【ピッチレベルの真実|仲川輝人編】細やかな心遣いは、本物のプロの証拠だ

【ピッチレベルの真実|仲川輝人編】細やかな心遣いは、本物のプロの証拠だ

J1での“令和初ゴール”を決めた試合後、殊勲の仲川は気さくにポーズをとってくれた。写真:徳原隆元



 サッカーの試合において、カメラマンはピッチからわずかに離れただけの位置に身を置くことができる。選手やスタッフたちと同じくらいの近い距離だ。そこはちょっとした、いやかなりの羨望の場所かもしれない。

 カメラマンはこの圧倒的な距離感を活かし、読者の目に留まるような写真の撮影を目指す。その場面はピッチ内で展開されるプレーだけに限らず、多岐にわたる。ファインダーを通して、個人技、チーム戦術、勝敗による歓喜と悲哀、そして内に秘めた思いと、サッカーを形成するさまざまな側面を感じ取ることになる。

 こうしてこれまでに撮影された膨大な数の写真の中から、印象に残っている絵をピックアップしてみた。ピッチレベルから見て感じた思いを加味し、選手たちの多面的な横顔を紹介していく。

 第1回目は、昨年リーグMVPと得点王を獲得し、横浜F・マリノス優勝の立役者となった仲川輝人。2019年5月3日、10節のサンフレッチェ広島対横浜戦の試合後のこの一枚は、仲川のプロとしての自覚が伝わってくる写真だ。
 
 5月1日に施行された新元号「令和」となってから初のゲームで、仲川はアウェーの地でJ1での“令和初ゴール”を決めた。試合後、メモリアル弾を記録した仲川の独自の写真を撮るため、ヒーローインタビューを終えたタイミングを待って声をかけてみた。横浜サポーターが待つスタンドに急ごうとしていた仲川だが、嫌がる素振りなど一切見せず、足を止めて、気さくにポーズを取ってくれた。

 仲川のこうした対応には、他にも記憶に残っているものがある。横浜が15年ぶり4度目の優勝を決めた昨季最終節のFC東京戦後、ビクトリーランの時における対応だ。チームの攻撃を牽引した仲川とマルコス・ジュニオールを一緒に撮影したいと思い、まずはその旨をマルコスに告げた。

 仲川とともに得点王を分け合ったブラジリアンは「良いよ」と快諾。仲川に向かって声をかけてくれた。その呼びかけに対し、仲川はすぐに反応してくれて、報道陣の前でツーショットの絵作りに快く協力してくれた。

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 また、ある試合で交代を命じられた時のことだ。バックスタンド側からピッチを出た仲川はベンチに戻る際、わざわざカメラマンの背後を通って撮影の邪魔にならないような配慮を見せたこともあった。

 人々から注目される存在であるサッカー選手には、ピッチ内での技術だけでなく、彼らが内包する人間力にも、プロとしてのあるべき姿が求められると思う。ピッチ以外での行動も、サッカー選手を評価する指標とされるはずだ。

 上記したエピソードは些細なことかもしれない。それでも、だ。仲川の報道陣に対する気配りは、“プロサッカー選手とはどうあるべきか”という思いの表われのひとつであり、その姿勢は実に清々しい。

 派手な外見と先鋭的なプレーからは想像しにくいかもしれないが、ときに細やかな心遣いを見せる仲川。心惹かれるのは、なにもクオリティの高い技術だけではない。人に対する心配りも魅力で、彼はまさに、本物のプロサッカー選手なのである。

取材・文・写真●徳原隆元

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