『シティ・フットボール・グループ』の最高執行責任者に直撃!「日本はとくに重要なマーケット」「マリノスとの関係はユニーク」。理念とビジョンに加えグループ化のメリットにも言及【独占インタビュー】

『シティ・フットボール・グループ』の最高執行責任者に直撃!「日本はとくに重要なマーケット」「マリノスとの関係はユニーク」。理念とビジョンに加えグループ化のメリットにも言及【独占インタビュー】

独占インタビューに快く応じてくださった『シティ・フットボール・グループ』COOのロエル・デ・フリース氏。(C)SOCCER DIGEST



 マンチェスター・シティをはじめ、ニューヨーク・シティや横浜F・マリノスなど、世界各国13のフットボールクラブを傘下に収める『シティ・フットボール・グループ』で、最高執行責任者(COO)を務めるロエル・デ・フリース氏のインタビューだ。
『シティ・フットボール・グループ』のメンバーであるすべてのクラブ事業において運営や調整という重役を担い、マンチェスター・Cが横浜F・マリノス、バイエルンと対戦した7月下旬のジャパンツアーも手掛けた敏腕に、『シティ・フットボール・グループ』の理念やビジョンなどを訊いた。
 
――◆――◆――
 
――まずは、『シティ・フットボール・グループ』におけるロエルさんの立場、担っている主な業務内容を教えていただけますか?
 
 私はグループのチーフ・オペレーティング・オフィサー、つまりすべてのフットボールクラブの責任を負っています。各クラブのCOOから送られてくるレポーティングは、私が管理しています。マンチェスター・シティでも中心的な役割を担っており、簡単に説明しますと、フットボールのテクニカルな面以外は全部やっています。
 
――(7月に実施した)マンチェスター・シティの日本ツアーも、準備の段階から携わってきたのでしょうか?
 
 その通りです。
 
――日本ツアーの目的、テーマはどういったところにあるのでしょうか?
 
 フットボールという世界のマーケットにおいて、ファンベースを延ばしていくことが大きな目的のひとつ。アジアは我々にとって非常に重要なマーケットです。実際、2年1回、あるいは3年に1回くらいのペースでアジア諸国のツアーを組むようにしています。とくに日本は、重要なマーケットと位置付けています。これはファンの数というだけでなく、我々のパートナーである大企業、『日産』ですとか『アサヒビール』ですとか、『ソニー』といった会社がたくさんあるのも理由のひとつです。

 そしてもうひとつ、日本には我々のクラブがあります。ご存じの通り、横浜F・マリノスです。実際、2~3年に1回の頻度ですが、マンチェスター・シティはマリノスと試合を行なっています。
 
――『シティ・フットボール・グループ』の理念は、どういったものでしょうか?

 もっとも高いレベルで言いますと、人々のフットボールに対する愛情、そして熱というものを高めていくことです。これはとても重要で、すべてのベースに繋がる部分だと考えています。フットボールクラブはいまや、国であったり都市であったり、県や州、あるいはさまざまなコミュニティーにとって、アイデンティティーを表現するための重要なコンテンツとなっており、それゆえ大きな可能性を秘めています。人々のフットボール愛が高まり、それによってファンの数が増えれば、確実にビジネスの可能性も広がります。

 ビジネスの視点で言いますと、我々が目指しているのは世界のベストなスポーツエンターテインメントカンパニーになること。ですから我々は、スポーツとエンターテイメントにフォーカスしています。フットボールそのもののクオリティーはもちろん重要ですが、それに加えてピッチ外においても最高のエンターテインメント、最高のコンテンツを提供することで、ファンにより素晴らしい体験をしていただきたい。スポーツをひとつのフックにして、そういうビジネスを展開していくことが大きな目的です。
 
――『シティ・フットボール・グループ』のように、フットボールクラブをグループ化して相乗効果を高めているケースは、世界を見渡してもまだ多くはありません。グループ化することの強み、狙いなどを教えてください。
 
 私は以前、日産自動車に勤めていました。いろんな知識や専門性というものを長年に渡って蓄積していき、そういった知見を他のマーケットや他の分野でも活用することで、新しいビジネスを構築していく。こうした手法は、ビジネスではよくあることです。自動車産業で言えば、エンジニアリングの能力、マーケティングや製造の能力、デザインや設計の能力などです。これらをシェアすることで組織全体が効率化され、可能性も広がり、さらなる発展に繋がっていく。フットボールの世界ではユニークな手法かもしれませんが、原則としては一緒だと思っています。

 フットボールの世界で置き換えるなら、コーチングや栄養学、スポーツサイエンス、スポーツマーケティング、人材育成です。こうした分野において我々は、多くの知識を持っています。これらを活用すれば、多くのフットボールクラブをより良いものにし、またマーケットにおいても競争力を高めていくことができると考えています。

 もうひとつグループ化するメリットは、トップレベルの人材――選手、指導者、スタッフまで――を惹きつけられる点にあると考えます。『シティ・フットボール・グループ』に入れば、それが日本であっても、フランスであっても、英国であっても、シェアされた有益な知識や技能を得られるわけですからね。こうした魅力を提供できれば、素晴らしい人材を世界中から引きつけられます。企業と一緒です。グローバルなクラブに入れば、キャリアにおけるチャンスや選択肢は確実に広がります。

――マンチェスター・シティをはじめ世界中の13クラブが『シティ・フットボール・グループ』のメンバーとして活動していますが、どういった点に重きを置いてメンバーとなるクラブを選んできたのでしょうか? 
 
