逆転劇はなぜ起きた?小学生年代日本一、バディーSCが見せたタフな戦いぶり【全日本U-12決勝レポート】

逆転劇はなぜ起きた?小学生年代日本一、バディーSCが見せたタフな戦いぶり【全日本U-12決勝レポート】

ドリブルで仕掛けるバディーSCのキャプテン白井(8番)。写真:佐藤博之



「柏レイソルU-12よりバディーSCのほうが強い」

 鹿児島の白波スタジアムで行なわれた「全日本U-12サッカー選手権大会」の決勝戦を見た感想だ。何も3対1でバディーSC(以下、バディー)が勝ったから、そう言っているのではない。確実に、攻守で主導権を握っていたからだ。

 序盤は柏レイソルU-12(以下、柏)のペースだった。

 Jアカデミーらしくディフェンスラインから丁寧にパス交換し、ゲームメイカーの廣岡瑛太を中心にボールを前線に運ぶ。柏は1トップがクサビを受けて起点を作り、両サイドが積極的に仕掛ける。その足下のスキルを生かした攻撃は、バディーを守備に追わせた。

 そして前半9分、柏が先制ゴールを決める。

 身体を張ってペナルティエリア内外で二度のスライディングを試みて、ボールをクリアすると最前線に立つ1トップの越川翔矢がそれを拾う。そのままアタッキングサード直前までドリブルで突き進むと、それに慌てたバディーの守備陣は一気にボールに集中した。その瞬間、越川は右サイドから駆け上がってきた三村叶夢に絶妙なスルーパスを通す。三村は冷静にゴールキーパーの飛び出しを見て、ダイレクトでボールをゴールに流し込んだ。まさにお手本のようなカウンターだった。

 失点したバディーは、もう攻撃に転じるしかない。

 だが、それで精神的にやることがはっきりした選手たちは、本来の戦い方を取り戻した。右サイドハーフの白井誠也が中央にも顔を出し、右サイドバックの加藤諒次がポジションを高めに取り始めるとリズムが生まれた。バディーの攻撃は「白井がどれだけボールに絡めるか」、さらに「加藤がチームのためにオフ・ザ・ボールのランニングで相手を惑わせるか」が大きなポイントになっていたからだ。二人が攻撃に関わる時間が増すと、徐々に試合の流れがバディーに傾き、柏は守備の時間が長くなった。

 すると後半3分、白井の強引なドリブル突破が同点ゴールを生み出す。

 一度目はペナルティエリア外から1対1を仕掛けてスルーパスを出したが、ディフェンダーの足にかかってしまう。そこでもう一度ボールを拾い直し、次は中央ではなく、スペースのある右サイド方向へとドリブルしながら相手ペナルティエリア内の深い位置まで切り込むと、ゴールエリア付近へシュート性のグラウンダーボールを蹴り込んだ。それにタイミングよく合わせたのが田中菱。見事にゴールネットを揺らした。

 同点に追いつたバディーは一段とギアが上がった。

 守備時は前線からボールに激しくプレッシャーをかける。なんとか柏がパス回しでその状況を脱しようとすると、「待ってました」とばかりに受け手に対して厳しくマークを行った。その影響で柏はバックパスの回数が次第に多くなり、少しずつ前線とディフェンスラインとの間に距離が広がり始める。すると、ボールがつながらず、相手に攻撃権を渡してしまう機会が増えた。

 後半10分を過ぎても、バディーの右サイドコンビは変わらず躍動した。

 むしろ勢いを増して攻撃への意識を強めていった。そして、後半14分、自陣の左サイドのプレスから白井がなんとかボールを前にかき出すと、それを拾った八里悠太が持ち前の走力を生かして強引にマークを振り切り、左サイドの相手陣内深くまで侵入する。

 その状況を見た柏のゴールキーパーのノグチピント天飛はセンタリングを予測。数歩前にポジションを移し、DF陣も急いで中央に戻った。しかし、途中交代で入ってきた八里悠太が選択したのはシュートだった。GKノグチピントは完全に逆を突かれてしまい、柏はついに逆転ゴールを許してしまった。

 その後、バディーはコーナーキックからさらに追加点を奪い、結果は3対1。今大会は昨年の川崎フロンターレの優勝により第2代表として出場権を得たバディーが全国を制し、神奈川のレベルの高さを示した。
 


 試合を決めたポイントは、「どれだけ主体的にアクションを起こせる選手がいたか」だった。

 バディーは序盤こそ柏に対してリアクションでプレーしていたが、失点以降は個々の選手が自らアクションを起こしていた。それは攻撃だけでなく、守備にも言えた。通常、守備は相手のパスに応じて各選手がポジションを移動し、チーム全体で組織を整えながらボールを奪おうとする。

 しかし、バディーの選手はボールの出所に対して積極的にプレスをかけた。ただ、それだけではない。それを確認した味方が次の受け手になりそうな選手を徹底的に潰しにかかった。つまり、主体的なアクションを、全員が連なるように起こすことで「自分たちが絶対に勝つんだ」という意志を、柏の選手全員にぶつけて精神的に追い詰めていった。

 日頃からJアカデミーをはじめ、地域の多様なチームと対戦している街クラブらしい戦い方だった。

 一方、他のJにも当てはまることだが、恵まれた環境で練習し、比較的整ったピッチで試合をしている柏は、普段から自分たちがゲームをコントロールする立場にいるほうが多い。

 もう少し具体的に掘り下げると、攻撃や守備の“切り替えにおいて混沌とした状況”を経験することが少ない。例えば、ボールを奪ったら人数に関係なくボールホルダーが無鉄砲に行けるところまで前進してくるとか…。柏の選手は攻撃や守備がある程度セットされた状況では力を発揮していたが、切り替え時の短い時間に相手が積極的なアクションを起こすと的確な判断を下せないことが目に付いた。

 その点、バディーの選手は切り替え時の次への反応スピードが早かった。

 そこはハーフタイムに南雲伸幸監督が修正したことでもあった。「ファーストアプローチをしっかりして、そこの観察さえしておけば、長いボールなのか、ショートパスなのかはわかるはずだから」と指示を送ったという。監督がやるべきことを簡潔に伝えたことで、選手はさらに「何をやるべきか」のイメージを明確にした。
    
 それがバディーの選手の主体的なアクションにつながっている。

 現代サッカーでは、様々な意味での“スピード”が結果を左右する。アクションでプレーするか、リアクションでプレーするかは時間的、精神的な点で相手との優位性に差が出る。例えると、ボクシングのボディブローのように時間が経つほど心身の疲労度を大きくなる。

 柏にとっては普段からそういう試合を戦えていたか。そこにも敗れた原因があったように思う。今大会のバディーが第2代表として出場権を勝ち取ったことを考えると、神奈川では日頃から厳しい試合が行われているのだろう。そういう中で春から紆余曲折を経て優勝にまで導いた南雲監督の手腕と指導力は、Jアカデミーのコーチも学ぶべきことがあるのではないか。

 ジュニア世代でさまざまな試合を経験し、多様なプレーを身につけて積極的なアクションを起こせるのは大切なこと。それが精神的なタフさにもつながっていく。今大会のバディーSCは、そのタフさを持ち合わせていた。今大会を経験した選手たちが次のステップでどんな成長をするのか楽しみだ。

取材・文●木之下潤(フリーライター)
 

関連記事(外部サイト)