サイドアタッカーの台頭は日本サッカーの「可能性」だ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

サイドアタッカーの台頭は日本サッカーの「可能性」だ【小宮良之の日本サッカー兵法書】

(左から)中島、久保、堂安は森保ジャパンでも重要な役割を果たしている。(C)Rafa HUERTA,Getty Images



<横槍を入れる>

 それは、戦場における勝利の常道だろう。その言葉は転じて、談話や交渉で第三者が横から口を出し妨げること、を指すことにもなっているが、もともとは、合戦で相手を脇から一隊で攻め寄せることを表している。どんな強力な軍も、横からの攻撃に、弱いものなのだ。

 サッカーでも、相手の脇を攻め崩すような状況を作れるか、は勝負の決め手になる。中央はお互い、人を多くして固めるし、縦一辺倒の動きは読まれやすい。カウンターで裏返しになった場合は、最短距離で攻め込まれてしまう。

 そこで、いったん脇から攻め入る。サイドまでボールを運ぶことで逆襲のリスクも少し減らせる。何より、横からの攻撃は打撃性が高い。脇を打ち破ることで、中央の混乱を生み出し、堅陣も破れるのだ。

 サイドで1対1になった時、勝負を仕掛け、門をこじ開けられるか。それはしばしば、勝負の命運を握る。

 リオネル・メッシ、クリスチアーノ・ロナウドはもともと、まさに生粋のサイドアタッカーだった。サイドから攻め立て、そこでアドバンテージを取る。相手を翻弄した後、中にも切り込み、自らの一振りで、得点を取ってしまう。その決定力が並外れていたことで、次第に中央でのプレー時間が増え、よりゴールに近い場所でプレーすることになった。
 
 しかし、やはりサイドの攻防は勝敗を左右する。

 コンビネーションを使うことで崩すのか、個人の力で崩すのか。どちらも必要になるわけだが、例えばバルサはメッシのいる右サイドを崩す力は強いが、それだけではない。左サイドバックのジョルディ・アルバがサイドアタッカーのような高い位置を取ることで、メッシとの連係から攻め崩す形がパターン化し、定着している。

 ひとつ言えるのは、個人だけでは打開は難しい。そこで“逆足”(利き足と違うサイドでプレーするアタッカー)が増えた。サイドアタッカーがカットインし、サイドバックを使う、あるいはボランチを上がらせる。連係の玄妙さで、相手の脇腹を痛打する。そこで足を止め、ノックアウトする。深くまで攻め入れば、ラストパスの選択肢は限りなくあって、マイナス方向のパスに相手はほとんどついてはいけない。
 
 プレミアリーグを3連覇しているマンチェスター・シティも、ベルナルド・シウバ、ラヒーム・スターリングというサイドアタッカーが攻撃軸を担っている。また、健闘を見せるチェルシーも、右サイドでウィリアン、セサール・アスピリクエタが見せるコンビネーションは白眉。そしてチャンピオンズ・リーグ王者のリバプールも、サディオ・マネ、モハメド・サラーの両翼が相手にダメージを与え、今シーズンの得点数もチーム1、2位だ。

 翻って、日本サッカーはこのポジションに人材は欠かさない。ロシア・ワールドカップでは、乾貴士、原口元気が存在を示した。その後も、中島翔哉、堂安律、久保建英らが台頭。安部裕葵や食野亮太郎のような新鋭も出てきている。

 日本サッカーの「可能性」と言えるだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
 

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