「なぜ柴崎岳の特長を活かさないのか」スペイン人記者が指摘したデポルティボの戦術的欠陥【現地発】

「なぜ柴崎岳の特長を活かさないのか」スペイン人記者が指摘したデポルティボの戦術的欠陥【現地発】

昨夏にデポルに加入した柴崎。ここまでリーグ戦18試合に出場している。(C) Getty Images



 デポルティボの今シーズンの浮き沈みの激しい戦いを見ていると、砂丘に浮いている船を連想させる。

 クリスマスブレイク中のフェルナンド・バスケス監督の就任がカンフル剤となって、年明けに怒涛の巻き返しを見せたが、新型コロナウィルスの感染拡大による中断直前に再失速(直近4試合は2分け2敗。31節終了時点で降格圏の19位)。これは、チームが抱えている問題が単なる勢いだけでは解決できない、もっと深いところに根差していることを示している。

 そのチームの低調なパフォーマンスの影響をもろに受けているのが、他でもない柴崎岳だ。デポルは今シーズン、すでにファン・アントニオ・アンケラ、ルイス・セサル・サンペドロ、そして現在のバスケスと3人の監督がチームを率いているが、そのいずれの指揮官の下でも、柴崎は戦術面で輝きを放つだけの環境を与えられていない。
 
 この日本代表MFは、確固とした個性を持っている。しかし、テネリフェ(2部)への移籍を機に2017年1月にスペインに渡って以来、ラ・リーガでその才能の片鱗を披露したのは一時的に過ぎない。ロシア・ワールドカップで見せた貫録のプレー、あるいは鹿島アントラーズ時代にクラブワールドカップで披露した印象的なパフォーマンスと比較すると、物足りなさは否めない。

 長短の正確なパスを駆使し、ビルドアップに積極的に絡みながら、自在にポジションを移動して決定機を演出する――。この攻撃を司る能力が、柴崎の真骨頂だ。だが、ダブルボランチの一角で出場している現在、背後をカバーするパートナーのウチェ・アグボと縦の関係を図きながら、ボールのラインよりも前の位置でプレーする機会が多く、得意とするゲームメイク能力を発揮するには難しい状況にある。

 そのチーム戦術と柴崎の特長がマッチしていないことが顕著に表われているのが、ビルドアップだ。バスケス監督は4つのパターンを用意しているが、戦術上のキーマンである柴崎をメカニズムにうまく組み込むことができていないため、結局は苦し紛れのロングパスを多発しているのが現状だ。
 

 チームの攻撃が機能しない大きな要因として、なかなか下位から脱出できないという精神面で焦りも大きく関係している。勢い任せのプレーが多くなり、本来は冷静な振る舞いに定評のある22番までもが、攻め急ぎがちな周囲のペースに巻き込まれてしまっている。

 もともと気持ちを前面に出してぐいぐいチームを引っ張るタイプではなく、むしろ日本人選手に共通する戦術遂行力やディシプリンに特徴のあるプレーヤーだ。時に戦術的な枠組みを外れて自分なりの工夫を見せてはいるが、あくまで個人の努力に留まっており、チームの攻撃力を昇華させるには至っていない。

 今シーズンのデポルの低迷は、柴崎の特徴とチーム内で与えられている役割のミスマッチが大きく関わっている。この日本人MFが自慢のゲームメイク力を活かして、アヘル・アケチェ、エムレ・チョラク、サビン・メリーノが構成するニ枚のメディアプンタ(トップ下)とワントップ、あるいは左右の両ウイングバックにいいボールを供給し攻撃を操ることができれば、崩しの質は自ずと高まるはずだ。

 中断前まで3−4−2−1を採用していたバスケス監督は、そのシステムの見直しも含めて、チームで最も創造性が豊かな柴崎の活用法をいま一度再考する必要がある。

文●アドリアン・ブランコ(エコス・デル・バロン)
翻訳●下村正幸
 

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