 理由はすべて同じではなく、クラブによって違いますが、まずはフットボールの主要なマーケットすべてに参入したいと我々は考えています。すでにフランス、スペイン、イタリア、イギリス、ブラジル、日本といったマーケットに参入していますが、そうした主要マーケットにおいて強いクラブを作っていくことが、最初の目的です。

 先を見据えた投資も同時に進めています。いまはまだフットボールの分野でそこまで巨大なマーケットではなくても、将来的に大きくなりそうなポテンシャルを秘めている市場に参入して、理解したいと思っています。中国やインド、アメリカがそうした対象です。アメリカはすでに有力なマーケットになっていますが、さらに大きくなると見ています。

 野心や意欲があるクラブかどうかも、大切にしている判断基準です。加えて、我々のフットボールカルチャーにフィットするかという視点も重要です。キーワードを挙げるなら「ポゼッション」や「攻撃性」。それはつまりポジティブなスタイルであり、サポーターが期待するようなエキサイティングなフットボールを実践しているかどうか。この点も重要です。
 
――『シティ・フットボール・グループ』と横浜F・マリノスの関係性は、どういったものですか?
 
 傘下にあるクラブのほとんどは我々が完全に所有しているか、株式の過半数を所有しているという形です。ただ、そうではないクラブもあります。そのひとつが横浜F・マリノスです。マリノスとの関係は、少しユニークな形と言えるでしょう。マリノスは私が日産で働いていた2014年に、『シティ・フットボール・グループ』と資本提携を伴うパートナーシップを締結しました。マリノスは日産にとっても、また横浜にとっても重要なクラブでしたが、当時はJリーグでなかなかトップに上がれず、苦戦していました。また親会社である日産も、フットボールクラブ経営という点で苦悩していました。ノウハウや知識が不足していたからです。

 そこで『シティ・フットボール・グループ』と手を組みました。ただ、これはマリノスを売却したわけでも、経営権を譲渡したわけでもありません。マリノスはきちんと運営されているプロの集団でしたから、経営陣はそのままに提携し、『シティ・フットボール・グループ』の専門家のアドバイスを聞きながら、フットボールクラブとしての成長と発展を目指しました。

 結論から申し上げれば、パートナーシップは大きな成功を収めたと言えます。この6~7年でマリノスの競争力は飛躍的に高まりました。実際、ご存じの通り19年シーズンと22年シーズンはJリーグを制しています。もちろん、横浜F・マリノスというクラブ本来の実力もありますが、『シティ・フットボール・グループ』のサポートも忘れてはなりません。今後もこうしたパートナーシップの成功例を、増やしてきたいと考えています。
 

――マンチェスター・シティのカルドゥーン・アル・ムバラク会長やフェラン・ソリアーノCEO(最高経営責任者)とは、密接にコミュニケーションを取っているのでしょうか?
 
 はい、我々は非常に緊密なチームであり、つねに互いを支え合っています。我々はとてもラッキーです。非常に素晴らしい株主(アブダビ・ユナイテッド・グループ)に支えられていますし、ムバラク会長もこの『シティ・フットボール・グループ』に対して長期的なビジョンを持っていて、いろいろとサポートをしてくれています。例えば、少なくとも月に1回はマンチェスターに足を運び、我々とミーティングをしています。

 ソリアーノCEOとはもっと緊密です。毎週月曜日にCEO、そして私、他のマネジメントチーム、フットボール関連のスタッフ、スポーツディレクターなどを交えたミーティングを実施していますので。理想的な協力関係が築かれており、有益なディスカッションをしています。
 
――『シティ・フットボール・グループ』において、ロエルさんがもっともやり遂げたとり思える仕事は何ですか?
 
 この職に就いてまだ3年ほどですので、多くはこれから達成していくことになるはずです(笑)。一番大きな達成は、ファンの数を伸ばしたことに加え、多くのクラブ、とくにマンチェスター・シティのブランディング面だと思います。私がずっと重視しているのは、ファン、あるいは消費者にとっての「最高の経験」を生み出していくことです。これはスタジアムに来てもらう時だけではありません。ファンの方々がコンテンツに触れた時、例えばクラブについての記事を読んだ時、映像を見た時なども含まれます。「最高の経験」を提供しつづけることで、フットボールクラブは正しく位置付けされて、価値を高めていけると、そう確信しています。
 
 取材・文●加藤紀幸(ワールドサッカーダイジェスト)
 
Roel DE VRIES(ロエル・デ・フリース)
多岐に渡るグローバル企業の幹部職を過去25年に渡り歴任。日産自動車でもキャリアを積んだ。『シティ・フットボール・グループ』では、CEO直属でクラブ事業運営におけるリーダーシップとコーディネーションの役割を担うCOOとして敏腕を発揮している。1968年、オランダ出身。

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