【采配検証】森保監督がドイツ戦で描き切った会心のシナリオ。指揮官の“ぶれない”姿勢は敬意に値する
2023年09月10日 16時07分サッカーダイジェストWeb

森保監督率いる日本代表は、敵地でドイツに4-1の快勝を飾った。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
[国際親善試合]日本 4-1 ドイツ/9月9日/フォルクスワーゲン・アレーナ
森保一監督は、奇しくも12年前になでしこジャパンがドイツを下した因縁の地ヴォルフスブルクで、会心のシナリオを描き切った。
前半は前がかりに出て、ドイツとも対等に戦えることを証明する。そしてもしリードを奪ったら、カタール・ワールドカップに続き、再度5バックでの効率を確認する。それは置かれた状況によるドイツとのメンタルの対照も手伝い、劇的な結果を導いた。
森保監督は、良くも悪くも夢を紡ぐ人ではない。典型的なリアリストだ。広島で黄金期を築いた時も、アウェーでは完全に割り切って守備に徹するスタイルを貫いてきたが、W杯でも腹を括った戦い方でスペインやドイツを抑えてグループリーグ突破を果たした。
今回も力試しに徹するなら、前半の戦い方を継続して娯楽性の高い試合を後押しすることも出来たはずだが、敢えてゲームの締め方にこだわった。まだ試合が半分しか終えていない段階で、上手くいっている戦術を切り替えるにはリスクが伴う。実際5バックに変更したことで日本の陣形は後傾したので、W杯での前半のように猛攻を受けて、リードした45分間を台無しにする危険性もあった。
しかし、スペースを消されたドイツは打開策を見い出せず、時間の経過とともに単調なクロスや雑なミドルシュートが目立ち始める。こうして焦燥は広がり、終盤には致命的なミスから失点を重ねた。
意外だったのは、カタールW杯を終えた後の森保監督の明快な舵の切り方だった。まるで世代交代を宣するかのように、これまで支柱としてチームを支えて来た吉田麻也を筆頭に、権田修一、酒井宏樹、長友佑都、柴崎岳らベテラン勢を軒並み外した。
一方で微妙な立ち位置だった谷口彰悟や浅野拓磨を呼び続けたのも、5バック転換のシナリオを温めていたことが判明した今なら頷ける。ドイツ戦では、日本を次のステージへ高めるためにも勝利が欲しかった。ただしそれ以上に、強豪国にはこうして勝つという複数のシナリオへの対応力を再確認したかったに違いない。
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もちろんこのシナリオを強固に支えたのは、カタール以降に所属クラブでの立ち位置を変え、自信を深めてきた個々の選手たちだ。三笘薫は冒頭からキミッヒと渡り合うことになるが、ボールを止めた瞬間には確実に相手の足を止めてしまったから、そこから縦に勝負するのか、カットインしていくのかは自らの手中にあった。伊東純也は完全にシュロッターベックとの攻防で主導権を握り、久保建英は明らかにゴセンスを翻弄した。
衝撃的だったのは、冨安健洋のサネへの対応だった。とりわけエリア内にて肩で弾き飛ばしたシーンは、かつて韓国戦で初めて中田英寿がマークする相手をはね飛ばした時と同様に、新しい時代の到来を感じた。逆に個々が局面の攻防で自信と責任に満ちた対応を続けられたからこそ、戦術変更も暗転を招かなかった。
改めて森保監督はぶれない。むしろ逆風に晒されるほど意固地になりがちにも映るが、実はそれこそが監督には不可欠な資質なのかもしれない。しょせん監督の成果は、必ず能力に比例するとは限らない。人選も含めてすべてに共感できるわけではないが、一本筋の通ったことを貫く姿勢は敬意に値する。
蛇足ながら、前日バスケットで米国を下したドイツは、一転して伝統のサッカーで屈辱の敗北を喫した。バスケットの米国男子代表のスティーブ・カーHCは「もう1992年(バルセロナ五輪にドリームチームが出て圧倒的な強さで金)ではないんだ」と語ったそうだが、おそらくドイツ代表監督の座を降りることになるハンジ・フリック監督も同じく歴史の激変を痛感したはずだ。
取材・文●加部究(スポーツライター)
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