ポーランド2部クラブの入団テストに挑んだ元日本代表FW。現地でSDに“不合格”の理由を直撃した

ポーランド2部クラブの入団テストに挑んだ元日本代表FW。現地でSDに“不合格”の理由を直撃した

ポーランドでの入団テストに臨んだ工藤。(C)Zaglebie Sosnowiec



 2019年シーズンをもってレノファ山口を退団して以降、なかなか新天地が決まらない。そんな工藤壮人が先日、ポーランド2部リーグのザグウェンビエ・ソスノビエツの入団テストを受けるも不合格というニュースが流れたのは、記憶に新しい。

 柏レイソル、バンクーバー・ホワイトキャップス(MLS)、サンフレッチェ広島、そして山口と渡り歩いた元日本代表FWはなぜ、契約に至らなかったのか。ヨーロッパの強豪国ポーランドにおける日本人選手の印象などを探るため、急きょ現地ポーランドに渡り、ソスノビエツのスポーツダイレクターを務めるロベルト・トムチク氏を直撃した。

──まずは、どのように工藤選手のことを知ったのか、その経緯から教えてください。

「私が懇意にしているエージェントから、元日本代表の良いFWがいると連絡が来た。インスタット(ロシアの会社が運営している選手スカウティングツール、選手のプレーをオンラインで分析できる)で『Masato Kudo』と検索したら、数多くのプレー映像が出てきた。レイソル、バンクーバー、サンフレッチェ、レノファでのハイライト集を数時間に渡って、くまなくチェックしたよ。テクニックは申し分ないし、ポジショニング、状況判断などインテリジェンスに感銘を受けた。我々の補強ポイントは、ゴールを量産するFW。昨夏から探し求めていたが、なかなか見つからず、リーグ後期開幕直前とはいえ、工藤を見ることに大きな期待を寄せていた」

──Jリーグもそうですが、ヨーロッパのトップシーンでは、経歴や映像だけで契約に至るケースも少なくないなか、あえて入団テスト開催に踏み切ったのはなぜでしょうか。

「3つのポイントをこの目でチェックしたかった。まずは、人間性。サッカー選手である前に、チームの一員として実力を発揮するのには、監督、スタッフ、選手たちと積極的にコミュニケーションを取っていかなければならない。次に、ポーランドサッカーへの適応。ポーランドはJリーグとは異なり、激しいデュエルが試合中幾度となく展開され、強靭なフィジカルが求められる。最後に、外国人助っ人として良いプレーを披露するだけではなく、ゴールをたくさん量産できるかどうか。これら3つのポイントは、スカウティングツールだけでは分からないというものだ」

──入団テストでの工藤選手の評価を教えてください。

「人間性に関していえば、ファンタスティックのひと言だ。練習前に、チームのすべての人間にリスペクトの精神を持って挨拶をする。分からないことがあれば、積極的に質問をする。英語は決して流暢ではないが、コミュニケーション能力は非常に高い。練習に臨む姿勢は、真剣そのもの。燃えたぎるような情熱はヒシヒシと伝わってきた」

──なぜ不合格という決断を下したのですか?

「もし、ソスノビエツが一般企業であれば、工藤は『入社』できただろう。ただ、プロサッカークラブである以上、我々が求めるスタンダードに、残念ながら工藤は達していなかった。ポーランド独特の激しいサッカーにおいてはフィジカル不足であり、90分ハードワークするために必要なフィットネスも問題だった。勘違いしないでほしいのは、工藤は悪い選手ではないということ。昨年、レノファで試合に少ししか出てないのも影響しているだろうし、11月にJリーグが終了し、3か月もの空白期間のトレーニングではなかなかコンディションは上がらなかったのだろう」

 
──工藤選手のコンディションアップに懸けようとは思わなかったのですか?

「外国人助っ人である以上、即戦力でなければならない。ポーランド2部は、EU外の外国人選手は1人しかピッチでプレーできない。選手を抱える余裕などない。1部昇格の可能性もあるし、もし仮に連敗が続けば、3部降格の危険性も否定できない。とにかくゴールを決め続け、チームに勝利をもたらしてくれる絶対的な選手のみ必要なのだよ。ダリウシュ・ドゥデク監督(2004-05チャンピオンズ・リーグで優勝したリバプールの守護神の実弟)も、スタメン出場できる状態にはないという評価を下した」

──残念ですが、プロの現実ですね。

「その通り。工藤と契約しないことが確定するや否や、ポーランド1部のチームからスペイン人FWルビオを獲得した。ルビオは、3月7日に行なわれたリーグ戦で途中出場ながら2ゴールを挙げる大活躍を見せた。手前味噌になってしまうが、我々は選手をきちんと分析できる確かな目を持っている。工藤も、プロフェッショナルな決断を理解してくれたからこそ、入団テストが終わりチームを去る際には、『ありがとうございました』と言ってくれた」

──この冬の移籍市場が終わりました。夏に向けて日本人選手の獲得を考えていますか?

「もちろんだよ。工藤を実際に見て、コンディション以外の部分では、満足している。ドゥデク監督も、以前シロンスク・ブロツラフで森岡亮太(シャルルロワ)を指導しており、『日本人選手は規律と勤勉さを兼ね備え、チームに大きなプラスになる』と絶賛している親日家だ。スカウティングシステムで日本人選手のプレーをチェックしていくし、エージェントからの売り込みも積極的に対応していきたい」

──では最後に工藤選手へメッセージをお願いします。

「1週間という短い期間だったが、ソスノビエツのトレーニングとテストマッチに参加してくれたことに感謝している。一刻も早くチームが見つかることを祈っているよ。コンディションをマックスに上げて、2020―21新シーズンのソスノビエツのプレシーズンキャンプに参加してくれたら嬉しいね」

取材・文●森本高史

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