五輪延期、兼任監督では乗り切れない…森保監督が専念すべきはU-23?それともA代表?

五輪延期、兼任監督では乗り切れない…森保監督が専念すべきはU-23?それともA代表?

五輪の1年程度の延期が決まったいま、森保監督の“兼任”続行は明らかに厳しい状況だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)



 目指す大会がふたつある。どちらもいつ開催されるか目途が立たず、スケジュールや活動期間が被る可能性もある。五輪は1年以内の開催が宣言されたが、それもそこまでにコロナ禍が収束していることが前提だ。一方2年後の冬にはカタール・ワールドカップが待ち構え、地域予選のスケジュールが先送りにされている以上、フル代表の試合は過密になる。皮肉にも、どう見ても兼任監督では乗り切れない状況が訪れた。

 そもそもこうした不測の事態に直面する前から、兼任監督は機能していない。五輪チームの方は準優勝したトゥーロン国際やアウェーでブラジルを下した遠征でも、指揮を執ったのが横内昭展コーチだった。予め定められたスケジュールだったのに、森保一監督不在のまま基盤作りは進められてきた。しかも同監督は、サンフレッチェ広島では個々の選手と真摯に向き合い育成してきた成果を結実させたが、短時間でスピーディな仕事が求められる代表チームへの適性は未知数だった。いきなり二役を託すのは、あまりにギャンブルが過ぎた。

 先日JFA(日本サッカー協会)は反町康治氏の技術委員長への就任と、同職に就いていた関塚隆氏が今後はナショナルチームダイレクターとして代表活動をサポートしていくことを発表した。今後両者の役割分担が注目されるが、もともと技術委員長の立ち位置には無理があった。代表監督を招聘しサポートしていくという大義名分があり「冷徹に評価していく」というもうひとつの顔を出し難かった。

 例えば西野朗氏はヴァイッド・ハリルホジッチ監督を支える立場の技術委員長だったわけだが、サポートをするという一蓮托生の概念があるために決断が遅れた部分も否定できない。それに本来ならサポートしてきた側が、後任に就くというのは筋の通らない話だ。

 さらに岡田武史監督時代も、早稲田大学の後輩に当たる原博実氏が技術委員長だったが、この関係で「評価を下す」のは至難の業だ。要するに日本人の気質を考えても「支える人」と「評価をする人」はそれぞれ別に用意しなければ、代表強化の効率は望めなかった。
 

 さていくら自国開催とはいえ、五輪をワールドカップと天秤にかけるわけにはいかない。

 当然失敗が許されないのは後者だ。ただし反面、上位進出のチャンスが大きいのは当然五輪で、この状況下ではますます可能性が高まっている。来年のシーズン終了後にはユーロとコパ・アメリカが開催されるので、ここに出るレベルの選手が五輪でプレーすることはほぼない。あるいは五輪がシーズン中の開催になれば、クラブ側は国内リーグでプレーする選手の招集も拒否するはずで、その場合は日本も久保建英、冨安健洋ら中核を失うことになる。

 明け透けな言い方をすれば、五輪は基準や権威付けが曖昧な大会で、史上最低水準に落ち込むことも想定される。それでも冷めた海外勢を裏腹に、国内では異次元のように注目を集める。熟年ファンはともかく、未来のサッカー小僧を魅きつけるためにも最高の準備は施したい。それなら現体制は、そのまま五輪に集中するべきだろう。JFAが近未来の全てを託した森保監督にとっては格好のリトマス試験紙になる。さらに万全で期すには、ここまで主導的にチーム作りを進めて来た横内コーチのサポートも不可欠だ。
 

 そう考えれば喫緊のテーマはフル代表の新監督の招聘である。国内での人選は考え難く、逆に五輪代表では受諾する外国人監督もスケールダウンを避けられない。幸か不幸か、フル代表の活動は休止中なので、新監督が来ても日本の状況を把握するための十分な時間を確保できる。さらにまだ2次予選も残っているので、実験のチャンスも担保されている。あとはJFAの指針に即した人選と交渉力が試されることになるが、ハリルホジッチ氏や森保監督の足跡は貴重な参考資料として蓄積されたはずだ。

 ワールドカップまで2年間だが、これは新監督が最も力を発揮できる時間なのかもしれない。アルベルト・ザッケローニ監督時代は2年目がピークだったし、フィリップ・トルシエ監督についても「後半の2年間は同じことの繰り返しになった」と、通訳を務めたフローラン・ダバディ氏が述懐している。

 一方森保監督にとっては、東京五輪が成長と捲土重来のチャンスになる。まだフル代表を託すには説得材料が不十分で、世論を見てもこのまま継続するのは本人のためにも得策ではない。貴重な指導者なら尚更五輪という大舞台を見極めた上で、カタール以降に再検討で良いと思う。

取材・文●加部 究(スポーツライター)

関連記事(外部サイト)