「ヨーダに会いに行く感じで…」ヴェンゲルの“革命”はいかにして成立したのか? アーセナルOBが語る舞台裏

「ヨーダに会いに行く感じで…」ヴェンゲルの“革命”はいかにして成立したのか? アーセナルOBが語る舞台裏

アーセナルを欧州屈指の強豪へと押し上げたヴェンゲル。その手腕をOBが語った。 (C) Getty Images



 1996年10月、名古屋グランパスを離れ、プレミアリーグの強豪アーセナルの指揮官となったアーセン・ヴェンゲルは、ピッチ内外でイングランド・サッカー界に“革命”を起こした。

 とりわけ珍しかったのは、食生活にメスを入れたことだった。アルコールの大量摂取が当たり前だった時代に、飲酒を禁じ、チョコレートやスナック菓子、その他の高カロリーの食事を制限。食生活を一から改善して、ピッチ内でのパフォーマンス向上につなげたのだ。

 当時のチーム内の様子を明かした名手がいる。元イングランド代表FWのイアン・ライトだ。ヴェンゲル就任時にアーセナルのエースだった点取り屋は、英公共放送『BBC』のインタビューで、「初対面のボスの印象は、分厚い眼鏡をかけて大きめのサイズのスーツを着ていて、なんだか大学の教授みたいだったよ」と当時の心境を語っている。

「僕らは最初に腕にビタミンを打たれた。ビタミンC、ビタミンB12、オメガ3といった成分が入った注射を定期的にね。そしてヴェンゲルから電話を受けたんだ。『今すぐに効果は感じないかもしれないが、私たちと共に進み、君たちが私の教えたようにトレーニングをすれば、ただ強くなる』とね。

 全員が疑心暗鬼だった。でも、彼は本当に正しかった。最初の内は感じなかったけど、徐々にトレーニングのレベルも上がっていって、僕らは全員が同じレベルに達して強くなったんだ」

 しかし、当時、日本から来た博識なフランス人のやり方に反発する者も少なくなかったという。ライトは、「僕らはパイとかチップスとか、とにかく好きなものを食べて生きてきたからね」と話す。

「リー・ディクソンやトニー・アダムスたちはよく、『ボス、俺たちはまだフィットしてないぜ』と噛みついていたね。でも、ヴェンゲルは態度を変えようとはしなかった。だけど、彼らも最初のシーズンに3位になってタイトルに近づいたことで静かになった。

 ヴェンゲルにはよくフランスへ連れていかれた。そこで知らない男たちと2週間ぐらいミニキャンプをするんだけど、30歳以上の選手たちは試合後のケアから食べ物の噛み方まで細かく指示されていた。もうそれはヨーダ(映画スターウォーズのキャラクター)に会いに行くようなものだったね。ただ、彼が僕らを文字通り最高のところへと連れていってくれたんだ」

 ライトいわく「時代のかなり先の先を行っていた」というヴェンゲルのやり方によって飛躍的に向上したアーセナルは、その後、シーズン無敗でのプレミアリーグ制覇(2003-04)やFAカップ3連覇(01-02、02-03、03-04)などの輝かしい実績を残した。

 反発や失敗を恐れずに、個性豊かな選手たちを統率したヴェンゲル。その強い姿勢こそがアーセナルに大きな成功をもたらしたのかもしれない。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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