「かなり困難な挑戦になるが…」“神様”ジーコが語る本田圭佑のブラジル移籍。CSKA監督時代のエピソードも明かす

「かなり困難な挑戦になるが…」“神様”ジーコが語る本田圭佑のブラジル移籍。CSKA監督時代のエピソードも明かす

ブラジルのレジェンドであるジーコ(左)が、本田(右)の移籍について私見を述べた。(C)Getty Images



 本田圭佑のボタフォゴ移籍は、ブラジル国内でも小さくない話題となっている。

 まだビザを取得していないため、正式契約は結んでいないが、すでに合流してトレーニングを開始。深刻な財政難に喘いでいるだけでなく、ピッチ上でのパフォーマンスも振るわないチームの救世主となれるのか。

 この2年、トップレベルでプレーしていなかっただけでなく、実戦から離れていた点も含めて、懐疑的な声も少なくない。

 日本のサッカーをよく知る“神様”ジーコ(現鹿島アントラーズTD)は、この移籍をどう見ているのだろうか? 旧知の彼に話を訊いた。

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 ボタフォゴでの入団会見で本田が発した「ジーコには感謝している」という言葉は、私にとっては、嬉しいサプライズだった。あの一言には本当に感謝している。

 日本のサッカーにおいて、本田の世代には優秀な選手がたくさんいる。彼らは皆、努力家で、聡明だ。ピッチ上でのプレーはもちろんだが、ピッチ外の振る舞いはそれ以上に素晴らしい。

 こうした選手たちが日本のサッカーを強くした。名前を出してくれたからではないが、私は本田のことを信頼の置ける選手だと思っている。
 

 33歳という年齢で、このハイレベルで難しいブラジルのサッカーに、よくチャレンジしてくれたと思う。かなり困難な挑戦になるとは思うが、本田のテクニックとフィジカルがあれば、きっと何かやってくれると信じている。実際、ブラジルに到着してまだほんの数日だが、ボタフォゴで活躍できるだけのメンタルの強さをすでに垣間見せてくれている。

 ブラジルでは、どうやら私と一緒に仕事をしたことがあると報道されているようだが、それは事実ではない。本田と同じチームで仕事をしたことはない。彼のプレーを見たことはあるが、それもまだプロになりたての頃の話だ。ただ、その頃から他の選手たちとは違うポテンシャルを持っていたのを、よく覚えている。

 彼をもっとよく知っているのは、ネルシーニョ(現柏レイソル監督)だろう。名古屋グランパスの監督だった時、いつも本田のことを話してくれた。「どんな監督でも自分のチームに欲しいと思う選手だ」と言っていたよ。
 

 本田がブラジルを新天地に選んだのは、良い選択であったと思う。彼のスタイルは、ブラジルのサッカーと通じるものがある。常に頭を高く上げてプレーし、見事なゴールを決める。そしてサッカーを楽しむと同時に、真剣勝負であることも知っている。

 本田世代の日本サッカーは、どこかブラジルに通じるところもあり、それが彼らを世界に導いた。本田や香川真司は本当に優秀で、素晴らしい才能を持ち、プロとしてのクオリティーも高い。なかでも、本田以上に豊富な国際経験を積んだ選手はそうはいないだろう。

 オランダ・サッカーの洗礼を浴び、ロシアのサッカーを理解し、イタリア・サッカーの特徴を学び、メキシコのサッカーを知り、オーストラリアのサッカーを体験した。その豊かな経験から、チームに多くのものを与えてくれるだろう。しばらく練習していないことなど、すぐに乗り越えられるはずだ。本田を見ていると、33歳という年齢は決して障害ではない気がする。

 ロシア・ワールドカップで日本代表としてプレーして以降の約2年間、彼は本当の意味でのハイレベルなサッカーからは遠ざかっている。それだけが心配だったが、彼のフィジカルコンディションは驚くほど万全だと聞く。きっとボタフォゴでも活躍してくれるだろう。
 
 興味深い話をしよう。私がCSKAモスクワの監督を務めていた時、クラブの会長に、本田を獲得してくれるように頼んだいた。自分のチームにぜひ加えたい選手だったのだ。その時、彼はまだオランダ(VVV)でプレーしていた。

 その後、私はチームの幹部とうまくいかなくなり、2009年の9月にチームを去った。それから5か月後の翌年1月、CSKAモスクワは本田を獲得した。そして、私が予想した通り、本田は素晴らしいプレーをし、ゴールを決め、チームの中心となった。

 CSKAに本田獲得のアイデアを授けたのが私だということを、本人が知っているかどうかは知らない。多分リオで彼が私の名前を出してくれたのは、日本サッカーに対する貢献のことだと思う。
 

 新監督がパウロ・アウトゥオリに決まったことは、彼にとっては大きな幸運だ。日本人のメンタリティーを知っている監督の下でプレーできるのは心強い。きっと本田の力を最大限に引き出してくれるだろう。とにかく私はとても楽観視している。

 それにしてもブラジルのビッグチームでプレーする日本人選手を見られる日が来るとは――。何よりも大きな満足感を感じている。

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【プロフィール】
リカルド・セティオン/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。
8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
 

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