「ホンダが中心だったのは明らか。ここでは珍しい…」本田圭佑のデビュー戦をブラジル人記者はどう見たのか?【現地発】

「ホンダが中心だったのは明らか。ここでは珍しい…」本田圭佑のデビュー戦をブラジル人記者はどう見たのか?【現地発】

ブラジルでのデビュー戦で初ゴールを決めた本田。(C) REUTERS/AFLO



 デビューまでには紆余曲折があったものの、ついにこの日がやって来た。

 ボタフォゴのサポーターは、本田圭佑のデビューを心待ちにしていた。
「本田はいつプレーするんだ?」最近ではそれがあいさつ代わりだった。

 メディアも待ちわびていた。いったい本田がブラジルでどこまで通用するのか。

 ボタフォゴ幹部もこの日を待っていた。だからこそ懸命の努力で手続きをした。

 もちろん本田自身も、この日が来るのを指折り数えていたことだろう。リオに来てからというもの、カーニバルにも見向きもせずハードな練習をこなしていたのだ。

 そして、かく言う私自身もこの日を楽しみにしていた。日本のサッカーと関わって30年、初めて母国のビッグクラブで日本人選手がプレーするのを目の当たりにできる。

 それにしても……なんという日曜日だったのだろう!

 ブラジルにも少しずつ新型コロナウイルスの脅威が迫ってきている。まだ試合はどうにか行なわれているが、本田のデビューは、無観客となってしまった。本来ならば、熱い声援に包まれてデビューするはずだったのに。「オオォォォォ、ジャポネス チェゴォォォォ!!(おぉ日本人がやって来た!)」と。

 やっとこの時がやって来たというのに、なんという皮肉だろうか。
 
 ただスタンドは空っぽだが、本田の心は熱い気持ちでいっぱいだったように思う。ピッチに向かう“ボタフォゴのサムライ”(リオでは最近そう呼ばれている)の瞳には炎が宿っていた。実際、彼はボールに対してハングリーだった。

 本田はこの日、トップ下でスタメンでプレーした。パウロ・アウトゥオリ監督は、元日本代表MFが入るポジションを作るのは頭痛の種だったようだが、最後にはボランチのルイス・フェルナンデスをベンチに置くことを決めた。そして、本田のスタメン出場のニュースは、無観客で消沈しているブラジル・サッカー界に活気もたらした。

 それにしても、そのパフォーマンスは素晴らしかった。

 ブラジルでは“横”に短いパスを出し、できるだけ時間をかけてゴールに向かっていくのが主流だ。しかし本田は、ここでは珍しい“縦”の動きで攻めた。そして、28本出したパスのうち24本を成功させ、枠内シュートは4本、決定的なスルーパスや卓越したプレービジョンも披露した。

 本田はいまだレベルの高い選手であることを、この試合で証明したのだ。

 チームメイトたちもすぐにそれを理解した。ボールが足下に来ると、とにかく本田を探した。本田を信頼していた。誰よりも長くボールをキープできることを知っていた。

 まず5分に本田は左サイドで素晴らしい動きをし、ゴール前にいたルイス・エンリケに素晴らしいパスを送った。ボタフォゴの最初のチャンスだった。

 この日のリオは37度の暑さで、審判は開始20分に、2分間の給水タイムをとった。この直後からの本田のパフォーマンスを私はとても気に入った。

 疲れが見られ、苦労しているのもわかったが、それでもゲームを組み立て、鋭い攻撃を繰り出していった。対戦相手のバング―が格下ということもあり、本田を中心にボタフォゴは試合を完全に支配していた。
 
 給水タイム明けからしばらくして、またホームチームが相手ゴールに迫る。そして、FWのラファエウ・ナバーロが倒され、PKを獲得。選手たちの誰もが、このPKを誰が蹴るべきかわかっていた。チームメイトたちは本田をペナルティースポットのへと押しやった。ポルトガル語が分からなくとも本田はその意味を理解した。

「あんたが蹴れよ!」

 バング―のGKは右に飛び、本田は左に蹴った。疑う余地もないゴール、正しいPKだった。スピードも適度、柔らかいタッチ、繊細なテクニック、完璧なシュートだった。

 その後も本田は何度か敵ゴールを脅かし、最後にシュートを放ったところで前半終了。ここまでのMVPは間違いなく本田だった。アウトゥオリはまず彼に歩み寄り、何かを言ってハグした。本田のゴールのおかげで、結果の出ていなかったボタフォゴはいま一番必要な落ち着きを取り戻した。

後半、驚いたことに、本田はまたピッチにいた。正直、後半もプレーするとは思っていなかった。4か月のブランクがあり、この暑さなのに、まだプレーを続けるのか? しかも数日前には発熱していたのではなかったのか? 

 後半が始まってすぐ、本田はまた仲間からボールをもらった。しかし、この時点ですでに前半とは違っていた。疲れが見え、暑さが彼から体力を奪っていた。前半と比べて明らかにパフォーマンスが落ちていた。

 本田のスピードや精度が落ちるのと反比例して、バング―は盛り返していった。そして58分に同点ゴール。この時、4番はすでにピッチを歩いていた。いやほとんど立ち止まっていたといっていい。

 前半に見せていたボールへの貪欲さはすっかり影を潜めていた。もう限界なのは明白だった。後半に入る前にアウトゥオリはそれに気づくべきだった。指揮官がようやくは本田をベンチに下げたのは、失点の3分後だった。

 この時、2つのことに私は注目した。
 
 ひとつは本田がこの交代に不満げな様子だったこと。ベンチに座ってゲータレードを一口飲むと、首を振った。もうひとつは本田の去ったピッチを、アウェーチームが支配し始めたことだ。

 前述したように、バング―は格下のチームだ。しかし本田を失ったことで、ボタフォゴは拠り所をなくしてしまった。結局、試合は1-1で終わったが、それは内容に即した妥当な結果だったと思う。

 いずれにしても、本田のデビュー戦は上々だったと言えるだろう。ゴールだけでなく、走ることも、質の高い動きを披露することもでき、早くもチームに欠かせない存在であることを証明してみせた。あとは彼の使い方をよく考えるべきだ。

 サポーターも、チームスタッフも、何より本田の獲得を決めた幹部は大満足だ。新型コロナウイルスの流行で今後のゲームの先行きは不透明ではあるが、本田が試合を重ねるごとにパフォーマンスを上げていくことを楽しみにしたい。

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 

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