「クラブ運営が危険視されている…」日本人駐在員が見たイタリア・サッカー界の混迷を極める現状とは?

「クラブ運営が危険視されている…」日本人駐在員が見たイタリア・サッカー界の混迷を極める現状とは?

3月8日に行なわれたセリエA第26節のユベントス対インテルは無観客試合で行なわれた。この節を最後にセリエAも中断となった。(C) Getty Images



 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。4月7日に東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡へ緊急事態宣言が発出され、16日には対象範囲が全都道府県に拡大された。その影響を受け、様々な業種が営業活動の自粛に追い込まれている。

 “コロナ禍”の波はサッカー界にも押し寄せ、2月21日に開幕したJリーグは翌週から延期。現時点で再開の目処が立っておらず、厳しい状況が続いている。その流れは日本だけに止まらず、ロックダウン中の欧州ではCLや各国のリーグが軒並み開催延期を決断。再開に向けて少しずつ動き出しているが、収束を見通せない現状では今後の流れも不透明になっている。

 各メディアで様々な報道がなされ、人々は刻一刻と変わる状況をつぶさに見守っているが、感染拡大が深刻な欧州は実際にどうなのか? とりわけ医療崩壊も報じられたイタリアでは、日本では想像できない程の状況になっている。

 多くのプロ選手が愛用するカンパリ社のレガースを扱う株式会社INFINITOの現地駐在員によると、何より凄まじかったのは感染拡大のスピードだという。

「2月中旬に(イタリア北部の)ロンバルディア地方で新型コロナウイルスが蔓延し、3、4日で一気に数人から100人に感染が広がったんです。これはまずいなという感じもありましたが、この時点では一地方での話だろうと見ている人がほとんどでした。セリエCで北部にあるクラブは試合を見合わせたりしていたのですが、2月の最終週の時点でセリエAはまだ無観客で試合をやっていたんです。ここまで感染が拡大するという認識がサッカー界ではなかったのかもしれません。ただ、感染のスピードが想像を超えて異常に早かったんです。いくつかプロの試合が延期になったりしていたなかで、3月の1週目に街が閉鎖になりました」

 ロックダウン後は買い物を除き、家の外に出られない状況が続いている。生活を維持するために外出する際は、政府が用意する用紙に自宅と行き先の住所を記載。申告した場所以外の場所に出向いた際は罰金が課せられる。

 全てのアクティビティが止まっており、イタリアのクラブも活動を停止。現在、各選手は各自でトレーニングを行なっている。駐在員によると、各クラブのフィジカルコーチが現在は自宅で行なえるトレーニングメニューを渡しているという。

 しかも、トップチームだけではなく、育成組織の選手にも同様に自主練習を課しているそうだ。

「イタリアのプロのクラブでは育成も含め、家の中でやるフィジカルトレーニングや心拍数を上げるメニューを作成して、取り組ませています。トップチームはプラスアルファで栄養管理をアプリで行なっており、摂取した食事内容を全てクラブに送るようにしています。必要なカロリーなどは、全てフィジカルコーチが把握する形でやっているんです。セリエAのトップクラスの選手は自宅にジムを持っている選手もいるので、彼らは色々やれるかもしれません。だけど、セリエBやCとかは家にそのような施設がないので、自宅で行なえるメニューを消化している感じですね」

 混迷を極めるサッカー界。もちろん、経済にも影響が出ている。特にイタリアはオーナー主導で経営しているクラブがほとんどで、この状況が続くと、経営破綻するチームが出てきても不思議ではないという。

「日本と違い、イタリアはオーナー経営のクラブが多いんです。資本となっている企業の本業がストップして収益が下がっているので、イタリアではサッカークラブの運営が危険視されています。ロックダウンが解除されたとしても、その後の2、3か月はかなり怖い。運営ができないクラブが出てくる可能性もあります」

 またクラブ以外でも大きな影響を受けており、サッカー関連メーカーも例外ではない。株式会社INFINITOでは、プロ選手が使用するカンパリ社のカーボン製レガースをイタリアから輸入をしているが、現状で現地の工場が稼働していないため仕入れができない状況に見舞われている。最後に輸入したのは1月の末。ただ、その期間中も注文は入っており、Jリーグが再開した場合に大きな支障を来たすのは言うまでもない。

 現時点で収束の気配が見えない新型コロナウイルス。早期の収束を願うばかりだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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