悠長なプーチンにフランスのW杯戴冠シーンを妨害され…。そこに突然、滑り込んできた選手が!【秘蔵写真コラム】

悠長なプーチンにフランスのW杯戴冠シーンを妨害され…。そこに突然、滑り込んできた選手が!【秘蔵写真コラム】

フランスの選手たちが世界一の歓喜に酔いしれる目の前を悠々と眺めようとするプーチン大統領。 (C) Javier Garcia MARTINO




 2006年のドイツ・ワールドカップのエピソードを紹介した前回に引き続き、今回もワールドカップで撮影した写真と共にビッグイベントの舞台裏についてお話ししよう。

 今回紹介するのは、一昨年の夏に行なわれたロシア大会決勝戦での一コマ。大雨のなか、快進撃を続けたクロアチアを破り、世界一となったフランスの選手たちが優勝トロフィーを手に歓喜の叫びをあげた時のものだ。

 試合中、スタジアム内でフォトグラファーの撮影ポジションが制限されていることについては、皆さんもすでにご存知のことと思うが、実は試合後も自由に動けるわけではない。ロープで区画を仕切られ、我々は限られたエリアで撮影することが義務付けられている。

 優勝が決まる一戦では表彰台での良い画を収めるため、試合が終わったら迅速に動かなければならない。まずタイムアップのホイッスルが鳴るのを待ち、機材を抱えてコーナー付近で待機。そこから係員の誘導に従って表彰式用の撮影スペースに移動することになっている。
 

 ロシア・ワールドカップの決勝では、幸いにも私は表彰台の真ん前の最前列に陣取ることができた。トロフィーとメダルを受け取った選手たちが集合するステージも、斜めからだがしっかり撮れる位置だ。

 しかし、表彰のセレモニーが始まり、最初に審判団にメダルが授与される頃からポツポツと降り始めた雨は、やがて大粒の雨に変わっていく。そして、フランスの選手たち全員にメダルが渡された時には、前方が見えないほどの豪雨となっていた。

 全身水浸しとなり、カメラのレンズが濡れるだけでも悪態をつきたくなる状況だったのに、フランスのキャプテン、ウーゴ・ロリスがトロフィーを掲げようとした瞬間、私は、とんでもない事態に遭遇するはめとなった。

 なんと大きな傘をさしたガードマンに守られながら表彰台を下りたロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、フォトグラファーの前に立ち止まってフランスの選手たちを悠長に眺め始めたのだ。それも大雨の中で、だ。

 たたでさえ不機嫌だった私が、絶好のシャッターチャンスを妨害されて黙っているわけがない。カメラの前に立つとは、非常識も甚だしい。私は大声(スペイン語)で、SPに向って、その場から立ち去るように叫んだ。

 相手がプーチンであろうが誰だろうが構わなかった。文句を言っていたのは、私のほかにも2〜3人いただろうか。その他の同僚たちは、きっと呆れてものも言えない状態だったに違いない。

 必死に抗議した甲斐もあってか、プーチンの一団は、その場から立ち去った。だが、フレームには大統領のSPの肩がしっかり写り込んでしまった……。視界からプーチンの姿が完全に消えた頃には、フランスの選手たちはすでに決めポーズを終えて「解散」していたのだ。

 紙吹雪が舞うなかで、優勝チームがワールドカップのトロフィーを掲げる瞬間を美しく撮影できずに落胆していた私だったが、そこに突然フランス代表DFのバンジャマン・メンディがトロフィーを持ったまま滑り込んでくるではないか。「Cuando una puerta se cierra, otra se abre」(ひとつの扉が閉まる時、別の扉が開く=捨てる神あれば拾う神あり)とは、まさにこのことだ。
 

 しかも、その直後にメンディの周りに選手たちが集まり、フォトグラファーのためにポーズを取ってくれた。表彰台でのお決まりのショットよりもずっと迫力ある構図だった。

 ずぶ濡れになり、そしてプーチンに妨害されながらも、最終的には満足の行く写真を撮ることができた私は、プレスルームで編集作業を済ませ、大急ぎで空港に向った。ボカ・ジュニオルスの夏季キャンプに合流するため、その夜の便でモスクワからイスタンブール経由でアメリカのフロリダに行くことになっていたからだ。

 雨で濡れたままの機材が気になり、道中はずっと気が気ではなかったが、幸いカメラやレンズに支障はなく、キャンプ地でも無事に仕事を続けることができた。あれはきっと、モスクワで私を救ってくれた“扉”が、フロリダに到着するまで開いたまま待っていてくれていたのだろう。

文●ハビエル・ガルシア・マルティーノ text by Javier Garcia MARTINO
訳●チヅル・デ・ガルシア translation by Chizuru de GARCIA

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