英政府がプレミア移籍を阻止!? 北朝鮮代表の21歳エース、そのキャリアを覆う“祖国”の影

英政府がプレミア移籍を阻止!? 北朝鮮代表の21歳エース、そのキャリアを覆う“祖国”の影

北朝鮮代表の若き至宝、ハン・グァンソン。今冬から活躍の場をカタールに移している。(C)Getty Images



 世界を驚かせた北朝鮮代表の若き至宝は、現在カタールのクラブに籍を置いている。

 今年1月、日本代表MF中島翔哉もプレーしたアル・ドゥハイル(カタール)は、ユベントス(イタリア)から700万ユーロ(約8億7500万円)の移籍金で北朝鮮代表FWを獲得した。21歳のハン・グァンソン(韓光成)である。カタール・スーパーリーグが中断期間に入るまで、ヤングスターは5戦3発といきなり猛威を振るった。

 若くしてアジアを代表するタレントと注目されるハン。今回彼のキャリアに注目したのが、お馴染みの英紙『The Sun』である。

 ハンは北朝鮮が国家を挙げて育成したエリート選手だ。ジュニアユース時代にバルセロナ(スペイン)への留学などを経験し、2015年U-17ワールドカップでの大活躍を受けて、今度はペルージャ(イタリア)のアカデミーの門を叩く。18歳でカリアリ(イタリア)とプロ契約を交わすと、セリエAで2シーズン合計12試合に出場(1得点)。そこから武者修行で2部ペルージャに駆り出され、そこでも2年間で37試合・11得点と気を吐き、期待に応えてみせた。

 そして昨年夏、買い取りオプション付きのレンタル契約でユベントスへ移籍。弱冠20歳でのメガクラブ移籍で世界を驚かせた。だがトップチームでは2度ベンチ入りしただけで出場機会は訪れず、3部所属のU-23チームで17試合に出場したもののゴールはなし。ユーベは冬に300万ユーロ(約3億7500万円)でカリアリからハンを買い取り、すぐさま倍以上の額でアル・ドゥハイルに売却した。

 
 その周辺にはやはり、母国・北朝鮮の影が常にあったと『The Sun』紙が伝えている。

「かつてペルージャ時代、テレビのサッカー番組に出演すべく、ハンはミラノのホテルで待機していた。するとそこに北朝鮮の関係者が現われ、急きょ出演のキャンセルを通告してきたという。以降、彼は無断でメディアの前で話すことを厳禁され、日々の生活も当局の監視下に置かれた。すべては、北朝鮮の最高責任者であるキム・ジョンウン(金正恩)の肝煎り。言うことを聞かなければ強制送還となるだけに、ハンは怯えていたようだ」

 ペルージャのマッシミリアーノ・サントパードレ会長は、「交渉の余地などまるでなかった。とても頑なな態度で、北朝鮮は選手に対して絶対的な立場なんだと実感したよ」と当時を振り返る。

 とはいえ、ペルージャでの活躍もあって、ハンの欧州での声価は上がる一方だった。そこで浮上したのがプレミアリーグへのステップアップだ。

 アーセナル、エバートン、リバプールといったクラブが新天地候補に挙がるなど、にわかに現実味を帯びていた。『The Sun』紙によると、そこに待ったをかけたのが英国政府だったという。同紙はブライトン大学で非常勤講師を務め、北朝鮮のスポーツ事情に詳しいウド・メルケル氏の見解を紹介している。

「英政府が懸念したのは、国連が発動している北朝鮮への経済制裁だ。ハンがプレミアリーグのクラブから受け取るだろう高額のサラリーは、いわゆる外貨獲得で、北朝鮮政府に搾取される可能性が大だった。核兵器開発に費やされるかもしれない資金を、英政府は封じ込めたかったに違いない。移籍が進展しなかった理由は確実に存在したのだ」

 現在、アル・ドゥハイルでの年俸はチーム内トップクラスで、300万ユーロ(約3億7500万円)は下らないと言われる。実際に北朝鮮政府に資金が流れているかどうかは分からないが、ハン自身は中東の地でペルージャ時代の輝きを取り戻しており、コンディションはすこぶる良さそうだ。

 
 サッカー好きのキム委員長は、代表チームの3大会ぶりとなるワールドカップ出場を厳命している。「2022年大会のホスト国・カタールに、絶対エースのハンを送り込んだのも無関係ではない」というのが『The Sun』紙の見立てだ。

 順調にキャリアを積み上げていたストライカーは、今後どのような成長曲線を描いていくのか。はたして、北朝鮮サッカー史上最高のキャリアを歩んでいけるのか。アジア・チャンピオンズリーグでJクラブ勢の前に立ちはだかる可能性もあるだけに、今後も興味が尽きない。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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