酒井宏樹所属のマルセイユに激震! クラブ批判のヴィラス・ボアス監督が退任を示唆し、会長には殺人予告が…【現地発】

酒井宏樹所属のマルセイユに激震! クラブ批判のヴィラス・ボアス監督が退任を示唆し、会長には殺人予告が…【現地発】

チームの立て直しに成功ヴィラス・ボアス監督(手前右)が会見で対退任を示唆した理由とは? (C) Getty Images



 リーグ・アンの2位をキープし、幸福感さえ漂っていた酒井宏樹所属のマルセイユに、衝撃と緊張が走っている。

 事の発端は、現地時間1月15日の定例記者会見で、アンドレ・ヴィラス・ボアス監督がクラブのフロントを批判し、選手たちを売るようなら、自身の退任もあり得ると示唆したことだった。

 この突然の発言でクラブとサポーターはパニックに陥り、ジャック=アンリ・エロー会長に対しては、ツイッターで殺人を予告する脅迫メッセージまで送られる事態となった。青くなった会長はすぐに告訴し、脅迫の主は謝罪してメッセージを削除したが、この衝撃はすぐには収まらない気配を漂わせている。

 騒動の発端となった記者会見で、ヴィラス・ボアス監督は、いつもとさほど変わらないソフトな語り口で、ショッキングな内容を語り始めた。

「我々はスポーツの観点から、世界一不安定なクラブに、6か月で安定を与えた。監督とし私の関心は、このグループを維持することにある」と自らの実績を強調した後、このように語ったのだ。

「私はポルトも指揮していたが、売るために選手がいたわけではなかった。選手を売るうえでクラブの助けになるものがあるとすれば、(経済的利益ではなく)スポーツ的な貢献だけ。クラブの利益はチーム力をトップレベルに維持すること、つまり目標を達成することだ」

 選手売却の動きを牽制したヴィラス・ボアス監督は、強烈なパンチに加え、「脅し」も付け加えた。

「私はダカール(ラリー)を疾駆するために手取り120万ユーロという中国との契約も捨てた。私は世界市民。マルセイユに来るよりも、メキシコやアルゼンチンに近づいていた。もちろんフランスを評価しているし、みなも私をリスペクトしてくれている。ここにいて非常に幸せだ。だが、私に地理的リミットはない。日本でもブラジルでも監督の指揮棒をとれる。プロジェクトとは、人間的プロジェクトであり、信頼関係のプロジェクトである。これが私の考え方だ」

 ポルトガル人指揮官のメッセージは明白だった。ガタガタだった昨シーズンから一転、半年で予想外の2位にのし上がり、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場の可能性も夢ではなくなった。そんなチームを壊すような真似をしてはならない。今冬のメルカートで選手を売るようなことがあれば、たとえCL出場をゲットしようが、クラブを去ることを厭わない――。

 これでメディアは上を下への大騒ぎに。語り口はソフトであっても、内実はマルセロ・ビエルサが突然マルセイユを放り投げた会見に酷似しているとさえ囁かれた。いったい何が、この”宣言“に突き動かしたのだろうか。
 この背景には、エロー会長による突然の人事があった。

 選手たちをプレミアリーグに売却すべく、昨年末にウェスト・ハム、レスター・シティ、マンチェスター・シティなどのフロントを歴任したイギリス人、ポール・アルドリッジを「特別アドバイザー」に招聘。これにより、、フロリアン・トバン、モルガン・サンソン、マキシム・ロペズら人気銘柄はもとより、酒井宏樹を含む「全員が売り対象」(『L’EQUIPE』紙)になったと言われている。

 当然この人事は、アンドニ・スビサレッタSDの領域を犯すことにもなるのだが、会長からその事実を伝えられたのは12月30日になってから。ヴィラス・ボアス監督に対しては、会長の口から何の説明もなく、会見の1週間前にSDから知らされたそうだ。そのため、自身を招聘してくれたスビサレッタのために憤激したという意味合いもある。

 ヴィラス・ボアス監督は会見の翌日、選手たちを集め、秘密裏に何かを決められるのは受け入れられないこと、スビサレッタが去るなら自分も去ること、団結して自分に付いてきてほしいこと、などを伝えたと報じられている。
 

 選手たちの立場は、「100パーセント監督を支持」(『L’EQUIPE』紙)だ。公式戦12試合無敗を実現している勇者たちは、「選手たちにも褒美を与えるべき」と主張してくれた指揮官に、しっかりついていく構えだという。CL出場権が手の届くところにあるこの時に、出ていきたいと思う選手も多くはないだろう。

 ヴィラス・ボアスはリーグ・アン第20節を終了した時点で、パリ・サンジェルマンのトーマス・トゥヘルを抜き、監督の平均採点でリーグ1位(5.90)に躍り出た。第12節時点ではしんがりだっただけに、驚愕の“登頂”である。サポーターも絶対王者のパリSGに次ぐ2位につけていることに誇りを感じ、チームをサポート。会長辞任を求める横断幕もすっかり消え、美しき熱狂のヴェロドロームが戻っていたのだが……。

 では今後はどうなるだろうか?

 エリートタイプで、もともと不人気なエロー会長。カネのことしか考えないアメリカ人オーナー。赤字を理由に制裁しようとする欧州サッカー連盟(UEFA)。そんななか、ひたむきに戦う監督と選手たちを、人々はやはり応援したくなるというものだろう。

 会長の出方とチームの今後に、大きな注目が集まっている。

取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI

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