全くなかったようだ。

「もちろん、嫌な感じはしましたけど、1-0で勝っていた。焦らずにというか、チーム全体として、2点目、3点目をしっかり取りに行こうと」
 
 そしてチームは後半に2点を奪い、3-0の完勝を収めた。キレのあるプレーを見せ、その快勝に貢献した遠藤にはホームの初戦で一気に決める。そんな気持ちもあったようだ。

「今日の試合で叩きたかった。それが一番目指していたところ。90分で試合を終わらせるくらいの感じでできれば理想だったので、3-0はすごく良い結果だと思います」

 シュツットガルトが手にしたアドバンテージは大きいが、もちろん残留が確定したわけではない。ハンブルクでの90分がまだ残っている。相手もまだ白旗を振っていない。

 HSVのGKダニエル=ホイアー・フェルナンデスは「サッカーではあらゆることが起こりうる」と話し、主将を務めるDFゼバスティアン・ションラウは「チャンスは大きくないが、だからと言ってなくなったわけではない」とまだまだ闘争モードを解除していない。

 HSVとしては満員に膨れ上がったホームの声援で試合前からプレッシャーをかけ、速い時間帯にゴールを奪い、流れを一気に引き寄せようとするだろう。
 
 対するシュツットガルトは若手が多く、試合の流れに影響を受けやすい点がある。これはシーズンを通して指摘され続けている課題だ。遠藤も「相手は点を取りに行かなきゃいけないんで。よりオープンな展開になるのかなっていうイメージはしてます」と警戒する。

 だが、そこが狙い目でもあるという。

「逆に言うとそこがチャンスだと思ってる。失点しないところを意識しつつ、カウンターから1点を取ってしっかり仕留める。それが僕らのゲームプランかと思っています」

 前がかりになって仕掛けてくる相手の状況を冷静に見極め、鋭いパスと裏への抜け出しで相手ゴールを強襲する。遠藤を中心した中盤がそのあたりのゲームコントロールをうまくできたら、シュツットガルトはドイツ北部の地で来季への確かなビジョンを描けるはずだ。

※昇格/降格プレーオフの第2レグは日本時間6日3時45分キックオフ予定。

取材・文●中野吉之伴

関連記事(外部サイト)

  • 記事にコメントを書いてみませんか?